最後の攻略対象登場です!
図書館に着くと、大勢の生徒が参考書を広げて必死に勉強をしていた。
「うへ〜、前世の図書室とは比べ物にならないよ。どう見ても体育館より広いし。だよね、マードリア。ボクこれでも天寿を全うしたからよく覚えてないんだよね」
ガーラは極限まで声を抑えて、そう私に共感を求めてくる。
ていうか天寿を全うしてこれって、ガーラどんだけ成長してないのやら……。人間、環境によっては変われるということを信じておこう。
「そうだね。それよりもリリーを探さないと」
しかし、口では簡単にいうものの、実際は本当に広いので結構大変そうだ。
「リリーは隅っこにいるかもね」
「どうして?」
「ドアとか本棚に近い席はほとんど貴族が独占してるじゃん」
あ、本当だ。平民の子で良い席に座っているのは、貴族と仲が良さそうな子だ。
「よく気づいたね」
「大半の貴族は親の権力振りかざして偉そうにしてくるからね。平民に転生すると嫌でもそういうのが目に入ってくるんだよ」
「貴族と平民じゃ見える世界が違うんだね」
「まあね。ボクは左側を探すから、マードリアは右側探して」
「はーい」
ガーラの言った通り、リリーはあまり目立たない場所で勉強していた。
手を止めさせるのは本当に申し訳ないが、ここはリリーしか頼れる人がいない。
リリーの肩を軽く叩くと、リリーの体がほんの少し跳ねる。
びっくりさせてしまったのは申し訳ない。
「マードリア様」
「やっほーリ──痛ッ‼︎」
ほんの少し挙げた右手に、手首が締め付けられる痛みがした。
赤髪に黒い瞳の男子生徒が、私の手を強く握っていた。
「ダミア! 何してるの!」
「リリーは黙ってろ。どうせこいつもお前に嫌がらせをしにきた貴族だ。しかもこいつは手を出してきた。俺は見てたぞ、お前がリリーの肩を叩いていたのを。いいか、俺は相手が貴族だろうがなんだろうが、リリーを傷つける奴は容赦しねえからな!」
ダミア、思い出した、リリーの幼なじみで唯一プレイヤーが操作する攻略対象。
「ダミア、離しなさい」
「リリーの頼みだろうが聞けねえな。リリーを傷つけるやつは俺が許さねえ」
「いいから離しなさい! マードリア様は違います!」
初めてリリーが怒鳴った。いや、怒りを露わにした。
ゲームですら見たことがなかった。
ダミアもリリーの怒っている姿を初めて見たのか驚いている。
ダミアの手が緩んだところで、リリーが手を離させた。
「マードリア様、申し訳ありません。医務室に行きましょう」
「いいよこれくらい。──皆様、お騒がせしてしまい申し訳ありません。彼は確かに私の手首を握りましたが、決して強く握っておりません。ですから、このことはくれぐれもご内密でお願いします」
どうせ釘を刺したところで、この出来事が出回ることは分かってる。だけど、大事なのは彼が物理的に危害を与えていないということだ。
貴族に危害を加えたとなると、彼がどうなるか分かったもんじゃない。特に、お兄様に知られると。
「ちょっとすみません。マードリア、これなんの騒ぎ?」
「ちょっと勘違いがあったみたい。さ、外に出よう。二人も来て」
「どうして俺がお前の言うことを聞かないといけないんだ」
「ダミア、マードリア様の言うことを聞きなさい」
「…………」
リリーが怒ると怖いということを、初めて知ってしまった。
次話 2月18日(もう一話書ければ今日中に投稿します)
やっときました幼なじみ!
そして、試験勉強今日中に終わらなかった。