新たな脅威
数日後、セリスたちのチームは日に日にその勢力を増していた。新たに加入した冒険者たちは、宿場町のギルドのサポートのもとで次第に自信をつけ、チーム全体の士気も高まっていった。
セリスはテントの中で地図を広げ、次の討伐目標を指差した。
「次はこのエリアにいるゴブリン部隊ですわ。今の戦力なら、一人当たりの負荷も低く抑えられるはずです」
新たに加わった冒険者たちは、セリスの指示に従いながら装備を整え、出発の準備を進めていた。宿場町の職員たちも、必要な物資を運び入れ、冒険者たちのサポートを怠らなかった。
セリスは周囲を見渡しながら、心の中で満足感を抱いていた。
「毎日少しずつ勢力を増やしているわね。これで魔物の討伐も楽になる」
実際、彼らが出発すると、魔物の討伐も以前に比べてスムーズに進んでいた。新たに加入した冒険者たちは、すぐに戦闘のリズムを掴み、チーム全体の動きが一段と機敏になっていた。
「よし、次のゴブリンだ!」
一人の冒険者が叫び、勢いよく前進する。セリスもその後に続き、剣を振りかざしてゴブリンたちに立ち向かった。
「皆、気をつけて!ゴブリンシャーマンの魔法攻撃に注意するのですわ!」
セリスの指示に従い、冒険者たちは見事に連携してゴブリン部隊を撃破していった。一人当たりの負荷が低く抑えられているため、疲労感も少なく、戦闘後の回復も早かった。
戦闘が終わると、宿場町の職員たちがすぐに回復ポーションや食事を配給し、冒険者たちの体力を回復させた。
「さあ、次の目標に向かいましょう。これでますます我々の勢力が強くなりますわ」
薄暗い森の中、宿場町組の冒険者たちは慎重に進んでいた。突然、遠くから不気味な雄叫びが聞こえた。ドレイクに騎乗したゾンビ兵たちが、一行に向かって突進してくる。
「来ましたわ!みんな、気を引き締めて!」
セリスは剣を構え、仲間たちに声をかけた。
ドレイクの咆哮が響き渡り、その恐ろしさに冒険者たちの一部は一瞬立ち止まる。しかし、セリスの冷静な指示で全員が戦闘態勢に入った。
「尻尾に気をつけて!」
セリスの注意喚起に従い、冒険者たちは素早く動いてドレイクの攻撃を回避しつつ、反撃の機会を窺った。
「今だ!」
一人の冒険者が叫び、ドレイクの側面に素早く移動して攻撃を仕掛けた。その攻撃に合わせて、他の冒険者たちも次々とドレイクに攻撃を浴びせた。ゾンビ兵も武器を振り回しながら抵抗するが、宿場町組の連携がそれを上回った。
「セリス、こっちは押してるけど、まだ油断できない!」
一人の冒険者が叫び、セリスもその言葉に頷いた。
「分かりましたわ。皆、しっかり守りを固めながら進んで!」
セリスは氷の剣を振るい、ドレイクの足元に冷気を放つ。
ドレイクの動きが鈍くなり、その隙を突いて仲間たちが一斉に攻撃を仕掛けた。ドレイクが倒れると、騎乗していたゾンビ兵も地面に転がり落ちた。
「最後の一撃を!」
セリスが叫び、仲間たちは一斉にゾンビ兵に攻撃を浴びせた。ゾンビ兵はその圧倒的な攻撃に耐えきれず、ついに崩れ落ちた。
「よし、全滅しましたわ!」
セリスが勝利を宣言し、冒険者たちは一息ついた。皆、疲れは見えるものの、誰一人として命を落とさなかった。
「死者を出さずに済んでよかった……」
一人の冒険者が安堵の声を漏らし、他の冒険者たちもその言葉に頷いた。宿場町組のチームワークが、今回も彼らを守ったのだ。
セリスは一息ついた後、周囲を見渡し、倒れたゾンビ兵たちの死体が散乱している光景を目にした。彼女の表情は一瞬引き締まり、過去の記憶が脳裏をよぎった。
「皆、ちょっと聞いてくださいまし!」
セリスは冒険者たちに声をかけ、全員の注意を引いた。
「ゾンビの死体はそのまま放置しておくと、また動き出す可能性がありますの。宿場町でもそういったことがありました。ですから、今すぐにこれらの死体を焼却する準備をしてくださいまし」
彼女の言葉に冒険者たちは頷き、それぞれの持ち場で動き出した。薪を集め、火を起こし、ゾンビの死体を焼却するための準備を進めた。
「これでゾンビが再び起き上がる心配はありませんわ」
セリスは満足げに火の強さを確認しながら言った。冒険者たちは彼女の指示に従い、順調に死体の焼却を進めていた。
「これで一安心ですね」
一人の冒険者が呟き、他の冒険者たちもその言葉に同意した。
セリスはキャンプの一角に集まった数人の冒険者と共に、焚き火の前で思案していた。彼女の顔には緊張と疑念が浮かんでいる。
「ゾンビとは死者が復活した魔物。普通ならそんなに頻繁に起こることはありませんわ」
セリスは焚き火を見つめながら話し始めた。
「つまり、復活するだけの要因がどこかに存在するってことですね」と、一人の冒険者が付け加えた。
セリスは頷き、続けた。
「そうですわ。あまりにも強い悔恨の念があれば、自然と復活することもありますが、これだけの数のゾンビが現れるのは偶然とは言い切れませんの」
別の冒険者が口を開いた。
「確かに。これだけのゾンビが同時に現れるとなると、何かしらの力が働いているとしか思えません。誰かが意図的に復活させているのか、それとも……」
セリスは焚き火の前で一人思案していた。
彼女の心には、アレクシスとの会話が蘇っていた。現魔王の反対派が魔物をけしかけていること、その背後には恐ろしい陰謀があると知っていた。
(現魔王の反対派が背後にいるなら、これは単なる偶然ではない。)
その疑念が再びセリスの心に浮かび上がった。
彼女はゾンビの発生が自然のものではなく、魔族の術によるものだと確信した。だが、今はそれを仲間に伝える時ではない。混乱を避けるためにも、この情報は自分の中に留めておく必要があった。
セリスは静かに立ち上がり、仲間たちに向けて声をかけた。
「周囲の調査を進めましょう。もし何か異常なものが見つかれば、それを報告してくださいまし。私たちは準備を整え、次なる脅威に備えますわ」
冒険者たちは頷き、それぞれの役割に戻っていった。
セリスたちは森の中を進みながら、崩壊寸前の部隊の叫び声と金属のぶつかる音を聞きつけた。
急いで駆けつけると、彼らの目の前には恐ろしい光景が広がっていた。全身を金属の鎧で固めた何かが、異常な瘴気をまといながら騎士団をじわじわと追い詰めていた。
「一体あれは何ですの?」
セリスは呟いた。
中身は見えないが、その鎧から放たれる瘴気は異様なほどおぞましかった。彼らの剣技は荒削りでメチャクチャだが、異常な耐久力で騎士団の攻撃をものともせずに受け止めていた。
「騎士団が押されているなんて……」
仲間の一人が声を震わせた。
「黙って見ているわけにはいきませんわ」
セリスはアイスソードを抜き、仲間たちに指示を出した。
「皆さん、あの金属の鎧を狙いましょう。瘴気を纏っているが、私たちの力なら対処できるはずです」
彼女の言葉に頷く仲間たち。セリスは一気に前線に駆け出し、騎士団を支援するために剣を振るった。
「離れてくださいまし!」
セリスの叫びに応じ、騎士団の一部が後退する。
セリスはその隙に鎧をまとったモンスターたちに接近し、アイスソードで足元を凍らせた。凍りついた足元に動きが鈍るモンスターたち。
「今です! 叩きつけてください!」
セリスの合図により、仲間たちが一斉に力を合わせて攻撃を仕掛けた。
剣や魔法の連携攻撃が次々と放たれ、鎧に包まれたモンスターたちは次第に追い詰められていく。しかし、彼らの耐久力はなおも健在で、簡単には倒れない。
「しぶといわね……」
セリスは冷静に次の一手を考えた。
「みんな、背後から攻撃を集中させるのです! 彼らの動きを封じ込めましょう!」
仲間たちは指示に従い、鎧を纏ったモンスターたちの背後に回り込んで攻撃を加えた。その連携攻撃により、徐々にモンスターたちの動きが鈍っていく。
「今ですわ!」
セリスは再びアイスソードを振り下ろし、鎧の足元をさらに凍らせた。
その隙に仲間たちが一斉に攻撃を加え、鎧を切り裂いた。その瞬間、鎧の中から瘴気が一気に噴き出し、モンスターたちは崩れ落ちた。
「やったわ……」
セリスは息を整えながら、仲間たちと共に騎士団の元へと駆け寄った。
「皆さん、大丈夫ですか?」
彼女の問いかけに、騎士団の一人が疲れ切った声で答えた。
「助かった……あれは一体……」
「わかりませんわ。ただ、何か大きな力が背後にいることだけは確かです」
セリスは騎士団を励ましながら、再び思案に沈んだ。新たな脅威の正体を突き止めるために、彼女の戦いはまだ続く。
新たな鎧のモンスター出現の情報は、瞬く間に他の冒険者たちと騎士団に広がった。
宿場町組のキャンプでもその話題で持ちきりだった。
「これじゃあ、どこから手をつければいいのかわからない」
冒険者たちは口々に不安を口にした。
騎士団の本部でも同様に、混乱と焦りが広がっていた。騎士団長は地図を広げ、部下たちと対策を話し合っていたが、具体的な方策が見つからない。
「どうやら、あの鎧のモンスターはただの魔物ではないようです」
騎士団の参謀が言葉を発した。
「だが、一体どうやってあの耐久力を突破するんだ?」
別の騎士が声を荒げる。
「このままでは被害が拡大するばかりだ。何か手を打たねばならん」
騎士団長は苦々しい表情で地図を見つめた。
同じ頃、宿場町組のキャンプでも対策会議が開かれていた。セリスは他の冒険者たちと共に円陣を組み、議論を重ねていた。
「鎧のモンスターは一筋縄ではいきませんわ。アイスソードで動きを封じることはできましたが、そればかりに頼るわけにはいきませんの」
セリスが冷静に話を続けた。
「何か弱点を見つけないと、次の戦いではもっと厳しくなるだろう」
一人の冒険者が言った。
「きっと方法はあるはずですわ」
セリスは決意を新たにした表情で周囲を見渡した。
「まずは情報収集ですわね。どこから来たのか、そして弱点は何か。全てを洗い出す必要がありますわ」
他の冒険者たちは頷き、各々の役割を果たすために動き出した。情報を収集し、対策を練るために奔走する冒険者たちと騎士団。新たな脅威に立ち向かうため、一同は一丸となって準備を進めていった。
しかし、具体的な方策が見つからない中で、不安と焦りが広がる。次の戦いまで時間は限られていた。




