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(2)歯ブラシ

 置川は、その日、早く目覚めた。目覚めはしたが、これといってすることもない。さて、どうする…と、考えるでなく置川は思った。このままベッドから降りるか、またひと眠りするかの選択肢である。昨夜、観たテレビのクイズ番組がそのとき、ふと置川の脳裏をかすめて駆け巡った。あのクイズは最初の方が正解だったな…と思い出し、置川はベッドから降りた。昨日きのうは休みだったから勤めで疲れることはなかったが、今日は出勤日である。そう思うと、置川は少し気疲れを感じた。誰しも、勤めを休んでのんびり出来る方が、いいに決まっている。置川もまた御多分に漏れない男だった。

 ベッドを出れば、することは決まっている。自動操縦のロボットのように衣類を身に着けると、置川は洗面台で顔を洗った。身体が自然と動くから、これといって考えることもなかった。ところが、ここで一ついつもと違う出来事が生じた。歯ブラシがいつものコップの中に存在していなかったのである。そんなことはない…と、置川は洗面台のアチラコチラと探し始めた。だが、十分ばかり経過しても歯ブラシは見つからなかったのである。置川はすでに疲れ始めていた。疲れるといっても、むろん気疲れの方である。いつも口をすすいで歯ブラシを使うのは食後だった。昨日は? 歯を磨いたあと、確かにコップに入れたぞ…と思えた。ならば、今朝もコップの中に歯ブラシは存在していなければならない。それがないのであ。そうこうしているうちに早く目覚めた時間は流れ、いつもの起きる時間となっていた。今朝は出勤である。昨日のようにのんびり構えてなどいられない。置川は少し焦り始めた。と同時に気疲れも一気に増した。よくよく考えれば、洗口液で口を漱ぎ、朝食を終えてからでもいい訳である。少し意固地になっていた置川には。その発想が巡っていなかった。

 いつの間にか、いつもの時は流れ、すでに遅れ始めていた。それから十五分が経過したが、歯ブラシはとうとう見つからなかった。これ以上は勤めに遅れる…と、置川はようやく歯ブラシ探しをあきらめ、キッチンで朝食にすることにした。そして食事を終えると椅子を立った。そのとき、ふと目をったテーブルの上に、どういう訳か歯ブラシが申し訳なさそうにポツン…と置かれているのが目に入った。発見!! である。^^ 置川は思わず、「ディスカパリィ~~[発見]!!」と喜びに満ち、叫んでいた。それまでの気疲れは、一気に吹っ飛んだ。


                  完

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