キズナ
――ユイの家。
ユイの腕には――
うーちゃんとカナタからもらった、小さな花のブレスレット。
ユイ
「…………♡」
そっと――
なで。
うーちゃん
「ユイ。」
ユイ
「ん?」
うーちゃん
「かわいい♡」
ユイ
「ほんと?」
うーちゃん
「う〜♡」
カナタ
「僕もそう思う!」
うーちゃんは満面の笑顔。
カナタも得意げです。
ユイ
「ふふっ。」
ブレスレットを――
そっと押さえて。
ユイ
「ずっと大事にするね。」
うーちゃん
「う〜♡」
カナタ
「やった!」
二人が嬉しそうに笑います。
少し離れたところから――
コヨリ
「…………。」
じーーっ。
イズナ
「…………。」
ちらっ。
イズナ
「コヨリ。」
コヨリ
「なに?」
イズナ
「さっきから、ずっと見てるけど。」
コヨリ
「見てない。」
イズナ
「見てたでしょ。」
コヨリ
「見てない。」
イズナ
「…………。」
コヨリ
「…………。」
ちらっ。
また――
ユイたちを見るコヨリ。
――帰り道。
てく。
てく。
イズナ
「今日の夕飯なんだろ。」
コヨリ
「…………。」
イズナ
「コヨリ?」
コヨリ
「なに?」
イズナ
「なんか考えてる?」
コヨリ
「べつに。」
イズナ
「ほんと?」
コヨリ
「ほんと。」
てく。
てく。
ちらっ。
イズナ
「?」
コヨリ
「なんでもない。」
――その夜。
イズナ
「先にお風呂入ってくるね。」
コヨリ
「うん。」
ぱたん。
一人になったコヨリ。
思い出すのは――
『ずっと大事にするね。』
嬉しそうなユイ。
コヨリは――
二人で撮った写真を見ます。
『ユイ、うれしいする。』
うーちゃんの言葉。
コヨリ
「…………。」
「私も。」
写真のイズナへ――
「イズナ、うれしいする。」
――翌日。
イズナは学校。
叔母さん
「コヨリちゃん、どうしたの?」
コヨリ
「おばちゃん。」
「お願いある。」
叔母さん
「お願い?」
コヨリ
「うん。」
コヨリ
「イズナに――」
「プレゼントしたい。」
叔母さん
「イズナに?」
コヨリ
「うん。」
叔母さん
「何かの記念日だったかしら?」
コヨリ
「ちがう。」
叔母さん
「じゃあ、どうして?」
コヨリ
「昨日――」
「うーちゃんとカナタが、ユイにプレゼントした。」
「ユイ――」
「すごく、うれしそうだった。」
叔母さん
「…………。」
コヨリ
「だから。」
少しだけ――
もじ。
「私も、イズナを――」
「うれしい、する。」
叔母さん
「…………。」
にこっ。
「そっか。」
「じゃあ、おばちゃんも手伝おうか?」
コヨリ
「お願い。」
叔母さん
「イズナが好きなもの、考えてみましょうか。」
コヨリ
「うん。」
叔母さん
「イズナは何が好き?」
コヨリ
「…………。」
即答。
「私。」
叔母さん
「…………。」
叔母さん
「ずいぶん早かったわね。」
コヨリ
「ちがう?」
叔母さん
「……たぶん合ってる。」
コヨリ
「じゃあ――」
両手を、ぱっ。
「私、あげる。」
叔母さん
「コヨリちゃんは、もう一緒にいるでしょう?」
コヨリ
「…………。」
「そっか。」
叔母さん
「じゃあ――」
「イズナとのことで、一番大切なことって何?」
コヨリ
「…………。」
思い浮かべます。
朝も――
ごはんも――
おでかけも――
そして――
戦うときも。
イズナ
『コヨリ!』
コヨリ
『うん!』
二人の力が――
一つになる。
現在。
コヨリ
「イズナ――」
「ごはんも。」
「おでかけも。」
「戦うときも。」
両手を――
ぴたっ。
「ずっと、いっしょ。」
叔母さん
「…………。」
叔母さん
「じゃあ、どんなプレゼントがいい?」
コヨリ
「…………。」
少し考えて。
「これからも――」
「いっしょのやつ。」
叔母さん
「おそろい?」
コヨリ
「うん。」
叔母さんは――
同じ形を二つ描きます。
「こんなのはどう?」
コヨリ
「…………。」
ふるふる。
「ちがう。」
コヨリ
「ただ、おなじじゃない。」
右手と左手を――
離して。
すっ。
ぴたっ。
コヨリ
「イズナと私。」
「こう。」
叔母さん
「…………。」
「ああ。」
叔母さんは――
新しい形を描きます。
「離れているときは、二つ。」
そして――
ぴたっ。
「つなげたら、一つ。」
コヨリ
「…………!」
ぱあっ。
「それ。」
叔母さん
「作る前に、どんなものにするかもう少し考えましょう。」
「名前とか、文字を入れてもいいかもね。」
紙に――
さらさら。
KOYORI
そして、その下に――
IZUNA
コヨリ
「…………。」
二人で――
じーーっ。
叔母さん
「…………。」
ふと――
目が止まります。
KOYORI
最初の文字――
K。
そして。
IZUNA。
叔母さん
「…………あら?」
コヨリ
「どうしたの?」
叔母さん
「ちょっと待って。」
別の場所に――
さらさら。
K
その横へ。
IZUNA
間を詰めます。
KIZUNA
叔母さん
「…………!」
コヨリ
「?」
叔母さん
「コヨリちゃん。」
「これ、読んでみて。」
コヨリ
「K……I……Z……U……N……A……。」
そして。
「キズナ。」
叔母さん
「そう。」
叔母さん
「コヨリちゃんの最初の――」
K。
「そこに――」
IZUNA。
「イズナをつなげると。」
K + IZUNA
KIZUNA
コヨリ
「…………。」
コヨリは――
自分をちょん。
「コヨリちゃんのK。」
イズナの名前を――
ちょん。
「イズナ。」
そして――
KIZUNA
コヨリ
「…………!」
「キズナ。」
叔母さん
「偶然なのに、なんだかすごいわね。」
叔母さん
「それにね。」
さらさら。
紙に――
『絆』
コヨリ
「?」
叔母さん
「『きずな』って――」
「こういう字を書くの。」
コヨリ
「きずな……。」
叔母さん
「人と人との――」
「大切なつながり。」
コヨリ
「つながり。」
二つで一つになる飾りを見る。
コヨリ
「…………。」
「イズナと私。」
叔母さん
「そうね。」
叔母さん
「…………。」
『絆』を見て――
「……あら。」
コヨリ
「?」
叔母さん
「もう一つ、偶然があるみたい。」
その指が――
『絆』
の左側へ。
叔母さん
「ここ。」
『糸』
コヨリ
「いと。」
叔母さん
「そう。」
「『絆』っていう字には、糸が入ってるの。」
叔母さん
「それに――」
コヨリを見て。
「『こより』もね。」
指先で――
くる。
くる。
「紙なんかを細くよって作る――」
「糸みたいなもの。」
コヨリ
「…………。」
紙の上には――
KOYORI
IZUNA
KIZUNA
そして――
『絆』
その中の――
『糸』
コヨリ
「…………。」
じーーっ。
やがて――
「ぜんぶ、つながった。」
叔母さん
「ほんとね。」
コヨリ
「こっち――」
左側のプレートを指して。
「K。」
そして右側。
「IZUNA。」
叔母さん
「つなげると?」
コヨリ
「…………。」
にこっ。
「キズナ。」
テーブルの上。
小さなプレート。
紐。
留め具。
叔母さん
「危ないところは私がやるからね。」
コヨリ
「うん。」
二人で――
作り始めます。
コヨリ
「…………。」
じーーっ。
「曲がった。」
叔母さん
「大丈夫。」
コヨリ
「でも。」
叔母さん
「コヨリちゃんが作ったって分かる方が、イズナは嬉しいと思う。」
コヨリ
「…………。」
「じゃあ、これでいい。」
そして――
一方には。
《K》
もう一方には。
《IZUNA》
コヨリ
「…………。」
すっ。
二つを近づけて――
カチッ。
K|IZUNA
コヨリ
「…………。」
指でそっとなぞって。
「キズナ。」
叔母さん
「いいものができたね。」
ぱかっ。
もう一度――
カチッ。
コヨリ
「…………♡」
《IZUNA》を――
そっと撫でて。
「はやく、渡したい。」
叔母さん
「もうすぐ帰ってくるわよ。」
――その頃。
がちゃ。
イズナ
「ただいまー。」
コヨリ
「…………!」
さっ。
叔母さん
「おかえり。」
イズナ
「…………。」
イズナ
「今、何か隠した?」
コヨリ
「隠してない。」
イズナ
「隠したでしょ。」
コヨリ
「…………。」
「あとで。」
イズナ
「?」
コヨリ
「二人のとき。」
イズナ
「……分かった。」
――その夜。
二人の部屋。
コヨリ
「イズナ。」
イズナ
「ん?」
コヨリ
「手。」
イズナ
「手?」
すっ。
イズナの手のひらへ――
ころん。
小さなプレート。
そこには――
《IZUNA》
イズナ
「…………。」
イズナ
「これ……。」
コヨリ
「イズナに。」
イズナ
「私に?」
コヨリ
「うん。」
「プレゼント。」
イズナ
「…………。」
イズナ
「どうしたの、急に。」
コヨリ
「昨日――」
「うーちゃんとカナタが、ユイにプレゼントした。」
「ユイ、すごくうれしそうだった。」
イズナ
「…………。」
コヨリ
「だから。」
少しだけ――
もじ。
「私も――」
「イズナを、うれしいしたかった。」
イズナ
「…………。」
イズナは――
プレートをぎゅっ。
コヨリ
「…………。」
「うれしくない?」
イズナ
「違う!」
コヨリ
「?」
イズナ
「嬉しい。」
「すっごく嬉しい。」
コヨリ
「…………。」
「よかった。」
イズナ
「コヨリのもあるの?」
コヨリ
「ある。」
すっ。
そこには――
《K》
イズナ
「…………?」
「K?」
イズナ
「なんでコヨリはKだけなの?」
コヨリ
「…………。」
少しだけ――
にこっ。
「つなげて。」
イズナ
「?」
コヨリの――
《K》
イズナの――
《IZUNA》
二人で近づけます。
カチッ。
K|IZUNA
イズナ
「…………。」
イズナ
「K……IZUNA……。」
「KIZUNA……。」
「…………!」
コヨリ
「コヨリちゃんのK。」
「イズナ。」
二つを指して。
「キズナ。」
イズナ
「コヨリのKと――」
「イズナで、キズナ……。」
コヨリ
「うん。」
イズナ
「…………。」
ふふっ。
「ずいぶんおしゃれだね。」
コヨリ
「おばちゃんが見つけた。」
イズナ
「そうなの?」
コヨリ
「うん。」
コヨリ
「あと。」
イズナ
「?」
コヨリ
「絆には――」
「糸もいる。」
イズナ
「糸?」
コヨリ
「うん。」
自分を――
ちょん。
「コヨリ。」
イズナ
「…………!」
イズナ
「コヨリのK。」
「イズナ。」
「二つでキズナ。」
「『絆』には糸が入ってて――」
コヨリを見る。
「コヨリも糸みたいなもの。」
コヨリ
「うん。」
イズナ
「…………。」
「ほんとに全部つながってる。」
コヨリ
「うん。」
イズナ
「じゃあ――」
ぱかっ。
《K》はコヨリ。
《IZUNA》はイズナ。
そして――
カチッ。
KIZUNA
イズナ
「一緒なら――」
「キズナ。」
コヨリ
「…………♡」
「うん。」
二人は――
それぞれのプレートを身につけます。
コヨリの胸元に――
《K》
イズナの胸元に――
《IZUNA》
イズナ
「どう?」
コヨリ
「にあう。」
イズナ
「コヨリも。」
二人の手が――
自然に。
きゅっ。
重なります。
その瞬間――
ぽう……。
イズナ
「…………!?」
コヨリ
「…………?」
コヨリの胸元。
《K》
淡い光が――
ぽう……。
コヨリ
「…………。」
そして――
イズナの胸元。
《IZUNA》
こちらも――
ぽう……。
イズナ
「これ……。」
「光ってる。」
きらっ。
きらっ。
離れた二つのプレートが――
同じリズムで瞬きます。
まるで――
見えない一本の糸が、二人をつないでいるように。
イズナ
「こういう仕掛け?」
コヨリ
「ちがう。」
イズナ
「え?」
コヨリ
「おばちゃん――」
「光るようには、してない。」
イズナ
「…………。」
コヨリ
「ただの――」
《K》を握って。
「プレゼント。」
しばらく――
二人で光を見つめます。
コヨリ
「イズナ。」
イズナ
「なに?」
コヨリ
「…………。」
小さく。
「うれしい?」
次の瞬間。
ぎゅっ♡
コヨリ
「……!」
イズナが――
コヨリを抱きしめます。
イズナ
「すっごく。」
イズナ
「ありがとう、コヨリ。」
コヨリ
「…………。」
イズナの服を――
きゅっ。
「うん。」
イズナ
「大事にする。」
コヨリ
「私も。」
二人の胸元には――
《K》
そして――
《IZUNA》
二人の名前を――
ただ紙に書いただけでした。
けれど。
コヨリの最初の文字と――
イズナの名前をつないだら。
K + IZUNA
《KIZUNA》
そして――
『絆』という文字には。
『糸』。
コヨリ
「…………。」
イズナの隣へ――
ぴとっ♡
コヨリ
「イズナ。」
イズナ
「ん?」
コヨリ
「いっしょ。」
イズナ
「…………。」
ふふっ。
なで。
なで。
イズナ
「うん。」
「ずっと一緒。」
コヨリ
「…………♡」
その瞬間――
二人の胸元。
《K》
《IZUNA》
同時に――
きらっ。
まるで。
見えない一本の糸が――
二人を結んでいるように。
始まりは――
大好きな誰かを、
喜ばせたかっただけ。
そんな小さなプレゼントから――
この日。
二人だけの――
《キズナ》
が生まれました。
そして二人はまだ――
この小さな《キズナ》が、
やがて本当に――
二人の絆を「力」に変えることを知りません。




