(53)いいこと
疲れるという言葉は、どこか嫌ぁ~~な感じを人に与えるが、なにも疲れて悪いとは限らない。疲れることで、空腹にひとっ風呂浴びたあとの美味い喉越しのビールと料理が味わえる。^^ 疲れたあとにはそんないいことが待っているのである。お彼岸でお墓参りをされる季節になったが、人の世にはそんな妙味のあるいいことがある訳である。^^ 努力しない人には妙味のあるいいことはありません。^^
お彼岸で賑わう、とあるお墓である。柏葉は残業続きの疲れた身体を引きずり、墓参に来ていた。
「おやっ!? 桜餅さんのご親戚の方で?」
お隣の墓で花を手向ける見かけない人を訝しげに窺いながら、柏葉は思わず訊ねた。というのも、桜餅の通り向かいの家が柏葉の家で、当然ながら、両家の間にはご近所付き合いがあったからである。
「いえ、そういう訳では…」
「すると、お知り合いの方で?」
「いえいえ、そういう訳でも…」
「…というとっ?」
「ええまあ…。天気もよろしいし、することもなかったもんで、知らない方のお墓参りもいいかな…と。なにか、いいことがありそうな気がしたもんで、つい…。ははは…どこのお家でもよかったんですよ…」
「… なんだ、そうでしたか…」
柏葉は妙な人だな…とは思ったが、よくよく考えてみれば、知らない人のお墓へ参って悪い・・という決まりもない訳である。
「それじゃ、私はこれで…」
「はあ! ご苦労さまでした…」
去ろうとする紳士風の男に柏葉は思わず労を労う声をかけていた。その瞬間、疲れた身体の柏葉も、何かいいことをしたような気分の昂ぶりを感じ、疲れが取れていた。
いいことがあれば疲れることも疲れなくなるようだ。^^
完




