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第41話「潜入3」

門をくぐり中にあったロータリーで停めて車を降りると一人の女が出迎えてくれた。



「ようこそいらっしゃいました、篠蔵様 西園寺様」



篠蔵……は俺の事で、西園寺が結城の事だ。

西園寺は白藤の分家の家系で、こちらも名前を借りやすくごまかしやすいところから持ってきたらしい。


西園寺夢佳さいおんじ ゆめか篠倉未音しのくら みおん

名前の響きの重たい二人組である。


「私は案内係を申し付かりました、ここで教師をしています佐々木でございます」


鋭い目つきに眼鏡をかけた20代後半ぐらいの女が、挨拶をすると丁寧に頭を下げた。

俺たちも簡単に用意していた自己紹介を行い頭を下げる。


案内されるがまま俺、結城、犬飼妹は佐々木という女について行く。


「まずはお荷物を寮のお部屋に置いていただきまして、それから学院の施設を紹介させていただきます。

授業の参加は明日からになりますが、クラスの皆に自己紹介だけ先だってお願い致します」

「寮か、ここは全寮制だったな」

「篠倉様ちょっと」

「え?」


佐々木教諭と会話していると結城こと西園寺に腕をひっぱられ佐々木教諭と距離が空く。


「慊人今自分が女だってわかってる!?そのまま過ぎない!?」

「大丈夫だ結城、まだ小学生だし声も低くないし、ちょっと声色も高くしている、この程度なら多分違和感無いぞ」

「この学校にそんなふてぶてしいしゃべり方する子絶対いないよ!」

ふてぶてしいとは失礼なことを言う。

「無理して演技してもキモイだけだぞ、俺はこのままいく」

「もう、ばれても知らないからね!」

結城は不満そうだったが、女装するだけも俺にしてはかなり頑張っていると思う。

これ以上求めるのは欲張りすぎというものだ。



俺達は案内された部屋に荷物を置く。

ロココ調のオシャレな装飾を施された建物で、なんともお嬢様学校にふさわしい寮だった。

部屋は俺と結城で二人で一部屋で10畳の部屋に机が二つと二段ベットが置かれている。

トイレとお風呂は共用とのことだった。

まぁお嬢様学校とはいえ、部屋にトイレ風呂は付いていないか。

これは中々にピンチだ。

「綾香……、寮から近くて人が少なそうなトイレとシャワールームが無いか調べてくれ」

俺は佐々木教諭に聞こえないように綾香に指示を出す。

うなずくと静かに綾香は消えた。


全寮制ではあるが、低学年はこの山の麓の校舎に普通に登校していて、

高学年からこちらの全寮制の名のもとに、山奥に押し入れられるシステムになっている。

俺なら絶対にお断りだ、金持ちの家に生まれた女子は可哀そうなものだ。

この学園に押し込まれた娘たちは、まさに箱入り娘。

俺は大切な物は箱に仕舞わず、見せびらかすタイプなので金持ちの気持ちは全く分からなかった。


小学生の場合は希望すれば週末には家に帰れるらしいが、それでも家族から引き離されて山に押し込められるなんてちょっとした悲劇だ。


「今日は月曜日か……人が少なくなる週末が恐らく一番のチャンスだな」俺は静かに結城につぶやく。

うなずく結城と共に佐々木教諭について寮を出ると広い敷地内の施設を丁寧に案内してくれた。


体育館、プール、図書館、部室等、高等部の校舎、中等部の校舎ーーーー。


高等部の校舎と中等部の校舎は隣合わせに立っているが、小等部の校舎だけは分断されるようにその二つの校舎の間に大きな運動場が広がっていた。


「もうすぐ始業の時間ですね、最後に小等部の校舎を紹介して教室に行きましょう」

俺たちは運動場の周りにある舗装された歩道を歩きながら、我らが小等部へ向かった。


「佐々木教諭」

小等部に向かう途中、俺は一つ気にななっていたことを尋ねることにした。

「あの敷地内にある森はなんだ?」

学園を囲む塀は、その森を内包するように囲んでいた。

何かあるのではと目を凝らすが、鬱蒼たる森には、大木とその木の葉しか確認ができなかった。

そして森には学園との関わりを謝絶するかのように格子で遮られ、入り口には誰か立っているように見える。

まぁ恐らく警備員だろう。


「あの森の中には学園長室がございます」

「学園長室・・・?」

「はい、ですので学生は許可なく立ち入る事は禁止されています」

なぜ学園長室があると、立ち入りを禁止されるのか全く説明になっていなかった。

「なるほど、一度学園長様にご挨拶をしたいところだな」

「機会があればお会いすることもございましょう」


時間はあるが、そう悠長にしている時間はない。

結城にはまだ話していないが、1週間の体験入学ではあるが、断らなければそのまま本入学になってしまう。

出来れば1週間で何か手掛かりを見つけてとっとと帰りたいものだ。


学園長は櫻田家当主ぼ妹だ、何か知っている可能性は高い。


「出来るだけ早くご挨拶したいものだな、学園長っていうのは1番偉いんだろう?本当なら1番に挨拶をするのが礼儀だと思うが」

「ご心配には及びません、さぁこちらが小等部の下駄箱になります、靴を履き替えて教室に向かいましょう」


学園長の事から話をうまくそれされてしまった。

俺たちは靴をスリッパに履き替え佐々木教諭について廊下を歩く。

6-Aという教室に着くと佐々木教諭は足を止めた。


「あなた達のクラスはここです。ここで待っていて声を掛けたら入って来て自己紹介してくだい」

「わかった」

俺の返事に頷くと佐々木教諭はノックをした後教室に入っていった、静かだった教室がざわざわと音を取り戻す。


「慊人ダメだよ女の子を泣かしちゃ」

「おい・・・嫌な事を思い出させるんじゃない」


自己紹介にはあまり好きじゃなかった、全ては泣き虫花屋敷のせいだ。


「お二人とも入ってきてください」


俺達のステラ女学院での生活が始まったーーーーーーー






現代転生の御曹司 -ステラ女学院潜入編ー








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