8、星織りのドレス
花が咲き誇る。ぽかぽかと暖かい陽気に包まれる。気分もなんとなくそわそわする。
―――春が来た。
「…………。」
「リリ?」
「…………。」
「おーーいリリ?」
ルスがリリの方をポンとたたいた。びくっとリリが揺れる。
「!!ルス、」
「お前、緊張しすぎだろ!」
リリが緊張やらなにやらで顔が真っ青になっていた。
「だって、やっぱり、こわ」
「大丈夫、大丈夫。もう何回も外に出て大丈夫だっただろ?まあ、さすがに今日は人が多いけど…心配すんな!待っとくからな。」
「うーー、がんばる、」
今日は年に一度の春祭りの日だった。そしてあと少しでドレス品評会が始まろうとしていた。最初はモデルだけでそれぞれがつくったドレスを着てのファッションショー。そのあと、そこから選ばれた15人がそれぞれ作成者が舞台にあがり最終アピールをすることになっていた。
「大丈夫。お前そうとう頑張ってきただろ?」
「…う、うん、」
「あら、リリ!」
「!エレナさん…」
「おはよう。顔が真っ青よ?緊張しているの?最初私達は裏で控えているだけよ、まだなにもないわ大丈夫よ。」
「そうですね…。」
リリが深呼吸をする。
「そうよ!今から緊張していたら体がもたないわ。さあ、一緒に会場まで行きましょう。」
「はい。…それじゃ、ルス行ってくるね。」
「おう!見てるからな!」
「ルス、…ありがとう。」
「?おお」
「ルスのおかげで前に進むことができたわ。……ここまでこれたのはルスのおかげだと思ってる。本当にありがとう。」
ルスの目をしっかりと見て、リリが言った。
「……ああ。俺もお前がここまでこれて本当に嬉しい。こちらこそありがとう。頑張って来いよ。」
「うん!」
「さ、会場は…あちらね、向かいましょう。」
そういって二人は歩いて行った。
それは品評会の最終アピールでのこと。
「ねえ、ママ!あの人星の妖精さんみたい!」
「ほんとうね…」
誰もがリリの作ったドレスに、そしてリリに目を奪われた。息もできない美しさ。一瞬の静寂のあと会場は歓声に包まれた。
―――この年、星の妖精がつくった星織りのドレスが国中の話題となった。
それからそれから。
リリは相変わらず山の中で暮らしていた。しかし変わったこともある。リリは週の半分をシャブランで新しく開いた仕立て屋で過ごしていた。ルスもそこの手伝いをしてくれている。ルス曰く、ルスの家の仕事は兄が継ぐため問題がない…らしい。しかし1人では店を営業できないため、リリはとてもありがたく思っていた。春の品評会で一番よい評価を得たリリの星織りのドレスのおかげで、リリの店は予約でいっぱいだった。以前にもまして忙しくなっていたがリリは幸せだった。リリはもう一人ではなかった。
「よし、今日も一日頑張ろう。」
リリの店の一番目立つところには星織りのドレスが飾られている。まるで夜空を切り取ったかのような漆黒の布がまとうのは無数の光。星のようにきらめくその光は、いつまでも輝いていた。
ありがとうございました!