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第十三話 邂逅


 まずい、まずいまずいヤバいまずい。 


 かつて共に暮らした兄が、奇声を上げながら切っ先を向けて突っ込んでくる。


 馬車を飛び出てからここに辿り着くまで、まだ1分もしていない。

 それほどの者の剣を止められるとは思えないし、止めたところで次があるとは思えない。


 でもやるしかない。覚悟を決め、両手を前に出す。


「出てこいスポンジ!」


 その言葉に呼応し、ごわごわごわごわ、と俺の目の前に大きなスポンジの盾が現れた。


「おおうおおお!! なんだぁこれ!?」


 兄貴は勢いを殺せず、そのままスポンジに突っ込んでいった。


 その隙に逃げる。階段を使っていれば確実に追いつかれるので、このやぐらを……


「飛び降りらぁ!」


 タン、と地面を蹴って、空へと身を放り出す。


 本来なら確実に命をもっていかれる高さだが、秘策がある。


 地面が近づいてくる。

 あと十メートル。あと五メートル。


 そしてあと一メートル、というときに、俺は左手にスッポンを出し、壁に吸い付けた。


 ガクン、という衝撃を最後に、落下が終わる。


「よし、危なかった」


 上空一メートルからの着地を綺麗に決め、また走り出す。同時に三号との通信を始めた。


「三号、こっちに援軍を送れるまでどれくらいかかる?」


『ご主人様、無事でしたか! 援軍は…そうですね、今から私が敵陣に乗り込めば、五分くらいでアイリスさんが向かえるような状況になると思います』


「分かった。五分間逃げ続ければいいんだな?」


 俺がそう答えた瞬間、背後でまた奇声が聞こえた。


「うおああああああ!!待てフローデえぇあえええ!」


 兄貴がやぐらから大きく跳ぶ。奴はそのまま着地するつもりらしい。


 しかし一歩が大きい。一気に数メートル分距離を詰められかねない。


 そのまま着地されると、次の瞬間には目の前にいそうだった。


 固形石鹸を出し、狙いを定め、その時を待つ。


 足が地面に達するその瞬間。


「今だ、おらっ!」


 低空を飛ぶフリスビーのように石鹸を投げると、それはちょうど、奴の足と地面の間に挟まった。


「うおっと!?」


 すってん、と兄貴が前のめりに転ぶ。その隙を逃さない。


「いけプロッペ! クエン酸攻撃!」


 プロッペ三体を送り込み、あらゆる角度から酸を放射する。


「うわっやめろ目が! あっ酸っぱ!」


 そして逃げる。逃げて逃げて逃げ続ける。


 アイリスが、三号が、俺を助けに来るその時まで。


────────────────────


『即席特攻隊、突撃開始!』


 その時三号は、敵陣に乗り込む一歩目を踏み出していた。


 王のいる馬車を取り囲むように、一千弱の兵達がいる。


 ダン、と地面を蹴り飛ばし、素早く馬車へ向かう。


 それにつられ、兵士たちは王を護るべく、三号に近づいていく。


『今です!』


 瞬間、大型魔物の腕が薙ぎ払われた。

 兵士たちが次々と巻き込まれ、5分の1程が戦闘不能になる。


 続けて領民たちが、ここぞとばかりになだれ込み、残りの兵士たちを押さえ込む。


「お! いいね! あたしいなくてもなんとかできそうじゃん! じゃ、ご主人のとこ行ってくる!」


 アイリスはそう言って、その場を立ち去った。


『勝利は目の前です! 何としてでも押さえ込んでください!』


 フラヴィの空に、三号の声が響き渡る。







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