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派遣期間終了

 派遣期間最終日、セリスは緊張感を漂わせながら王国の本部へと向かった。


 豪華な装飾が施された部屋に足を踏み入れると、そこには騎士団長と数人の王国高官が待ち構えていた。彼らの鋭い視線が一斉にセリスに向けられ、重々しい空気が漂っていた。


 騎士団長は言葉を切り出した。


「君たちの実力は見事なものだ。そこで、我々は君たちに正式に騎士団員になってもらいたいと考えている」


 セリスは心の中で動揺しながらも、冷静な表情を保った。任務が無事に終わり、あとは宿場町に戻るだけだと思っていたのに、こんな形で引き止められるとは予想外だった。


「お話は光栄ですが、私は既に宿場町のギルドでの任務を全うすることを誓っております」


 王国高官の一人が焦りを隠しきれない様子で口を挟んだ。


「君の能力は冒険者ギルドに留まるものではない。王国のためにその力を尽くすことができるはずだ」


 別の高官も続けた。


「待遇も冒険者よりはるかに良くなる。冒険者も騎士団もやることは基本的に変わらないのだから、君にとっても悪い話ではないはずだ」


 日雇いのような生活をしている冒険者風情が、このような騎士団に召し抱えられるなど、まずないことであり、それを断るというのは一体どういうことだ?


 彼らの苛立ちが表情に表れていた。


 セリスは静かに首を振った。彼らの言葉には一理あるが、彼女の心は既にエリシアとの再会と新たなビジネスの計画に向いていた。


「申し訳ありませんが、私には別の使命があるのです」


 高官の一人が鋭い声で脅しをかけた。


「君は宿場町から来ているそうだね。君に対するクレームを町議会に入れることもできる。断れば、あなたの冒険者活動が難しくなることを覚悟してほしい。サンセットにいられなくしてやることも考えている」


 セリスはその脅しにも動じなかった。彼女の意志は固かった。


「それでも、私は自分の道を選びます」


 部屋の空気が一瞬凍りついたようだったが、セリスの決意は揺るがなかった。彼女は深く礼をして、部屋を後にしようとした瞬間、高官の一人が焦りからくる苛立ちを隠しきれずに言葉を投げかけた。


「待て、セリス。そのアイスソードとやら、非常に貴重なものだ。一生遊んで暮らせる金額で買い取ると言ったらどうだ?」


 エンチャント武器など滅多にお目にかかれるものではない。


 そんな貴重な武器を持つ者は限られており、王国としても喉から手が出るほど欲しい一品だった。高官たちは、どうにかしてこの武器を手に入れたいという焦燥感に満ちていた。


 セリスは首を振った。


「申し訳ありませんが、それもお断りします」


「これほどのものを持っているということは、どこの貴族だ?便宜を図ってやることもできるが」


 セリスは毅然とした態度で答えた。


「貴族ではありません。ただの冒険者です」


 高官たちは苛立ちを隠しきれず、セリスを手放したくない気持ちが強く表れていたが、彼女の決意は揺るがなかった。部屋の空気が一瞬凍りついたようだったが、セリスは深く礼をして、部屋を後にした。


 外に出ると、セリスはほっと息をついた。


「これで派遣期間も終わり。宿場町に帰って、エリシアにすべてを報告するだけ」


 彼女の胸には新たな使命感と期待が膨らんでいた。


 宿場町に向かう馬車の中、セリスとシェイドは揺れる車内で向かい合って座っていた。窓から差し込む陽光が揺れる影を作り出し、二人の顔に一瞬の明暗を映し出していた。


 セリスはじっとシェイドを見つめ、彼の過去に対する興味を抑えきれずに尋ねた。


「シェイドさん、あなたの過去について教えていただけませんか?」


 シェイドはフードの下から鋭い視線を返し、一瞬の沈黙の後、微笑んだ。


「まぁ、色々ある。察してくれ」


 その言葉には深い意味が含まれているようだったが、セリスにはそれ以上の追及はできなかった。彼の過去には触れてはいけない何かがあるのだろうと察したのだ。


 セリスは少しだけ眉をひそめたが、すぐに表情を緩めた。


「そうですか。それもまた、あなたの魅力の一部ですわね」


 シェイドは軽く肩をすくめ、外の風景に目を向けた。


「過去なんてものは、どうでもいい。今が面白ければそれでいいんだ」


 セリスはその言葉に、彼の独特な価値観を感じ取った。彼は本当に物事を面白いかどうかで判断しているのだと再確認した。


 そのとき、シェイドの視線がふと、セリスの隣に座っているミスティに向けられた。


「ところで、あの無口な道化師、ミスティについてだが……どうしてあのような凶悪な魔法攻撃を身につけたのか、実に興味深いね」


 セリスはミスティの方に目をやり、彼女の無言の姿を見て微笑んだ。


「それが私にもよくわからないのです。ミスティはほとんど喋りませんし、過去のことも何も話してくれません。ただ、彼女には驚くべき才能がありますわ」


 シェイドはその言葉に深く頷き、再び興味深そうにミスティを見つめた。


「確かに、彼女のような存在は稀だ。無口な道化師があんなにも強力な魔法攻撃を使うとは、実に興味深い」


 ミスティはシェイドの視線を感じても特に反応せず、ただ静かに窓の外を見つめていた。その無言の態度が、ますます彼女を謎めいた存在にしていた。


「いずれにせよ、これからの冒険が楽しみですわね」


 セリスの言葉に、シェイドは微笑んで答えた。


「期待しているよ、セリス。俺を楽しませてくれ」


 ——その頃、王国の会議室にて。


 大臣たちの会議室には重い空気が漂っていた。


 長机の周りに集まった大臣たちは、疲れた表情で互いに顔を見合わせていた。部屋の中央にはマルコスが立ち、最近の報告をまとめて話し始めた。


「皆さん、ご存知の通り、騎士団は優秀な冒険者たちを正式に迎え入れるための動きを進めています。これにより、戦力の強化が期待されますが……」


 大臣の一人が口を挟んだ。


「それは良いとして、問題は魔物の攻撃が日増しに激しくなっていることだ。我々がこの対策を取る間にも、国民は危険に晒され続けている」


 別の大臣も同調する。


「その通りです。冒険者たちを召し抱えることは戦力増強にはなりますが、根本的な解決にはならない。魔物の増加を止める手立てが必要です」


 マルコスは深く頷き、続けた。


「確かに、魔物の攻撃は日々激化しており、このままでは我々の防衛線も持ちこたえられなくなるかもしれません。何かしらの根本的な対策が求められています」


 会議室は静まり返り、大臣たちはそれぞれに考えを巡らせた。しばらくの沈黙の後、一人の大臣が重い口を開いた。


「魔物の出現は何かしらの意図があるのではないか?これまでの情報から、単なる偶発的なものとは思えない」


 マルコスはその意見に耳を傾けながら、資料を手に取り、説明を続けた。


「実は、最近の調査で一部の魔物が特定の指示を受けている形跡があるとの報告があります。つまり、魔物を操る存在がいる可能性が高い」


 その言葉に、会議室の緊張がさらに高まった。大臣たちは顔を見合わせ、深刻な表情を浮かべた。


「その操る存在が誰であるか、そしてその目的が何であるかを突き止める必要があります」


 マルコスは強い口調で言い放ち、会議室の緊張を引き締めた。


「我々には時間がない。迅速に行動し、国民を守るための対策を講じなければならない。皆さん、協力をお願いします」


 会議室に再び静けさが戻った。マルコスが報告を終えると、一人の大臣が重々しく口を開いた。


「冒険者ギルドについても考慮すべき点があります。我々は彼らの力を借りているが、ギルドそのものは政治や王国の事にはあまり関与しないというスタンスだが……」


 別の大臣が同調する。


「その通りです。このままではギルドとの協力が不安定であり、戦力の一部として信頼しきれない。ギルドが突然方針を変えれば、我々の防衛計画も狂ってしまいます」


 マルコスはその指摘に対して深く頷き、議題を整理するために手元の資料を見直した。


「確かに、冒険者ギルドは独立した存在として活動しています。彼らの協力を得るためには、何かしらの協定や協力関係を築く必要があります。しかし、それが現実的に可能かどうかは慎重に検討しなければなりません」


 さらに別の大臣が意見を述べた。


「ギルドを説得するためには、何かしらのインセンティブが必要でしょう。例えば、彼らが求める資源や情報の提供など、我々にとっても有益な条件を提示することで協力を得る手立てが考えられます」


 会議室の雰囲気は再び緊張に包まれた。各大臣はそれぞれの立場から意見を出し合い、議論は白熱していった。最終的に、マルコスが重々しく結論を下した。


「まずは冒険者ギルドとの対話を試みましょう。彼らの立場や要望を理解し、それに応じた協力関係を築くための方法を探る必要があります。そのためには、ギルドのリーダーと直接交渉する役割を設けるべきです」


 大臣たちは一斉に頷き、具体的な行動計画が次々と立てられていった。ギルドとの協力が確立されれば、国の防衛体制は一層強固なものになるだろう。しかし、それは容易な道ではなかった。


 会議が進む中、マルコスは一同の注目を集めて口を開いた。


「我々は、冒険者ギルドとの協力関係をより確実なものにするため、何らかの形で彼らにも協力を要請できる仕組みを作る必要があります」


 別の大臣が続けて発言した。


「具体的には、ギルドに対して一定の支援や特典を提供することで、彼らの協力を確実にするのです。例えば、任務の優先度を上げたり、報酬を増やしたりすることで、冒険者たちが積極的に王国のために動いてくれるようにするのです」


「また、ギルド自体との契約を結ぶことで、正式な協力関係を確立することも考えられます。これにより、ギルドも我々との協力に対して正式な立場を持ち、より強固な関係を築くことができるでしょう」


 会議室の中で各大臣が次々と意見を述べ、具体的な施策が議論されていった。


「ギルドへの支援として、彼らの活動に必要な物資や情報の提供を検討するべきです。また、ギルド内での地位や評価を上げるような仕組みも考えられます。彼らが王国のために戦うことが名誉となるような環境を整えるのです」


「そして、ギルドのリーダーたちと定期的に会合を開き、意見交換や情報共有を行う場を設けることも重要です。これにより、ギルドと王国の関係がより密接なものとなり、相互の信頼関係を築くことができます」


 マルコスは一同の意見をまとめ、結論を下した。


「では、ギルドとの協力関係を強化するための具体的な計画を立てることとします。各自が担当する分野で詳細な施策を検討し、次回の会議で報告するように」


大臣たちは頷き、それぞれの役割を再確認した。王国を守るための戦いは続いているが、ギルドとの協力を強化することで、さらなる力を得ることができるだろう。


会議が終了し、大臣たちはそれぞれの責任を果たすべく行動を開始した。冒険者ギルドとの協力関係が強化されれば、王国の防衛は一層確固たるものとなるはずだ。

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