負担が二倍は流石にきついです……
教室に着いて早々、紙が配られた。私は迷わず賛成の方に丸をつける。
先生が紙を回収すると、授業が始まった。
「よーし、全員席についてるな。今日は魔法の取り消し方を学ぶぞ。これがかなり大事な魔法ということは、もう全員承知の上だろう。しっかりと聞くように」
そりゃ前回というか昨日の授業であんなことが起きたんだからね、今日はその授業でしょう。
「案外取り消し方というのは簡単だ。だが、体に負担がかかることになるから気をつけろよ。まず手本を見せるから、しっかり見ておけ」
先生は詠唱し、水の玉を発生させる。
「いいか、この魔法をまた元に戻すときの詠唱を今から唱えるから、ちゃんと聞いておけよ。あとメモしとけ」
『我、願いし精霊よ、今一度そなたの力を収めたまえ』
水の玉はみるみるうちに消えていった。
「これが取り消しの詠唱だ。一度外に出した力を再び戻すことになるから、我々の体にも負担がかかる。だから、なるべく使わないようにな。と、言いたいところだが、やってみないといざという時使えないだろうし、一人ずつ私の前でやってみせろ。ほら、前のやつから順に来い」
これはまずいかもしれない。私に関しては魔法を発動させるにも体に負担がかかるのに、戻すにも負担がかかるとなると本当にまずいかもしれない。
「次、レン・ストル」
「は、はい」
まずい、これは本当にまずい。レンちゃんにどれほどのものか聞かないと。
私は早速、戻ってきたレンちゃんに状況を聞く。
「レンちゃん、どんな感じだった?」
「えっと、そうですね、心臓が一瞬ギュッと握られる感覚でしょうか」
「うへ〜、やだなボク。痛いのとか得意じゃないんだよ」
「それはここにいる全員そうだと思うよ」
発動させるのに負担がかからない人でもそんな苦しいことが起きるなら、私は一体どれほどのものがくるのだろう。きっと、戻す時も普通の人より負担が多くかかるだろうし。
「マードリア様、大丈夫ですか? 顔色があまり良くない気がするのですが」
リリー。そうだ、リリーだ!
「リリー、ちょっとちょっと」
「どうされましたか?」
「リリーって回復魔法を無詠唱で使える?」
「回復魔法ですか? あの本にありました簡単なものでしたら使えますよ」
それで十分! 魔法を戻した時に一気に痛みがくるけど、魔法を戻す気力がなくなるよりはマシ。
「それさ、私が魔法を発動させてる時だけ使ってくれない」
「え⁉︎ それっていいのですか?」
「発動させる時だけなら問題ないよ。戻す時は使わなくていいから」
リリーはほんの少しだけ考えて頷いた。
「分かりました。発動させている時だけですからね」
「ありがとうリリー」
私の名前が呼ばれて前に立つ。
リリーに一度、バレないように目配せをする。そして、体内にいる精霊にもお願いする。
『我に眠りし精霊よ、今その力を放ち、水の玉を発現させよ』
リリーの影のサポートのおかげで、今はそれほどの負担はかからなくて済んだけど、やっぱり少しは体が重くなる感覚はある。
「よし、戻せ」
私は一度深呼吸をして詠唱を唱える。
『我、願いし精霊よ、今一度そなたの力を収めたまえ』
魔法が元に戻ると、二日目の体にみぞおちを殴られるような衝撃が走った。
それに、発動時の頭痛と体の重みが一気に体の隅々を駆け巡ってきて、結構やばい状況だ。
冷や汗がでてきたが、ここで膝でもつけば立てなくなるのは目に見えている。だから、なんとか耐えた。
「マードリア、大丈夫? レンさんより酷い状態って感じよ」
「だ、大丈夫大丈夫。本当に大丈夫だから」
「あれだったら医務室連れて行くよ。あたしが」
「チコは受けたくないだけでしょ。連れて行くならレンだよ」
「マードリア様、行きますか?」
「ううん、本当に大丈夫だから」
正直今は歩くのすらきつい。
「……マードリア、そんなにきついなら横になりなよ、ボクが先生に言ってきてあげる。あの先生は厳しいけど鬼じゃないから。レンは膝枕でもしてあげて」
さすが、小学校からの付き合いでもある。
ガーラはさっさと先生の元に言って、事情を話しているみたいだ。OKマークをしてるってことは、了解をもらえたのだろう。
今回は本当にやばそうだから、ガーラの言葉に従うことにしよう。
「レンちゃんごめん、ちょっと失礼」
「は、はい」
細いのに柔らかくて寝心地がいいな〜。
ガーラが前世の私に膝枕をよく要求していた理由が少し分かった気がする。
「仕方ないわね」
アイリーン様は上着を脱いで私にかけてくれた。
ただ、お礼を口に出す元気はもうないので、心の中でひっそりとお礼を言っておいた。
2日目はあれですね、女性特有のあれです。
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