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第三者のやるべきこと

「どうしてなの」

「…………」

「ねえ、ちゃんと答えなよ。あんなことを言えばチコが怒ることくらい分かって言ったよね?」


ああ、私、イライラしてる。どうして何も答えてくれないの?

どうして何も喋ろうとせず、悲しそうに俯いて、服を力強く握っているの。

どうして、チコをそのままにするの。


「……いつもは、笑って流してくれていたから、つい、調子に乗って。ああ言えば、仕方ないって言って見逃してくれると思ったから。本気で怒っていたのは分かっていたけど、でもやっぱり、いつものチコの方が上で……」


ガーラの言いたいことは分からないでもない。だけど


「だけど、それは言い訳だよ」

「分かってる。分かってるけど、どうすればいいのか分からないんだよ。本気で人を怒らせたことなんてなかったから」


ずっと下を向いたままのガーラの目の前に宿題をおく。


「まずは宿題やろう。それで、テスト勉強しよう。私も手伝うから。ペアを解消されたら元も子もないでしょう」

「……うん、分かった。本当にごめん」


ガーラは機械のように感情を薄めて宿題に取り組む。


 ある程度進んだところで外を見ると、既に暗くなっていた。


「ごめんガーラ、今日はもう帰るね」

「うん、ありがとう。ボクだけでも進められるところは進めておくよ」

「うん。今度良い参考書とかあったら貸すね。それじゃあね」

「うん、気をつけて」


あんなに元気のないガーラはあまり見たことがない。

たぶん、一度私と仲良くなる前にあんな顔をしていた気がする。

第三者の私でもダメージはあった。そう考えると、ガーラのダメージは相当なものだろうけど、可哀想だなんて思ってはダメだ。


「はぁ……」

「リア、またため息が出ているよ」

「あ、申し訳ありませんお兄様」

「あの二人のことは仕方ないよ」

「ですが、私が行かなければ二人は今も仲良くできていたのかもしれないと思いますと……」

「本当にそう思うかい?」


お兄様は真面目な顔で私を見つめる。


「たしかにリアの言う通り、僕たちがアウダー家にお邪魔しなければ今は仲が良いかもしれない。だけど、それはチコ様が我慢をしている状態でもある。チコ様に何をしているのかと聞いて口籠もったということは、それなりの理由があるわけだ。

チコ様がしっかりと答えを残してくれたではないか、"人に言われてからじゃ意味がない"と。

きっと、僕たちがいなくてもいずれどこかで気持ちは溢れてしまう。もしかしたら今日よりも酷い状態かもしれない。過去ではなく、今を、未来を見なさい」

「私にできることってなんでしょうか?」

「二人を離さないこと、二人の時間を作ることだ。今は冷却期間ということで、離れていてもいい。むしろ離しておきなさい。

学園では休み前と同じようにみんなで行動しなさい。

チコ様は怒ってはいるけど、嫌ってはいない。あとは、本人達の問題だ。あまり第三者が介入するのは良くないことだからね」

「分かりました」


お兄様は私の顔に手を添えて口角を上げた。


「笑顔。じゃないと、お父様やお母様、それにジェリーに心配をかけるよ」

「そうですね」


作り笑いなんていつぶりだろう。上手く笑えているかな。


「ただいま!」

次話 2月26日


展開早いですが、夏休み編もうすぐ終わりです。

(ぶっちゃけメインは新章なので)

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