43.試食と順番
フィリアはゆっくりとホタテの寿司を手に取った。
ずっしりとしたホタテの重さが伝わってくる。
「はむ……っ!」
フィリアは一気にホタテの寿司を頬張った。濃密な貝の旨味と肉厚の食感が口いっぱいに広がる。さらに噛むほどに醤油と酢飯の味も複雑に絡む。
ジウスもホタテの寿司を頬張って――何度も頷いた。
「うん、美味しい。肉厚なホタテがマグロとはまた違うね」
「食感に歯ごたえがありますね。これは……」
ホタテとマグロを比べると、まだホタテは脂が少ない。旨味こそあるがさっぱりしている。
「マグロの前にホタテのほうがいいかもしれません。マグロのあとだと、ホタテはあっさりしすぎているかもです」
「そうだね。ホタテ、マグロという順番で食べてもらうのがいい」
今回のテーマに食べる順番などは明記されていない。しかしコントロールできるなら、食べる順番は決めておくべきだろう。
「考え方はコース料理と同じでいいはずですよね……。だとすると、やはりその順番が良いでしょうか」
そしてフィリアはもうひとつの新しい、サーモンの寿司を手に取った。
「心持ちネタは薄くしたのですが……どうでしょう?」
「こちらはかなり脂があるからね。いいと思うよ」
サーモンは比較的王都でも見かける食材である。安価とは言えないが、そもそもの漁獲高が多い。重量比ではマグロのほうが、サーモンより十倍以上高価である。
普及には生食の鮮度が問題になるが、この勝負であれば懸念はない。財力でどうにかできるからだ。
「では、こちらも……!」
「頂こう」
ふたり揃ってサーモンの寿司を口に入れる。まず舌で感じたのは、ねっとりとした脂身だ。
牛肉の脂にも似ているが、しっかりとした海の味わいは比較にならない。
もにゅもにゅ……。
「おいしいはおいしいですが、味の濃さは少し気になりますね」
「私はさほど気にならないかな。ホタテの淡白さは良いアクセントになるはずだ」
「ネタの厚さ、脂の量を細かく見れば大丈夫でしょうか?」
「それで問題ないと思うよ」
「ふむふむ……」
そこまで話して、私はすすっとリビングの一角に視線を移した。そこには木製の箱が置いてある。
「……アレも試してみますか」
「ふふっ、いいね」
ふたりで木製の箱をテーブルに載せ、そっと開ける。中には様々なワインの小さなボトルが入っていた。
「やはりワインは外せません。しかしどのようなワインがいいのかは、試してみないと……!」
「国内の有名なのを色々と揃えたからね。まぁ、まだ手元に来てないのもあるが……」
フィリアはコルク抜きを持ちながら、意気込む。
「構いません。今日は飲んで食べて、どのようなワインがいいか調べましょう……!」
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