三人寄れば文殊の知恵です!
市の道を通ると、しっかりとした馬車は物珍しいのか、いろんな人の目線を集めてしまう。
私はその中で、馬車に目もくれず普通に買い物をしている少女を見つけ、急いで御者さんに止まるようにお願いした。
「いきなり止めるだなんてどうしたのよ。こんなところに馬車を止めては迷惑になるわよ」
「あ、そこまで考えていませんでした。私が降りたらゆっくり動いてもらいますのでご安心を」
「ちょっと!」
アイリーン様の制止を聞かずに私は降りる。
「すみません、ゆっくり動いてください」
馬車は人が歩く速度と同じくらいの速度で動き始める。
「マードリア様⁉︎ わざわざこちらにいらっしゃるなんてどうなさったのですか?」
後ろを振り返ったレンちゃんは驚いた表情で私を見る。
「久しぶりレンちゃん。遊びにきたって言えたらいいんだけど、そんな平和な話じゃないんだよね」
「何があったのですか?」
「馬車で話せるといいんだけど、この後用はある?」
「いえ、買い物は終わりましたのでもう帰るところです」
「それじゃあレンちゃんの家に着くまでに話すよ」
「いいのですか?」
「うん、遠慮しないで。乗ろう」
「ありがとうございます」
馬車に戻ると、アイリーン様は納得した表情を見せた。
事情を全て話すと、レンちゃんは難しい顔をした。
「──そういうことですか。申し訳ありませんが、私も喧嘩や怒ったことはありませんね」
「そうだよね」
レンちゃんが怒っているところとか、チコ以上に想像できないし。
「……申し上げにくいのですが、今回のチコ様とガーラちゃんの件は、私達が思っている以上に難しいものだと思います」
「たとえば?」
「たとえば……。そうですね、チコ様はマードリア様にもしばらく家に来ないでほしいとおっしゃったのですよね?」
「うん」
「ということは、私たちも避けているという事ではないでしょうか? たぶん、学園生活に戻ってもガーラちゃんだけでなく、私達も避けられてしまうと思います」
「たしかにそうね……」
全員頭を悩ませたところであまり良い案は浮かんでこない。
「カヌレ様ならどうなさればいいのか分かるのではないでしょうか?」
「「それ(だ)よ!」」
なぜこんなにも身近に、チコのことを誰よりもよく知る人がいることに気づかなかったのだろう。
チコとガーラ、二人まとめて考えていたからいけなかったんだ。
「ですがその前に、リリーさんには話しておくべきでしょう」
「マードリア様とアイリーン王女様がよろしければ、この後にでも行きませんか?」
「私は大丈夫。アイリーン様はよろしいでしょうか?」
「ええ、私もいいわよ。何かあればマードリアの家に泊まらせてもらうわ」
アイリーン様がうちに泊まる? 私は別にいいけど、空気が張りそう。
私は一人苦笑いをした。
次話 2月27日