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星織りの少女  作者: ハル
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6、少女の気持ち


 朝、今日は特に用事もなかったため、リリはゆっくりと目覚めた。今日は洗濯して、そのあとは、んー何しようかな。そんなことを考えてた。リリは起き上がると、ベッドからおり、厚手のワンピースに着替える。リリの寝室となっている屋根裏部屋にはベッドとタンス、小さな机に棚。必要最低限のものしかない。二階の寝室は両親が使っていたが、主人がいなくなった今、どこか寂し気な気がして、リリはあまり入ることはなかった。シーツをはぎ、一階へ持っておりる。そうしてかごに入れ、裏庭へと向かった。そして洗濯を始めるのかと思いきや、リリはどこからか花を持ってきた。裏庭のはじへ向かう。そこには小さな小山が二つ。それを白い小さな石で囲んでいた。リリはしゃがんで花をそなえる。そして手を組み目を閉じた。


「お父さん、お母さん、おはよう。」


ここはリリの両親のお墓であった。ここに骨が埋まっているわけではなかったが、ここが二人のお墓である。リリの両親は四年前、病気で亡くなっていた。

 最初に父が発症し、そのあと母にうつったのだと思われ、リリはすぐさまルスの家に預けられた。父がその病気をどこから持ってきたのかはもうわからない。幸いにも二人は滅多に人の寄り付かない森の中で暮らしていたため、仕立て屋を閉め、家に閉じこもっていた。三日に一度村の診療所から医者が治療のため訪れていた。しかし治療の甲斐なく、半年後二人は亡くなってしまった。リリの家系は精霊のせいなのか、代々一人っ子であった上、父の出身は王都のさらに向こうと遠かったため、リリの周りに親戚と呼べる人はいなかった。しかし、親戚がいようといまいとリリはもう一人で生きていくと決めていた。実際、ルスの両親が一緒に住まないかと言ってくれたのだが、リリは頑なに首を縦にふることはなかった。。ルスの母とリリの母が昔からの親友であったため、リリとルスは小さい頃からずっと一緒だった。ルスたちはリリの見た目に全く気にすることなく良くしてくれていた。しかしリリの両親のお葬式の時聞いてしまった。


「感染症なんて恐ろしいわね…。」

「ほんとね、でも村で流行ることがなくてよかったわ。」

「ええ、そうね。……ねえ、あの家ってもしかして銀色の子のとこじゃない?」

「…!ほんとだわ。……私昔から気味が悪いと思っていたのよ。」

「わたしもよ!呪われてでもいるんじゃないかしら……。」

「こわいわね……。」


それは、日頃ほとんど関わったことがない大人たちであった。親しくしていた人でそんなことをいう人はもちろんいなかった。しかし両親を亡くしたばかりのリリにとって、その言葉はひどく残酷なものであったのだ。



 ………やっぱり、わたしのせいなの?



 子どものころ言われたこと、一回連れ去られそうになったこと、そして両親の葬式での陰口。


 その三つ。その三つがリリに纏わりつく。


 リリがいけないのだと錯覚に陥る。

 

 たった三つという人がいるかもしれない。誰に裏切られたわけでもない。でも、リリにとっては大きかった。自分といたら不幸になるのではないかとさえ思われた。もう誰かと深く関わりたくなかった。





 お祈りを終えたリリは、洗濯にとりかかった。そうしていると玄関のほうから声が聞こえた。


「リリーーー!」


ルスの声だった。ちょうど洗い終わったシーツを干して玄関にむかう。そこにはいつもと変わらない出で立ちのルスがいた。茶色の髪に飴色の目、身長はリリと頭一つ分くらいの差がある。


「ルス!帰ってきてたの?」

「昨日帰り着いたんだ。」

「そうだったんだ。おつかれさま。」

「うん、ありがとう。」


そうして二人で家の中へはいる。


「いまお茶を用意するね。」

「おう、ありがとう。気を使わせちゃってごめんな。」

「ふふ、これくらいなんともないわ。」


お茶のいい香りがただよってくる。準備ができると二人向き合ってテーブルに座った。


「それで今日は急にどうしたの?」

「いやまあ、帰ってきたことの報告と、あと一つこんなもの王都で見つけてな。」


そう言ってルスは鞄から一枚の広告を取り出した。


”ドレス品評会開催”


「これをな王都で配ってたんだよ。それで、リリどうかなと思って。」

「……。」

「なあ、リリ俺もなんかできることがあれば手伝うし、でてみないか?」

「わたしは……」


 わたしは、でたくない。人前には立ちたくない。人の服をつくることなんてできない。


 最初はそう思った。でもリリは本当に服をつくることが好きだった。最初にドレスをつくったのは五年前。それまでもずっと両親の手伝い、簡単な自分の服をつくるなどはしていたが、自分で布から準備し、ドレスを仕立てたのはその時がはじめてであった。そのドレスはエレナさんのところに通う貴族のドレスだった。初めて自分がつくったドレスを人が着ているのを見た時の感動は一生忘れない。胸がドキドキ高鳴り、なんとも言い表せない気持ちになった。しかし両親が亡くなってからはすっかり辞めてしまっていた。服を作ったのが自分のような人だとわかった時が怖かったし、なにより自分が着る人を幸せにできる服などつくれる気がしなかった。


「せっかくだけど……わたしは辞めておく。」




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