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遠征

 秘密通路の工事は、ついに最終段階に入った。地下の通路はギルドからダンジョン方面にしっかりと伸び、もう少しで完了するところまで来ていた。


 セリスは現場で作業員たちの動きを見守りながら、工事の進捗状況を確認していた。


「皆さん、お疲れ様です。あと少しで工事も完了ですわ。内装工事を始める前に、通路の最終確認を行いましょう」


 作業員たちは頷き、通路全体を点検し始めた。壁の強度や床の平坦さ、通路の幅など、細かい点を一つ一つチェックしていく。


「セリスさん、全体的に問題はありません。ただ、内装工事の際に少し手直しが必要な箇所があります」


 現場監督が報告すると、セリスはメモを取りながら頷いた。


「わかりましたわ。内装工事の前に、その点を修正しておいてください」


 現場監督は再び作業員たちに指示を出し、必要な修正作業を進めた。


 通路の奥に進むと、突き当たりの部屋が広がっていた。この部屋は、秘密通路の終点となる場所であり、今後の計画にとって重要な役割を果たす。


「この部屋も、しっかりと仕上げなければなりませんわね」


 セリスは部屋の中央に立ち、周囲を見渡しながら考え込んだ。エリシアが何を考えているのか、セリスにはまだ完全には理解できていなかったが、彼女の計画に協力する覚悟は決まっていた。


 通路全体の点検が終わると、セリスは作業員たちに次の指示を出した。


「それでは、内装工事を開始しましょう。」


 作業員たちは一斉に動き始め、内装工事の準備を進めた。壁には装飾が施され、床には滑り止めの敷物が敷かれ、通路はますます完成に近づいていく。


 作業後、ギルドに戻ったセリスをエリシアが呼び出した。

 

 ギルドの会議室で、エリシアはミスティとセリスと密談している。部屋の中は薄暗く、外の喧騒から隔絶された静けさが漂っていた。


「ありがとう、二人とも。忙しい中集まってくれて助かりますわ」


 エリシアは優雅に微笑みながら、二人に座るよう促した。


「本日は非常に重要な話がありますの。実は、王国から冒険者ギルドに協力要請がかかりました。」


 エリシアは深いため息をつき、二人に向かって口を開いた。


「まったく、あの町議会の連中は本当に面倒ですわ。王国に恩を売りたいだなんて、私たちの事情も考えずに…」


 セリスはエリシアの言葉に耳を傾け、真剣な表情で頷いた。ミスティも無言で頷き、エリシアの次の言葉を待った。


「協力要請に応じなければ、町議会と我々の関係が悪化する可能性がありますわ。ですから、信頼できる冒険者を送り出す必要があります」


 エリシアは少し間を置いて、二人に視線を向けた。


「そこで、私が信頼できると思う冒険者はあなたたち二人です。王国に向かってもらいたいのは、セリスとミスティ、あなたたちですわ」


 その言葉に、セリスの目が輝いた。


「私たちが、王国に?」


 エリシアは頷き、続けた。


「そうですわ。王国にいる間、宿場町の事情を外部に漏らさないように、そして必要な情報を収集することがあなたたちの任務ですわ。特に、ダンジョンやエンチャント武器のことについては決して口外しないように」


 ミスティは黙って頷き、セリスも真剣な表情でエリシアを見つめた。


「わかりましたわ、エリシア。私たち、必ずやり遂げますわ」


 エリシアは満足げに微笑み、さらに指示を続けた。


「そして、王国で得た情報は必ず私たちに報告すること。王国の動向や、我々にとって重要な情報を逃さないように。これは非常に大事な任務ですわ」


 セリスは再び頷き、決意を新たにした。


 二人はエリシアの言葉に従い、早速準備を始めた。エリシアの信頼を裏切らないために、彼女たちは全力で任務に挑むことを誓った。


 エリシアは少し考え込んだ後、二人に追加の指示を出した。


「明日、議会でこの件について話し合うことになっています。それまで待機していてください。必要な準備を整えておいて、すぐに動けるようにしておくのです」


 セリスとミスティは頷き、それぞれの準備に取り掛かった。エリシアは彼女たちの背中を見送りながら、明日の議会でどのように議論が進むかを思案していた。


 次にエリシアとガレンはギルドの奥の部屋で密談を行っていた。

 エリシアはテーブルの上に広げられた地図を指しながら話し始めた。


「ガレン、ミスティとセリスを王国に派遣する件についてですけれど、派遣期間をどのくらいに設定するかを決めなければなりませんわ」


 ガレンは地図を見つめながら、眉をひそめた。


「確かに、派遣期間は重要だな。あの二人は我々にとっては欠かせないパートナだぞ」


 エリシアは頷いた。


「そうですわ。あまり長く派遣するのは避けたいと思っていますの。必要以上に協力するべきではありませんわ」


 ガレンは少し考え込みながら言った。


「それなら、最初の派遣期間は二週間に設定し、その後の状況次第で延長するかどうかを判断するのが良いかもしれんな」


 エリシアは微笑んだ。


「二週間なら妥当ですわ。しかし、町議会に対しては慎重に報告しなければなりませんわね」


 ガレンは同意し、続けた。


「そうだな。派遣の理由や目的をしっかりと説明し、町議会の理解を得るようにしよう」


 エリシアは満足げに頷いた。


「もちろんですわ」


 ガレンは再び地図を見つめ、もう一度確認するように言った。


「派遣期間は二週間。町議会にはその期間で報告し、延長が必要なら再度相談するとしよう」


 エリシアは頷き、詳細な計画について話し合いを続けた。


「まず、ミスティとセリスには、王国での情報収集に加えて、宿場町の事情を外部に漏らさないように指示します。それから、必要な物資の調達や連絡手段の確保も重要ですわ」


 ガレンは同意し、メモを取りながら計画を整理していった。


「ありがとう、ガレン。これで準備は整いましたわ。明日の議会でしっかりと報告し、町議会の支持を得るようにします」


 ガレンは頷き、二人は密談を終えた。エリシアは部屋を出ると、すぐにミスティとセリスに詳細な指示を伝えるために動き出した。


 町議会の会議室には、エリシアとガレンが出席していた。議員たちは険しい表情で座り、エリシアの提案について討議していた。


「ガレンさん、ミスティとセリスの派遣期間を二週間にするというのは、いささか短すぎるのではないですか?」


 一人の議員が指摘した。

 エリシアは冷静な表情で答えた。


「二人はギルドの主戦力ですわ。二週間でも譲歩したつもりですわよ」


 別の議員が手を挙げて口を開いた。


「しかし、王国からの書面では、一ヶ月以上の協力を求められていると記されています。二週間では王国の要請に応えられないのではないでしょうか?」


 エリシアは一瞬言葉に詰まったが、すぐに冷静を取り戻した。


「確かに、王国からの要請は一ヶ月以上ですが、二週間で十分な戦果を挙げれば、派遣期間を延長する必要もなくなりますわ。それに、我々も限られたリソースを有効に活用しなければなりません」


 ガレンがエリシアを補足するように言った。


「我々の町も復興の真っ最中であり、人手が不足しています。無駄に長い期間を設定するのは避けるべきです」


 しかし、議員たちは納得しなかった。


「それでは王国に対して不誠実です。私たちは王国と良好な関係を保ちたいのですから、最低でも一ヶ月は派遣するようにしてください」


 エリシアは深いため息をつき、議員たちの視線を受け止めた。


「わかりましたわ。では、派遣期間を一ヶ月に延長することにいたします……」


 さらに、別の議員が手を挙げた。


「それにしても、派遣する冒険者がたった二人というのは少なすぎませんか?王国の要請に応えるにはもっと大勢の冒険者を派遣すべきではないでしょうか?」


 エリシアは毅然とした態度で答えた。


「ミスティとセリスは、先日のモンスターの氾濫事件で最初から最後まで戦い続けた凄腕の冒険者ですわ。正直な話、この二人は行かせたくなかったのですわ。一時的にとはいえ、遠くに行かせる我々の覚悟も汲んでいただきたいですわね」


 議員たちは一瞬驚いた表情を見せたが、エリシアの説明に納得するように頷いた。


「確かに、あの事件での活躍は見事でした。それならば、彼女たち二人に期待しましょう」


 エリシアとガレンは議員たちの承認を得て、会議を終えた。部屋を出ると、ガレンが小声で言った。


「やはり、一ヶ月は避けられなかったな」


 町議会の会議が終わった後、エリシアとガレンはギルドから少し離れた酒場に足を運んでいた。


 夜の帳が下り、酒場の中は賑わいを見せていた。

 彼らはカウンターの一角に座り、グラスを手に取った。


「ガレン、まったくあの連中ときたら…」


 エリシアは不満げにグラスを揺らし、深いため息をついた。


「一ヶ月ですって?本当に面倒ですわね」


 ガレンも同じようにグラスを手に取り、ため息をついた。


「まったくだ。あの議員たちがあそこまで固執するとは思わなかった」


 エリシアは一口飲み、続けた。


「まぁ、町議会との関係を保つためには仕方ないですけれど、これで我々の計画が少し遅れるかもしれませんわね」


 ガレンも一口飲み、頷いた。


「それにしても、あの議員たちにはうんざりだ。君も相当我慢していたな」


 エリシアは苦笑しながらグラスを置いた。


「我慢するのも仕事のうちですわ。でも、今日はさすがに飲まないとやってられませんわね」


 二人はしばし黙って酒を飲み、酒場の喧騒に耳を傾けた。エリシアは再び口を開いた。


「ミスティとセリスには申し訳ないけれど、彼女たちには頑張ってもらわないといけませんわね」


 ガレンも頷き、グラスを掲げた。


「そうだな。二人には重要な任務だ。きっと上手くやってくれるだろう」


 エリシアはガレンとグラスを合わせ、微笑んだ。


 翌朝、ギルドの奥まった部屋にエリシア、ミスティ、セリスの三人が集まっていた。


 エリシアはテーブルの上に置かれた袋を手に取り、二人の前に差し出した。


「ミスティ、セリス。昨日の議会で派遣期間が一ヶ月に延びることになりましたの。本当に申し訳ないわ」


 エリシアは軽く頭を下げた。

 セリスは驚いた顔でエリシアを見た。


「一ヶ月ですって?ちょっと長いですわね」


 エリシアは微笑みながら袋を開け、中から金貨を取り出してテーブルに並べた。


「その分、しっかりと準備していただきますわ。これは一ヶ月分の生活費と遊ぶ金です。まぁ、お小遣い程度ですけど、自由に使ってくださいませ」


 ミスティもセリスも札束を見て満足そうに頷いた。


「これなら何とかやり過ごせますわね。ありがとうございます、エリシア」


 エリシアは満足げに頷いた。


「王国への派遣は大変かもしれませんが、あなたたちならきっとやり遂げられると信じていますわ。何かあればいつでも連絡をしてください」


 ミスティは黙って頷き、セリスは金貨を袋に戻しながら言った。


「了解ですわ。一ヶ月間、しっかりと情報収集をしてきます。エリシアもこちらのことはお任せください」


 エリシアはミスティとセリスに生活費と遊ぶ金を渡した後、部屋の奥から一振りの剣を取り出した。


 その剣は美しい氷の結晶のような輝きを放っていた。


「セリス、これを持って行ってください」


 エリシアはその剣をセリスに手渡した。


「これは……例のアイスソードですわね!?」


 セリスは驚きながら剣を受け取った。

 剣の刃は冷たく光り、手に持った瞬間に冷気が感じられた。


「そうですわ。このアイスソードがあれば、あなたには敵なしですわ。やはりこれはあなたが持っておくべきですわよ」


 エリシアは微笑んだ。


 セリスは剣をしっかりと握りしめ、感謝の気持ちを込めてエリシアを見た。


「ありがとうございます、エリシア。この剣で必ず任務を成功させますわ」


 エリシアは頷き、セリスに向かって言った。


「私たちもこちらでしっかりとサポートします。気をつけて行ってきてください」


 セリスは剣を鞘に収め、エリシアに一礼した。


「了解ですわ。ミスティと一緒に、必ずやり遂げますわ」


 ミスティも無言で頷き、二人はエリシアに一礼して部屋を出ていった。エリシアは彼女たちの背中を見送りながら、成功を祈った。

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