やはりここは協力です!
今日は朝から来客がいる。
「そう、そんなことがあったのね」
「はい……」
アイリーン様は明後日の方を向く。
「チコも怒ることがあるのね」
「私も少々驚きました」
「ガーラさんが早く謝ってしまえばいいと思うのだけれど」
「謝るだけだとたぶん、余計チコを怒らせるだけですよ。チコはああ見えて、一番の寂しがり屋で、人一倍絆を大事にする人ですから、気づいてほしいんですよ」
「そうね、私の考えが浅はかだったわ」
アイリーン様は紅茶を一口飲む。
「マードリアは人を怒らせたり、喧嘩したことはあるの?」
「アイリーン様にはしょっちゅう怒られています。ただ、喧嘩はしたことないです」
前世ならお姉ちゃんと何度かした事あるけど。流石に言えない。
「あなたはちょっと目を離すと何かしら問題を抱えるのだから、怒らずにもいられないわ。でも、喧嘩をしたことないっていうのはマードリアらしいわね」
最近は怒らせてないし、問題も抱えてないよ! っと、言いたいところだけど、それは心の中にしまっておく。
「アイリーン様こそないのですか?」
「そうね、特にないわね。我が家は距離感を保って接しているから、兄弟間の喧嘩とかも無いわね。怒ることはあるけれど」
たしかに、ミーク家はどちらかというと放任主義な気がする。
そもそも、子どもたちが優秀なんだからそうなるよね。
「怒る時ってどんな感じですか?」
「そう言われても……。心配だからよ、相手のことが。だから、もうしてほしくなくて怒るの」
「そうなんですか、ありがとうございます!」
「その返しは違うと思うわよ。気をつけますくらいは言いなさい」
「あ、そうですね、気をつけます」
アイリーン様は私を見て微笑んだ。
「あなたはこんな時でも笑顔なのね」
「こんな時だからこそ、笑顔でいないといけないのです。みんなが深刻な表情をしてしまえば、進むものも進みません」
「そうかもしれないわね。呪いの時も、あなたはリリーさんの前ではずっと笑顔だったものね」
「一番不安で怖いのは当人ですから。私たちまで暗い顔をしていては、その負の気持ちをより大きくするだけで何も良いことはありません」
アイリーン様は椅子ごと私の隣に移動させると、頭を撫でた。
「どうしましたか?」
「どうしたのかしらね。なんとなく、こうしたいと思ったのよ。最近は撫でられるのも減ったものね」
「たぶん、レンちゃんを撫でているからですね。アイリーン様も撫でられるのが減って、実は寂しかったりしますか?」
からかいのつもりだったのに、アイリーン様はさらに目を細めて、口角を上げた。
「そうかもしれないわね」
可愛いと、気づくと私の手はアイリーン様の頭に伸びていた。
「変な状況ね」
「ですね。──リリー達にも会いに行きましょう。みんなで協力しましょう」
「そうしましょう。それに、リリーさんの近くにはよく喧嘩してそうな人がいるものね」
「たしかにそうですね。それでは善は急げです! 私、馬車の用意をお願いしてきます」
ドアを閉めて前を向くと、丁度追加のお菓子を持ってきたジェリーと鉢合わせた。
なので、馬車のことはジェリーに頼んでおいた。
再び部屋の中に入ると、アイリーン様はじっと手を眺めていた。
しかし、私が戻ったことに気づくと、すぐに目を離した。
「どうかされました?」
「いえ、何でもないわ」
「そうですか」
手を眺める理由ってなんだろう?
次話 本日中




