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(74)我慢(がまん)

 我慢がまんにもいろいろとパターンがある。その違いによって、気分が疲れる疲れないといった差が生じることになる。例えばせ我慢と言われる我慢は、そうしたい自分の気持を必死に抑える訳だから、かなり疲れることになるだろう。痛みを我慢するのもつらいし、見たいものを見ないとか食べたいものを食べないといった我慢も辛い。それらは、人によって違う訳で、同じ人の場合でも、その時々で違うといった差異が生じる。すべての我慢に共通するのは、程度の差こそあれ疲れるということだろう。^^

 とある桜並木である。満開となった桜の下ではドンチャン騒ぎの花見のうたげもようされている。多くの人が受かれる中で浮かれない一人浮いた男、猫川がいる。

「ウイッ! 猫川さん、まあ、一杯っ!!」

「いや、私はいいです。私は桜を見に来たんですから…」

「そんな硬いこと言わずにっ! ウイッ! …どこかお悪いんですかぁ~?」

「いや、どこも悪いところは…」

「でしたらっ!」

 犬山は赤ら顔で2リットル缶のビールを猫川にすすめた。

「いや、ほんとにっ! お気持だけっ!」

 猫川は口ではそう言ったが、手は紙コップを持ち、ビールを呼んでいた。犬山はその紙コップへ2リットル缶ビールをそそぎ入れた。

「ははは…グ、グッとっ!! ウイッ!」

 犬川はなかば酔った声であおる。

「い、いやっ!!」

 猫川の口は必死に止めようとしたが、手は勝手に動いて口へと近づけた。そして、一気に飲み干させたのである。

「なんだっ!! いける口じゃないですかっ! もう、一杯っ!!」

 犬山はふたたび2リットル缶ビールを紙コップへ注ぎ入れる。

「い、いや、もう…」

 猫川の口は否定し続けたが、紙コップを持った手は勝手に口へと動いていった。そしてふたたび、グビグビッ…と飲み干させたのである。そんなことか二度三度続いたあと、猫川の手は勝手に動いて犬川の手から2リットル缶ビールを奪い取り、紙コップへ注ぎ入れ始めたのである。そして、語り口調も少し変化してきた。

「へへへ…我慢なんか、してられるかってんだっ!! ですよねっ!? 犬山さんっ!!」

「ええっ!? はあ…そら、そうですよっ! ウイッ!」

 二人はその後、いい赤色の()(ダコ)

へと出来上がっていった。

 我慢は我慢が続けばメッキが()げ落ちるのである。我慢も疲れるということだ。^^


                  完

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