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第26話「女子一回戦」

前上げたイラストに目に光が入ってないというご指摘を感想でいただきましたので、入れてみました。

球技大会の前日。

 クラスで最後の打ち合わせをすることになり、 体育委員である俺と高比良が教壇の前に立っている。


「今回は、一度勝てば優勝でかなり有利な条件だが。俺達のクラスは今まで勝ち続けてきた。今回も期待しているぞ」


 今回は絶対に負けられない。


「慊人様」

「なんだ、高比良」

「今回の球技大会でC組が勝ちあがって来て負けた場合、C組の全員の願いを聞くと言う約束をしたという話を聞いたのですが」


 俺はそんな約束した覚えはないんだけどな……。


「そうだな、無理な願いを叶えるつもりはないが」


 俺の肯定の言葉を聞いて、クラスがざわめき立つ。

 本当は断固拒否したいところだが、兼続の面子を潰すのも可哀想なので俺は渋々この条件を飲むことにしていた。


「慊人様! 俺達が勝った時のご褒美はないんですか?」


 一人の男子が手を上げ、席を立ちながらそう発言する。

 周りのクラスメイトもその声に頷いたり、同意の声を上げた。


 なんで俺が褒美を出さないといけないんだ……。

 まぁ実は雅彦からクラスメイト達がC組だけずるいという声が上がっていて、こういう話の流れになるんじゃないかと言われていたので対策はしてあるが。


「わかった。もしうちのクラスが勝った場合、今度の俺の誕生日パーテイーにクラス全員の家族ごと招待する」


 これは雅彦の案だった。

 個人的にはかなり微妙な気がすのだが、予想を的中させた雅彦の案だしな、信用するしかない。


 実は俺は誕生日を祝われるのがそんなに好きじゃない。

 気恥ずかしいし、パーティーー自体が好きじゃなかった。

 今までも大々的な誕生日パーティーは基本的には拒否していて、それで母によく嘆かれていたのだが、C組全員の願いを叶えるという訳の判らない罰ゲームよりも断然ましだ。

 

 俺の発言の後、クラスが一瞬静まり返り、やっぱりこんなのじゃ駄目かな? という気持ちが頭によぎった瞬間、感嘆の声が一斉に上がった。


「ロイヤル5以外で慊人様の誕生パーティーに参加出来るのか!」

「お母様とお父様が喜ぶわ!」

「他のクラスの奴に自慢出来るな!」


 何がそんなに嬉しいのか、クラスメイト達は俺の予想に反する反応を見せた。

 雅彦凄いな。

 俺の誕生パーティーに呼ばれるのが何がそんなに嬉しいのだろうか。

 俺だったら面倒くさくて、逆にモチベーション下がるぞ……。


 雅彦の方を見ると「どうだ!」と言わんばかりの顔でこっちを見ていた。

 まさかこんなことでクラスのモチベーションを上げれるとはな、助かったよ雅彦。



 そして球技大会当日。

 俺達A組はシードのため前半は暇だった。

 教室で無駄にデザインの凝った体操服に着替え、取り敢えず俺と結城と雅彦の三人で女子の応援に向かった。

 女子の一回戦はC組対A組だ。


 グラウンドに着くと、ちょうど花屋敷がバットを構えているところであった。


「花屋敷がんばれー」


 俺の応援も空しく空振り三振に終わり、半泣きでベンチに戻って行った。


「何で花屋敷を選手に選んだんだろうか……」


 うちのクラスは男子が13人で女子が16人なので。

 運動が出来ない奴は必然的に補欠になる。

 応援係とも言うが。


「高比良が出るべきだって強く推薦していたみたいだな」


 俺の疑問に雅彦が答えをくれる、雅彦は情報通だな。


「まぁ女子の勝敗は、今回のご褒美に関係ないし気楽なもんさ」


 そういえば何で俺は女子にまでご褒美をあげることになっているのだろうか。

 失敗したな、男子だけでよかったじゃないか。


「すごい、鴻巣さんホームランだよ」


 結城の声に試合に目線を戻すと、鴻巣が無表情にベースを回っていた。

 もう少し嬉しそうな顔すればいいのに。

 可愛げのない子供だ。

 鴻巣らしいとも言えるが。


 鴻巣がホームベースを踏むと、嬉しそうに花屋敷が鴻巣に抱き着いていた。


 しかし最初の鴻巣のホームランから全くうちのクラスの点数が入らなくなってしまった。

 それどころか、逆転を許してしまう。


「なんか相手のクラス凄い気合入ってるな」


 選手たちの顔が怖いし、応援も気合が入っている。

 C組女子から凄い熱気のようなものを感じる。


「当然だ! 優勝すれば慊人にお願いを聞いてもらえることになっているからな!」


 後ろからの声に振り向けば、兼続が嘉手納を連れて仁王立ちしていた。


「なんだ男子の優勝が条件じゃないのか?」


 俺のクラスも優勝を条件にすればよかったな。


「っておい、男子が優勝しなくても、女子が優勝したら女子のお願いを聞かなきゃならないのか!?」

「……そうなるな」


 そうなるな、じゃねえええ!

 そんな話聞いてないし了承もしてないぞ!


「男女共に優勝はもらう! 今回こそは俺が勝つ!」


 嘘でクラスのモチベーション上げといてそんな台詞吐いても全然かっこよくないぞ!

 それに、そう言っていつも負けてるじゃないか。


 ……とはいえ今回は不安だな。

 C組女子凄い気合だし、さっき逆転されてたし。


「あ、慊人様これを」


 兼続の後ろにいた嘉手納がポケットから折りたたまれた紙を取り出して俺に渡してきた。


「何だこの紙は」


 紙を開いて見ると、C組のクラス表なようなものだった。

 立てに生徒の名前が並んでいて、その横に手書きで何か書いてあった。



「こ、これは……」


 佐藤 裕子:あきと様とけっこんしたい。

 知らない奴と結婚とか勘弁してください。


 佐々木 奈子:あきと様とキスしたい。

 キスはまぁほっぺなら。


 成田 智子:あきとさまのこどもがほしいです。

 いやいやいや勘弁してください、まじで。


 山口 雄二:おれもロイヤル5になりたい。

 雄二、お前が入ったらもうロイヤル5じゃないよ、ロイヤル6だよ。


 中村 大吾:あきと様とデートしたい。

 えっ……、え?


 俺は途中で読むのをやめた。


「A組女子ーっ! C組に負けたら誕生会呼ばないからなーっ!」



 俺の声援が功を為したかどうかは判らないが、後半A組女子は怒涛の追い上げを見せた。


「慊人、なんだか女子が怖いよ……」


 その様子を見て結城が怯えていた。


 接戦の末、A組女子チームは見事逆転勝利を収め、俺は心の中でガッツポーズをした。


 ちなみに花屋敷は最後の最後までヒットを打てず、三振する度に半泣きになって鴻巣に慰められていた。

 お前なんで出たんだよ……。


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