55.飴よりも鞭
ギラスを迎える宴は大盛況のうちに終わった。今、ギラス一行はウィード王国の国王と内々の晩餐会を楽しんでいる。
その場には王族のみが招かれ、スレイン大公やジウスさえも参加はできない。
王宮の一室で、モードはうなだれていた。引き分けとはいえ、実質的に勝利したのはフィリアの陣営であろう。
フィリアのレシピでジウスはよりギラスに近づく。題目的な引き分けに意味はない。この勝負から、どう関係が変わるのかが問題なのだから。
「申し訳ありません……」
「…………」
スレイン大公は厳しい目つきでモードを見据えていた。今回の料理と計画を立案したのはモードなのだから。
「期待外れだったな」
「はっ……」
畏れるモードをスレイン大公は静かに叱責した。だが、意識は別のところにあった。
婚約破棄の騒動を経て追い詰められてからというもの、モードの思考と行動は冴え渡っている。
今回も結果を見れば失敗だ。しかし表面上、負けはしなかった。
(……私は息子に甘すぎたのかもしれんな)
皮肉にも今のほうが息子の才覚がよく見えた。型にハマりすぎ策に溺れる。だが、結果として最高級のなれずしをきちんと持ち込むことはできたのだ。
(飴よりも鞭、か。追い詰められたネズミは猫をも噛むというが)
スレイン大公は目を細める。モードはこれからも大いに苦労するだろう。だが、無駄にはならぬ。
モードは棘の道を歩むだろう。しかしそれが彼のためでもあるのだから。
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