7、少女の願い
「……そっか。まあ、無理にとは言わねえよ。リリが出たくないなら仕方ないな。」
といってルスが少し寂しそうに笑った。
「でもさ、リリ、お前はこれからさきずっとそうやって生きていくのか?」
「……。」
「いきなり品評会ってのは話が大きかったかもしれない。でも、お前このままでいいのか…?」
「…っ!」
いいはずがない。わたしだって服をつくりたい。みんなと仲良くしたい。わたしだってもっと……!
「リリ、」
「いいはずがないじゃない……!」
「どうしてわたしだけこんな見た目なの!?なんでお母さんもお父さんも死んじゃったのよ!」
「わたしだって品評会には出てみたい!!服もつくりたい!みんなとなかよくしたい!!」
リリが声を荒げる。
「でも、でも………こわい。…また気持ち悪いと思われるのがこわい。また一人になるのがこわい……」
嗚咽がもれる。
「リリ。」
「……ふっ、う、…ごめ、」
ルスが立ち上がりリリに近づく。そして腰をおろすとリリの手を取り下からリリをのぞき込む。
「リリ、ごめんな。でも聞いてほしい。俺はな、生まれてからずっとリリのこと気持ち悪いと思ったことはないよ。リリの銀の髪も瞳もすっごいきれいだと思ってる。これは俺だけじゃない。俺の両親もだし、村の人もそう思っている人はたくさんいる。」
「リリがなにを言われたことがあるのかは知ってる。でもな、その少数の悪意のせいでリリが好きなことをせず、一人でここで生きていくと決めているのが俺は辛いよ。」
「……。」
リリが目に涙をためルスのほうを見た。
「リリ、俺は何があってもリリの味方だ。俺の両親だって。それに幸いにも今健康だしリリを一人にはしないよ。約束する。」
「品評会なんてでたらリリのファンが増えるにきまってるからそれはちょっと複雑なんだけど…」
そんなことをいってルスが笑いかける。
「リリ、俺を信じられない?」
「……っ、その、言い方はずるい。」
「はは、ごめんな。でも俺はリリが前みたいに好きなことができるようになるよう願ってる。リリが一人になりたくないなら絶対に一人にはしないよ。」
「…急におしかけてごめんな、リリがもう少し落ち着いたら今日は帰るよ。」
「……。」
ルスは立ち上がり、テーブルに出ていたお茶を入れなおそうとキッチンに向かう。またいい香りが漂ってくる。
「はい、どうぞ。」
「…ありがとう。」
「ん。」
静かな時間が流れた。ふーっとリリが息をはく、そして顔をあげ緊張した面持ちでルスのほうを見る。
「ルス」
「ん。」
「…ほんとに、一人にしないでくれる?」
「…っ!絶対。約束する。」
「……ありがとう。」
リリの本当にやりたいこと。願い。
「わたし挑戦してみるね。」
「リリ!本当?」
「うん、……怖くないことはないんだけど、でも、わたしも頑張りたい。」
「!!俺もめっちゃ手伝う!」
「ふふ、ありがとう。」
目に涙をため、花がほころぶように笑うリリは息をのむほど美しかった。
ほんとにありがとう、ルス。
それからリリの生活は前よりずいぶん忙しくなった。月に一度エレナさんの店に行くのは変わらず、新しいドレスをつくるための作業、材料を買い出しにいったり、勉強しなおしたり、それでもいつもどこか楽しそうにしていた。そしてルスはというと二日に一度は必ずリリの家に来ていた。
「……ねえ、ルス。」
作業場の奥の部屋の掃除をしていたルスが顔を出す。
「ん?どうした?」
「仕事、忙しくないの?」
「ああ、大丈夫!親にも説明したし、応援してくれてるよ。」
「…そう。」
ここ何年かは何ヵ月かに一回しか会ってなかったため、急に昔のように顔を合わせるようになり、リリは少しだけ戸惑っていた。これはルスには秘密である。ルスは大切な幼馴染が生き生きと働いてるのがうれしくて浮かれていたのだった。




