復興計画
12月20日に、都に1千万ディルスもの大金が融資され、街は潤った。
キートンの政策は、兎に角金の力で経済力を維持するのが基本なのだ。
「キートン様。お金を投資するなら、ジーク村周辺に投資してはいかがでしょうか?あの辺りなら鶏卵も良く売れそうですし・・・」
エルシリアとイリヤとモーガンが進めたが、ラドンは反対した。
「キートンの兄貴がジーク村でどれ程迫害されたかイリヤは知らないのか」
ラドンはイリヤをたしなめようとしたが、イリヤには分からない。
「兎に角ジーク村は俺も嫌だ。キートンの兄貴を公然と迫害した奴だ」
あいつらだけは何があっても許さないと、言いたいところである。
「その気持ちは分かるような気はするけど。人間なんて皆あんなもんだよ」
ファーリがラドンの憤慨を鼻で笑うが、キートンに止めさせられた。
「一応物資は補給してやれ。西のギニア港との通過点として貴重だ」
ギニア港には行った事はないが、黄金の国があの場所にあるなら、西ルートでも東の魔境に到達する筈である。
東の魔境との直接交易がなされれば、大儲け間違いなしだがやってみよう。
「商船を5隻ほど買い付けておいてくれ。心配するな。東の魔境との交易が成功すれば、信じられないほどの富が手に入る筈なのだ」
キートンは、ギニア港を無税の港にして、復興を早めようと画策した。
「皇帝陛下が客間にお待ちしています」
リサか?
何て暇な皇帝なのだろう。
俺の事を警戒して、時々様子を見に来るのだ。
「キートン。遊び人の芝居見事であった。そなたの恭順は認めよう」
リサは一応キートンを褒めておいたが、目が笑っていない。
警戒は解いていない用だ。
リサはどうしてこう、猜疑心が強いのか困りモノだな。
俺だってリサ姫の忠実な部下でいたいのにこうも警戒されるとやりにくい。
「リサ姫。忠誠を認めてくれるなら、俺の恭順が本気だと信じるように努力してほしい。あんたがそれを認めない限り、エルザスに平和は来ないぞ」
「だからそなたの下へ訪れている。暗殺を警戒したら、こんな真似は出来ないぞ」
リサも話の分からない娘ではない。
金貨50枚の貢物を受け取ったリサは不満そうにキートンに聞いた。
「西方は7千万ディルス儲けたと聞いているが、この程度の貢物か?」
純益が7千万であるから、税金も勿論リサに送られている。
「余り金持ちに思われても困るんでね。リサ姫のサインとかあったら、即刻換金して望みの額を調達してくるのだが」
リサは一枚の写真をキートンに差し出した。
「この写真なら数万ディルスはする筈だ。褒美に与える」
それとリサは一隻の船を川に運んできて、キートンに見せた。
「エルザス帝国の戦艦だ。これで惑星Aと交易すると良い。往復は出来ないから、連続での使用は避けるように」
役に立たないな。
まあ仕方ないが、くれるというなら貰っておこう。
「俺にこんな物くれていいのか?」
猜疑心を煽る様な事を、キートンも言わなければいいのにな。
「そなたを飼いならす努力はしてみる心算だ。それでそなたに帝位を簒奪されるなら、私の不徳のせいだろう」
だが許されるならば、簒奪の暁には、500人で良い。
どこかの領民を私に任せてもらって、余生を送らせてもらいたい。
「皇帝を殺せる筈はないだろう」
裏取引に応じてやった。
「どうせ西方に来たのなら、エルシリアに案内させるから視察していけ。どうせ暇な皇帝なんだから、民の生活を視察するべきだ」
「な?」
別に私は激務をかいくぐって、暇を見つけるだけで最初から暇では・・・。
「分かった。良い機会だからな。それで補給を送る準備を部下にさせよう」
リサの方がキートンに飼いならされているようだが、それは黙っていよう。
「エルシリアを呼んで来て、リサを案内せよ」
キートンはリサをエルシリアに任せると、全財産をキートン村Aと寒村の復興に注ぎ込み、好景気を維持させる。
「取り合えず銀行からお金借りまくろう」
キートンの投資で膨れ上がった銀行の金を再びキートンが借りまくる。
これで千万ディルスかき集めた。
この時、瞳がキートンに接触を試み、3億ディルスの有償融資を提案した。
瞳の魂胆は分かっている。
融資を名目に、エルザス西方の富を吸い上げる心算だ。
瞳はブルマ派や、コスプレイヤーの支持を背景に、総理になった人だから、権力を維持する為にも、コスプレイヤーの経済的自立は守る必要がある。
「あの瞳が日本の総理になっていたのか」
エルザス帝国では良く知られた、リサの家臣だったが最近は日本にいた。
因みに日本の人口は1億2千万人を維持しているらしい。
食糧自給率は、脅威の120%だ。
食うだけなら何とかなるので、この食糧危機の時代である事も手伝って、食糧に関しては、殆ど鎖国状態になっていた。
開国すると、農民が食えなくなるので、物凄く困るのである。
エドワード二世の侵略以降、増強された自衛隊50万人は、他国の圧力もあって、年間20兆円もの無償融資と引き換えに、段階的に削減される事になっていた。
西方共和国が、リサとキートンに滅ぼされたので、取引先を探している。
「武器なら買わないぞ。戦争は終わったんだ」
キートンは、冷たく瞳を追い返そうとして、寸前で考え直した。
こいつ、俺らに相手にされなければ、リサの敵に武器を売りつけるな。
「話位は聞いておこう。自衛隊が削減させられるので、武器商人が生活に困っているのか?その手の話は、皇帝陛下にしてくれないか」
勿論リサにもしている。
金属以外の莫大な物資が、エルザスから日本に輸出されてる筈だ。
エルザス帝国内では、日本の太陽光発電所を革命国家に完成させている。
「瞳が来ているのか?構わぬから武器を買ってやれ。あの娘を敵に回したら馬頭などよりはるかに恐ろしい存在になる事は、間違えがない」
そんな事言われても、お金は底を尽きている。
「それでどの程度の値段で買えと言うのだ?」
「船一隻千ディルス。戦闘機もオマケにつけていい」
随分安いが、戦闘機は中古でも5億はしないだろうか・・・?
「激安で売れるように、アジア・太平洋戦争当時の技術水準で造っているから、大安売りできるのよ。どうせ勝ったら複製品を造る心算だろうから、安い買い物だと思うんだけどな」
確かにこれで千ディルスなら激安だ。
リサの許可も下りてる事だし、買ってみよう。
「是非売ってくれ。ところで、この船ガソリンか?戦闘機も・・・」
「その船と戦闘機は太陽光のシステムよ。だからのろいわ」
その辺は、好き勝手に改造して造ってくれ。
まあ日本が何を売りつけて一儲けする計画かは知らぬが、いい取引先にはならんと思うんだがな。
「分かった。20隻くれ。それと食糧の無償供与もお願いする」
「甘い事言うな。有償に決まっているよ」
「それでも構わないから。ミスリルと引き換えに持ってきてくれ」
取引は成立した。
日本では超高級品のミスリルの販売を独占出来れば数十兆円はいけるのだ。
西方に食糧を供給するのも2兆円位の出費で済む。
「では早速融資と補給を行わせてもらう。これだけ儲かるのだから、そなたの民を不況から救うのは、義務と言うものだ」
責任の半分は瞳にあるような気もするが、死の商人を毛嫌いしてもしょうがないので、瞳の悪口は言わないように、民に言い含めておいた。
日本とブルマ派の利益しか考えない女だが、味方にすれば心強い。
そして別に邪悪な心の持ち主ではないのも信頼できる理由だった。
自分を支持する者に対してしか、責任を負わないのも道理である。
「では私は日本に帰る。西方に栄光あれ」
「栄光あれ」
調子の良い総理大臣だな。
だが手煮に回すのは止めた方が良さそうだな。
「ご主人様~。久しぶりにご飯作って」
キートンの打ち出の小槌の役割をしているファーリである。
「分かった。お前には世話になってるし、作ってやろう」
この天才画家を、たかが銅貨4枚の飯で飼いならせるなら激安な買い物だ。
それに最近働かせたばかりだから、ちゃんと報酬は与えないといけない。
冬眠をしてるから、余り体に負担のかからない食事にしないとな。
寝る前に肉料理では、絶対に太ると思う。
部下の健康管理は、俺の料理の才能にかかっているのだ。
「美味しい。もっと頂戴」
「・・・」
ファーリが大食いなの忘れていた。
金貨1枚の予算で何とか満足してくれるかなぁ?
今までが今までだから、追加の材料用意しておいた方がいいかも。
ファーリ、一食で1万ディルスを超える金額を使った事があるらしい。
1万ディルスは日本円で8億円だ。
画才がなければ食っていけなかっただろう。
ファーリの一族が貧乏だったのってもしかしてドラゴン族の大食いのせい?
「大丈夫よ。今回は1ディルスで我慢するわ」
我慢できるならいつも我慢して、小食を維持してほしいのだが。
「ご主人様。眠くなってきた。お休みなさい・・・」
冬眠中のファーリは食いながらぶっ倒れて、寝てしまった。
「冬眠なら春が来るまで寝続けてくれれば、何の問題もないのだが」
まあ、眠い眠いと嫌がるファーリを叩き起こして用事をさせるのは俺だが。
「ラドン。この思いファーリをベットまで運んでおいてくれ」
ファーリは元がドラゴンの為なのか、少し重い。
キートンでは運べないのだ。
「キートン様。俺にどうしろと言うのだ?」
ファーリを部下3人で引きずっていきながら、ラドンは愚痴った。
そのまま厨房に戻ってきて、後片付けを手伝う。
「キートンの兄貴。ファーリを余り太らすんじゃないぞ」
只でさえ大食いのファーリが太ったら、ダイエットが大変だろうが。
全く。
人間の食べ物を食べているドラゴンは、こうも大食いになるものなのか?
かなりの金どころの話ではないぞ。
国家の庇護がなければ、とても食わせられない。
「だんだんファーリの大食いがエスカレートしてくるなぁ」
冬篭りの食糧ロクに食わせてないから、そのせいかも知れないな。
ちゃんと食わせれば、春までぐっすり寝てしまうのかもしれない。
熊だって、食糧不足だとたまに冬眠出来ずに街に降りてくるし。
来年の冬篭りの時は、好きなだけ食べさせてみようとキートンは思った。
そういえは、冬眠ネタなのに、
冬篭りの食糧ファーリに食べさせてなかったな・・・。




