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水着商人の伝説

「いや、貴方の実力がこれ程だとは思わなかった」

サザニール男爵領の草原で、リサ伯爵が論功行賞を行っていた。

盗賊の砦は、リサ伯爵が接収。

わずかにあった畑は、リサの所有になる。

調べた所、月収100ディルスは期待できそうだ。

ここに住んでいた盗賊500名は故郷に残す事にした。

「盗賊を打ち破った真一は平民に昇格。伯爵領の首都で商売をする権利を与える」

真一は有難く恩賞を受け取った。

別に断る理由もない。

「有難き幸せに御座います」

日本では失業者だったが、この星では成り上がって見せるぞ。

店さえ持てば俺が社長だ。

誰にも文句は言わせねぇ。

「税金は儲けの2割と設定する。脱税は無期懲役と財産没収ゆえ覚悟するように」

脱税なんかしねえよ。

服は確実に儲かる良い商売である。

日本じゃ外国産に押されて、ブルマ、スクール水着廃絶の波に押されて倒産してしまったが、ファンタジー世界なら大丈夫だろう。

夢よもう一度と言うやつだ。

確か昔読んだファンタジー漫画じゃ、水着みたいな服を着た女戦士が登場してたので、この国でも大丈夫だと思う。

「俺も伝説の水着商人と呼ばれた男。神に誓って脱税などしません」

真一はこの手の誇大妄想が好きな男のようだ。

リサは思った。

水着商人の伝説だと?

水着商人がどうやったら世界を救えると言うのだ?

「まあ良い。頼んだぞ」

出来るだけ優しく言ってみた。

真一の方は気楽である。

「任せといてください。店を開店したら次から次へと新作水着を開発して税金を納めて見せます」

リサは思った。

水着商人の伝説があるなら聞いてみたい。

「水着商人の伝説とやらを聞かせてくれぬか?」

リサは戯言を真にうけたようだ。

「良いですよ」

真一は語りだす。

昔善と悪の戦いがありました。

悪は武装が豊富だったが、善側は資金不足で馬も調達できない状態だったのです。

当然善側は敗北しました。

いよいよ最後の砦が包囲された時、スクール水着を着た女の子の商人が、黄金700万ディルスを配下に運ばせ砦を訪れたのです。

そして黄金を善の王に献上しました。

黄金で武装を整えた善側は激戦の末悪を打ち破り、世に平和をもたらしました。

それ以降善側は悪の軍に勝ち続け、悪の軍を北の大陸に追い払いました。

そして善の軍のリーダーがエルザスの初代皇帝エドワード1世となったのです。

「それ故に水着商人は商人にとって憧れの職業なのです」

嘘っぽい。

全員がそう思った。

思わないのはリサだけだ。

だがどこまでが捏造なのだろう?

エルザス建国の英雄物語は聞いた事あるが、水着商人じゃなくて武器商人だった筈だぞ。

大体伝説が本当なら、奴隷オークションで落札者が一人だけなのは何でだ?

「この説は知られていないのです。水着商人は結城雪菜(せつな)と言う日本人だという説もあります」

仲間のしらけた反応を見て、真一は慌てて言い訳をした。

「エドワード1世は現皇帝だが」

リサが呟いた。

どう見ても真一の言うような善玉には見えない。

税金8割だぞ。

悪の軍に思えるんだがな。

「結城雪菜は日本で存命しております。15歳。善と悪の戦いは5年前の事でしょう?」

俺は日本で直接雪菜に聞いたんだ。嘘な訳ない。

「正確には6年だ。星と星には時差のような物が存在するらしい」

アトルピーが訂正する。

「それにしても天下を平定したとたんに悪の道をひた走るとは思わなかった」

悪の軍に支配されていた時は、税率7割だった。

「皇帝は天下を平定してから変わられた」

奴隷の一人が愚痴をこぼした。

播種量がたったの3倍なのに、8割も税金納められる訳ないだろう」

だからこそリサ伯爵領の芝生は青く見える。

「リサ伯爵領が豊かなのは有名だしな」

そんなでもないとリサは思った。

今現在のリサ伯爵の領民は2500人位。

伯爵領についたら直ぐに狩をしなければならないな。

「水着商人殿も商売をするならリサ伯爵領が一番良いさ。運が良いな」

盗賊の一人がおべっかを使った。

ホントに運がよければ失業などしないと思うが・・・。

「では盗賊の拠点から山岳地帯を強行軍で、リサ伯爵領に向かう」

盗賊の村はサザニ-ル領内だが、領主不在である。

領主不在の領地を誰が統治しようと文句は言われない。

領主を滅ぼした本人でなければだが。

責められるべきは、領地を縮小させた前の領主だ。

官憲に訴えられる筈もないし。

「リサ姫。調べました所、男爵領にゴブリンの集落があるそうです」

「そうか」

盗賊の村を襲撃されると困るな。

「どの程度の規模だ?」

「500人位です」

「追い払ってレベルを上げるか?」

アトルピーは部下に相談した。

この世界にはレベルと言う物があって、上がると技能が習得できるらしい。

分かり易くレベルで表現するが、別に強いと言う訳でもないらしい。

「ほっておけ。レベルアップに励みたいなら、リサ伯爵領で魔物討伐をさせてやる」

「リサ伯爵領のゴブリンは強いですからなぁ」

何度か挑戦したが、返り討ちにあった事が3度あった。

ゴブリンの首領、魔族のアミアスの強さは半端ではない。

「伝説の水着商人殿なら戦えるかも」

盗賊の首領を一騎打ちで倒してから、真一は盗賊の間で人望が高まっていた。

因みに調べさせた所、真一のレベルは12の剣士である。

一般職は水着商人のレベル7だ。

「サザニール男爵の面子を潰す様な事は出来ない。討伐は延期だ」

リサはサザニール男爵と交易の交渉を行わせていた。

リサ達本隊はさっさと伯爵領に出発する。

フォートレスに押し付けといた、伯爵の仕事が待っているのだ。

何の交渉かというと獣の皮を幾らで引き取ってくれるかの交渉である。

交渉担当の男は、5千ディルスを要求した。

「獣の皮に5千ディルスとは吹っかけられたものですな」

サザニールはこの男を軽視したが、それでも追い返そうとはしなかった。

「我が国へいらして検分されれば、穏当な値段だとお分かりいただけます」

「部下をリサ伯爵領に寄越せとそういう事か?」

分かってるじゃねえかこの爺さん。

「リサ伯爵領はド田舎なので、観光もかねて来てくださると嬉しい」

どう考えても数百人は送り込まねば獣皮を回収できない。

商取引にかこつけて宿代を毟り取る作戦なのか?

だとすると交渉を長引かせると我らに不利になるじゃないか。

守銭奴の伯爵だと聞いていたがそこまでやるか?

これは誤解なのだが、リサの普段の行いが悪いからこうなる。

しかも補給も整えねばならないから、交易が成立すれば収入は上がり放題。

これではこちらに来いと言ってもリサは絶対出てこないな。

「交渉が不成立に終わったら滞在費はそちらで負担して下さい」

何だと?

どういう意味だ?

「それはどういう意味で?」

サザニールは穏やかに答える。

「宿代、食費まで負担する財力の余裕は、我が領地にないと言ってるんだ」

サザニールはやや怒りをこめて男に接した。

「大体何の皮なんだ?」

「兎と猪です」

兎と猪はサザニール男爵領にはいないな。

「肉もあるのか?」

妙なところで食いついてきた。

交渉の余地はありそうだ。

「必要ならこれから新鮮な肉を用意させます。今は保存食の肉しか領内にはありません。宿屋の肉も猪ですので存分に味わっていただけると嬉しい」

ほう。

俺は猪肉が大好きなんだ。

アミン公爵は強欲だから、この際リサ伯爵領に乗り換えようかな。

「幾らだ?その宿」

「宿屋の経営には我々は干渉してませんが、確か銅貨40枚」

「安いな。食事だけだと?」

ファンタジー世界の宿屋は食堂付が常識である。

「宿代よりは安いと思いますよ」

「天幕を用意しといた方が良いか?」

宿の収容人数を超える事は間違えないと?

「是非用意しといてください。ド田舎の宿屋が何百人も収容できる訳ないでしょ?帝都の宿屋さえ収容に困って、宿屋ギルドから出入り禁止になったんですから」

あっそう。

その噂は俺も聞いている。

そりゃ部下300人も引き連れて、只で高級宿で豪遊すれば出入り禁止になるよ。

「俺の領地でそれやったら50年は出入り禁止になりますからね」

俺に言われても困るんだが・・・。

因みにこの男は、ドワーフ隊の1人である。

「ここだけの話ですが、姫は宿代は支払っております。奴隷を高級宿に宿泊させたのが宿屋ギルドの逆鱗に触れたのです」

あの姫そんな事してたのか。

困った姫だ。

親父殿によく似て、豪気な真似をする。

病弱だと聞いていたが、才能は大物かもしれん。

「姫に伝えるといい。近日中に俺自らリサ伯爵領を訪問する。宿屋の用意を整えさせろ」

「では獣皮を買っていただけるので?」

男にとっては出世の機会がかかっている。

交渉を決裂させては困るので、多少不利な条件でも成立するだろう。

「品を見てからだ。猪肉の料理を用意しておくんだぞ。泊れなかったら全軍をあげてリサ伯爵領を攻め滅ぼす」

あんたそんなに猪肉が好きなのか?

分かった。

猪肉で国を滅ぼされてたまるか。

だが軍勢があるならゴブリン討伐したらどうなのかなぁ?

「分かりました。直ぐに姫に伝えましょう」

男はサザニールと別れると、許可を貰ってゴブリンの群を討伐して追い払った。

この地方のゴブリンは、数は多いがレベルは低かった。

数百匹を惨殺して、レベルが一気に8レベルになってしまう。

「何だと?俺達が何をしたって言うんだ?」

生き残りのゴブリンは、リサ伯爵領のアミアスに保護を求めた。

この一件で、リサはゴブリンに酷く怨まれる事になる。

だが褒美はサザニールから900ディルスもでた。

ミスリル硬貨9枚だ。

「ゴブリン共を皆殺しにしてディルスが手に入る。エルザスとは良い国だ」

このゴブリン討伐が、リサの名を飛躍的に高めた。

ついでに水着商人真一の名もサザニール男爵領で広まる。

サザニール男爵はこの名声に引かれて集まった観光客をリサ伯爵領に連れて行く事にした。

リサも喜ぶだろう。





読み返してみると設定に無茶ぶりが多い。

まあ初心者なんで大目に見てください。

でも5年前の伝説なら、普通誰だって覚えてるような気も。


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