絶対にバッドエンドになんてさせません!
ガーラは一度深呼吸をする。そして、私の目をしっかりと見る。
「あのさ、このゲームに死エンドがあるっていったら信じる?」
正常な頭をしている私なら、この状況を見て信じると言っただろう。
だけど、今の私に出来ることは頭を横に振るだけだった。
「信じたくないよね。分かるよ。ボクもまさか、このエンドが含まれるなんて思わなかった」
「私は、知らない。このゲームにそんなルート存在していなかった」
「たしかに公式には存在してないルート。だけど、同人ゲームには存在しているの」
「同人?」
なんで同人ゲームがここで入ってくるの?
「その同人ゲームは、制作スタッフの一人が主体となって作った物。内容は原作のその後。つまり、二年生から始まる」
最初にキャラを決める。公式だと攻略対象だったキャラを今回は動かす。
始まりはキスから始まる。
そして、程なくしてヒロインが呪いに侵される。
最初の頃はなんの変化もなかったけれど、時が経つにつれて酷くなり、遂にヒロインは倒れてしまう。
そこからゲームが始まる。
ヒロインの呪いの進行を止めなければ死。だけど、呪いの進行を止めたところでヒロインは精神をやられてしまい、廃人となる。
そんなバッドエンドしかない同人ゲーム。
「何それ、意味わかんない。それよりもなんで同人ゲームなのにストーリーに加わってるの!」
「これはボクの憶測でしかないけど、公式が容認しているゲームだからだと思う」
「は?」
「その同人ゲーム、やたらと人気があったんだよ。よくできてたから。それで原作とセットで買う人が増えて、運営もそのゲームをさりげなくプッシュした。だから半分、公式ゲームといってもいいんだよ」
そんなゲームのせいでリリーが……。
「でも、まだ結末を決めるのは早いよ」
「だけど、助かるルートがないんでしょう……」
ガーラは微笑んだ。私の肩に手を置いて。私を元気づけているみたいだ。
「ボク、前に言ったよね、ゲームのストーリーとこの世界は色々とずれてる、歯車が狂ってるって。
アイリーンは楽しそうに過ごしている。フーリンとコーリーだって友達がいる。チコだって、人見知りなのに友人がたくさんいる。
リリーだってゲームよりも笑顔が多い。
ゲームでは出てこないマードリア、ガーラ、レンだって、こうして主要キャラ達と楽しくやってる。
ストーリー通りじゃないけど、今のみんな生き生きしてて楽しそうじゃん。
実際、二年生でくるはずのイベントが今きている。
倒れてから知るはずの呪いを、今の時点で知っている。これだけで新たなルートを開拓するのに十分なことじゃない?」
たしかにそうだ。
もう学園生活が始まる前の時点で、私達は決められた道を違う道で歩んできた。
不幸になるはずのキャラも今は幸せだ。
なら、リリーも救えるはず。そうと決まれば、今回も救われないルートを、攻略しようではないか!
次話 本日中