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(39)動物

 動物は本能で動く物である。本能で動くから動物、動かなければ、そこいらにある、ただの物と同じである。^^ 動かない物は無用の長物だが、動かないのと動けないとでは明らかに違う。困ったもので、現実の社会では動かなくてもいい存在が厚かましく動いて世を乱し、動いて欲しい存在が動けず愚痴ってくやしがるといった矛盾むじゅんまかり通っている。参考例としては、国会の現状をご覧いただければ、よくお分かりになるだろう。^^ こうした矛盾を深く考えれば、生きづらくなって疲れるから、人々は適当に妥協しながら世知辛せちがらい世を生きている訳だ。まあ、私もその一人だったのだが…。^^

 とある会社の営業課である。

「ったくっ! 君はもう、出んでいいっ!!」

「どういうことでしょ?」

「だからっ! 君はデスクから動かんでいいといっとるんだっ!」

「営業の私が動かないで、何をすればっ?」

「そんなことは、また言うっ! 書類のコピーとかいろいろあるだろっ! とにかく、動くなっ!」

 営業に出て失敗ばかりしてる課員の大鮒おおふなは課長の鹿馬多かばたにこっぴどく叱られていた。そこへもどってきたのが、つい今し方出て、契約を一つ取り戻した渦正うずまさだった。

「課長、今戻りましたっ!」

「おっ! 渦正君かっ! どうだった?」

「ご安心をっ! 大鮒さんの一件は白紙撤回することで折り合いがつきましたっ!」

「そうかっ! 渦正君ならやってくれると思っとったんだよっ! 君は少し動いてコレだからなっ、はっはっはっ…」

「私はっ?」

 そこへ口をけなくてもいいのに大鮒がパクパクと口を開けた。

「き、君は動かなくていいっ! ただの物になりなさいっ!」

「私は動物ですから…」

「動物は分かっとるっ! 鮒は動物だっ! 動物でも、君の場合は動けば失敗するから、余計に疲れるっ!!」

「… はい、分かりましたっ!」

 大鮒は鹿馬多にそう言われ、自分でもそう感じたのか、素直にうなずいた。

 その半年後、大鮒は監査室の室長に異動し、昇格した。動かず、疲れることなく会社経理の不正を暴き出した功が会社上層部に認められたのである。

 動物のように動かなくても、才ある人は疲れず出世するのである。私などは動き疲れて出世しなかったたぐいだ。^^


                  完

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