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『私とヤるか、ゲームやるか』〜正体を隠した憧れの『神プレイヤー』が、タワマンで小悪魔JKを最強の指揮官(IGL)に育て上げる〜  作者: 夕姫


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15. 致命的な欠陥

 15. 致命的な欠陥





 あれから1ヶ月、柚葉は、目覚ましい勢いでランクを上げていた。IGLインゲームリーダーとしての盤面把握能力は、素人だった時とは別人のように研ぎ澄まされている。


 だが、ブロンズ3からシルバー1への昇格の壁が見え始めた頃。オレは彼女の後ろでプレイを見ていて、ある一つの『致命的な欠陥』に気づいていた。


『DEFEAT(敗北)』


 モニターに無情な文字が浮かび上がり、柚葉が深くため息をついてマウスから手を離した。


「……あーあ、また撃ち負けちゃった。野良の味方、カバー遅いなぁ……」


「味方のせいじゃない。今のラウンドを落としたのは、100%お前の責任だ」


 背後からのオレの冷たい声に、柚葉がビクッと肩を揺らして振り返った。


「えっ……?私、ちゃんと開幕でドローン回して、敵がAサイトにいないことは伝えたよ?スキルも全部綺麗に入れたし……」


「序盤の動きは完璧だった。問題は、爆弾が設置された後の『2対2のリテイク(拠点奪還)』の場面だ。……お前、なぜあの時、一言も喋らなかった?」


 オレの指摘に、柚葉は図星を突かれたように目を泳がせた。


「だ、だって……あの状況、敵の残り2人がどこに隠れてるか、全然分からなかったんだもん。ドローンも壊されてたし、足音も聞こえなかったし」


「だから、黙っていたのか?」


「……もし私が『敵は右にいる』って予測で指示を出して、外れて左から撃たれたら、私のせいで負けちゃうじゃん!100%の確証がないのに、味方を動かす無責任なコールは出せないよ……!」


 それが、柚葉がぶつかったIGLとしての最大の壁だった。彼女は根は真面目で、ロジックを忠実に守ろうとするあまり、『確定情報』しか口に出さなくなっていたのだ。


 オレは柚葉のゲーミングチェアの背もたれを掴み、モニターのマップへと彼女の体を向け直させた。


「いいか、柚葉。タクティカルシューターにおいて『100%の確証』なんてものは、ラウンドが終わった後のリプレイ動画の中にしか存在しない」


「……え?」


「敵だって人間だ。セオリー通りに動くとは限らない。盤面の情報は常に欠損していて、IGLはその『不確定な暗闇』の中で決断を下さなきゃならないんだ。……例えば情報を『受け取る側』の時のことを考えてみろ」


 オレはマップ上の、ストライカーが突入してよく死ぬポイント(チョークポイント)を指で叩いた。


「味方の前衛ストライカーがエリアを取りに行って、敵に落とされたとする。その時、味方がただ漠然と『あー、やられた』としか報告しなかったら、お前はどう思う?」


「えっと……人数不利になったな、って思うだけで、次にどこを警戒すればいいか全然分からない」


「だろう?だが、もしその味方が死んだ瞬間に、『裏から撃たれた!敵の【Wolf】と【Bat】、最低2人はいる!』と言ってくれたらどうなる?」


 柚葉の目が、ハッと見開かれた。


「……裏取り(奇襲)が来てるのが確定する。しかもスナイパーと煙幕キャラの2人がそっちに割かれてるなら、目の前の本陣サイトの守りは手薄になってるって分かる……!」


「その通りだ。味方が死んだという『マイナス』が、具体的な報告一つで、エリアを制圧するための『強力な武器(情報)』に化けるんだよ」


 オレは柚葉の目を見下ろし、はっきりと告げた。


「これはIGLであるお前からの指示も全く同じだ。情報がない時、お前が『黙る』ということは、味方に『各々で勝手に判断してくれ』と丸投げしている、さっきのストライカーと同じなんだよ」


 モニターには、先ほどの2対2の場面で、柚葉が沈黙した結果、野良の味方がどこを見ていいか分からず迷いが生じ、敵に各個撃破されてしまった惨状が映し出されている。


「もしお前がドローンを壊されて位置が分からなくても、『Aにはいない!多分Bに引いた、一緒にクリアリング(安全確認)しよう!』と声を出していればどうなっていた? たとえお前の予測が外れて、敵がAの死角でガン待ちしていたとしてもだ」


「……味方と私が同じ場所を警戒しながら動いてるから、片方が撃たれても、もう片方がすぐにカバーキル(仇討ち)できる……!」


「そうだ。……FPSにはな、昔から語り継がれている鉄則がある」


 オレは腕を組み、かつて自分が『円卓』で戦っていた頃の、血を吐くような連携を思い出しながら言った。


「『5人がバラバラに動く100点の作戦より、5人が連携して動く0点の作戦の方が強い』」


「連携して動く、0点の作戦……」


「IGLの仕事は、預言者になることじゃない。味方の『フォーカス(狙い)』を一つにまとめることだ。間違えてもいい。予測でもいい。不確定な盤面カオスに直面した時こそ、お前が『声』を出して、チームの向かうべき『コンパス』になれ。……声を出さずに死ぬのは、IGLとして一番の恥だと思え」


 柚葉はギュッと唇を噛み締め、小さく力強く頷いた。


「……そっか。確証がなくても……『私はここを見るから、カバーお願い』って言うだけで、それは立派な連携になる。無責任なんかじゃないんだ」


「そうだ。お前の声が、見知らぬ味方同士を繋ぐ見えない『糸』になる。100%を待つな。50%の勝率を、声と連携で無理やり100%に引き上げるのが、お前の仕事だ」


 柚葉は再びモニターに向き直り、マウスを握る手にぐっと力を込めた。その瞳には、「責任から逃げていた自分」への悔しさと、新しい戦い方を見つけた高揚感が入り混じっている。


「次。次の試合、絶対に喋る。間違っててもいいから、私がチームを動かす!」


 そう宣言し、柚葉は次なる戦場へと勢いよく飛び込んでいった。確証のない暗闇の中で声を上げる勇気。それこそが、彼女が『本物の指揮官』になるための、最も重要なこと。こうして、また1つ柚葉のIGLとしての経験値が上がっていくのだった。

『面白い!』

『続きが気になるな』


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