56.星明り
フィリアは王宮のテラスでジウスと向き直っていた。よく働いたあとは、月が明るい夜が疲れを癒やしてくれる。
「……お疲れ様」
ジウスはふたり分の赤ワインのグラスを持ってきている。今日はよく晴れており、目を向ければどこにでも星がきらめていた。
「ふぅ、ありがとうございます……」
フィリアがすっとグラスを手に取る。赤褐色の液体に月明かりが少しだけ映り込んでいた。
「正直に言うとギラス王子は中々の御方で、真意が読めませんでしたが……これで良かったのですか?」
「ああ、多分ね。手応えとしては、そうだ。もっとも大公陣営の顔も潰してはいなかったが」
「はぁ……難しいものですね、政治の世界というのは」
フィリアはその辺りが本当に疎い。頭を回転させればついていけるが、本能的に向いていないのだ。
「でも喜んでもらえて、米もレシピも普及となれば私もやった甲斐があるというものです」
「もちろん、我が国にも大いに意義があることだ」
フィリアがグラスを揺らし、ワインを口に含む。芳醇な香りとまろやかな味わい。ひと仕事終えたあとのワインは格別だ。
「……ふぅ」
「もう宴は終わったんだ。屋敷まで送ろうか?」
「いえ……」
フィリアは婚約者であるジウスの横顔を見た。鋭い目つきで、人を寄せつけない氷のごとき美貌と芯がある。
でもフィリアにとっては優しく、思い通りにさせてくれる先生だ。
「先生……」
「うん?」
「私、今とても充実してます」
「ふふっ、私もだ」
恋とか愛とかはまだよくわからない。それでも、多分いいのかもしれないが。
こうして横に並んでグラスを傾けられるだけでも、フィリアは幸せだった。
「よかった……」
フィリアはジウスに軽く寄りかかる。ジウスの手が、そっとフィリアの肩を抱いた。
……温かい。
そう思いながら、フィリアはしばらくジウスと他愛ない話をしたのであった。
完結いたしました!
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
おもしろい、と思って下さった方は、
ぜひともブックマークや↓の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価をよろしくお願いいたします!
また、12月9日に原作を担当しましたもふもふほのぼのファンタジー漫画の5巻が発売されます!
詳細は↓のサムネイルのクリック先にございます!
そちらもよろしければ、ぜひともお願いいたします!







