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変人少女は青春の嵐を引き起こす  作者: 最上優矢
第四章 いざ、粋絆高原へ

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エアコン全滅

 いよいよ夏本番。

 氷菓子はあっという間に溶けてしまう、猛暑日の今日。


「ありゃりゃ。ひょっとして、エアコン壊れたかー?」


 その日の朝、遠山家ではリビングのエアコンが壊れる、という悲惨な事件が起こってしまった。


 最初にエアコンが壊れているのを発見した勇蔵は「まっ、壊れたエアコンがリビングだけで良かったんじゃないのかね。これが“全部屋のエアコン”だったら、目も当てられない事態になるけどなー」と快活に笑ってみせた。


 それから数十分も経たないうちに、遠山家のエアコンが次々に壊れ始めた。


「こちら、新時代の書店員こと、ユーゾウ……たった今、おれと亜季の部屋のエアコンがお釈迦になったぞー」

「こちら、凧とは程遠い凪だけど、ぼくんとこのエアコンもつかなくなった」

「こちら、我が家のマドンナ、亜季……ねえ、これは一体どういう状況なの?」

「こちら、我が家のアイドル、悠奈じゃ。――って、それは余が知りたい!

 余のエアコンも……『くるりん号』も突然起動しなくなった。これいかに!」


「うーん……これはもうあれだ、我が遠山家も終焉の時が近いのかもなー」


 そんなこんなグループ通話をして話す凪たちは、リビングに全員集合した。

 亜季がエアコン修理業者に連絡すると、修理業者の到着は昼過ぎになるそうだ。

 そうと分かれば、あとは何も恐れるものはない。


「じゃあぼく、図書館に行ってくるね」

「おっ、凪は図書館かぁ。父さんはだな、リニューアルオープンしたばかりの書店に行ってくるぞー」

「ふっふっふっ……気分良く、余はヒトカラにでも興じようではないか」

「というわけで……」

「母さん、お留守番頼んだぞー」

「母上の分まで、悔いなく歌ってくる所存」


 さあ、散会――かと思いきや。


「うふふ……あんたたちったら、この家の留守番をあたしにさせようとしたわね。まあ、いいわ……なら、こうしましょう。

 ――最初にこの家から外に出た者が、今回のエアコン修理費を出す。それでいいわね」


 亜季の提案に、凪と悠奈はそれぞれ顔を見合わせた。


「でも母さん、ぼくと悠奈はそんなお金、手元にないよ」

「手元には、でしょう……?」


 嫌な予感、と凪は頬を引きつらせた。


「まさか……後ほど、預金口座から引き落とすつもりでございまして?」

「大正解よ」


 もはや凪は苦笑するほかない。


 悠奈は「なんてことじゃ」と頭を抱え、亜季のことを「鬼女」呼ばわりしていたが、鬼女と化した亜季には、まるでダメージが通らなかった。


「……さすがは母さんだな。父さんでも、その妙案は正直思いつかなかったぞー。やるじゃないか」


 おまけに頼みの綱である勇蔵は、鬼女の亜季に怯えていたため、彼女の従順な犬と成り下がっていた。


 どうもこれ以上の抵抗は、ムダのようだった。


 凪は恐る恐る亜季に訊いてみた。


「……もしも、誰も外に出なかったら?」

「そのときは割り勘よね」

「それは……うん、常識の範囲内で安心したよ」


 こうして凪たちは暑くてたまらない家に留まり、今か今かとエアコンの修理業者を待っていた。

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