第一話:2010年9月13日
……〜〜♪
……はァ、朝っぱらから……誰が俺なんかにメール送るんだよ。おかげで目が覚めてしまったじゃないか。
まあ、とりあえず見てみるか……あれ?このメアド、登録してないやつだ。件名はなし、内容は……は?なんだよ、これ……
──『岩藤昇、君の幼馴染角倉紘海は本日2010/9/13に死亡する』
……なーんて、俺がこんな送信元も分からないメールを信じるはずもなく、いつも通り学校へ向かった。いつも通りの高校生活、ただ違うことといえばあのメールと……紘海が学校に来ていないことだ。それだけで、十分嫌な予感がするが、まさかな。
──「なあ友斗、今日って紘海、どうしたんだろうな。」
「昇が知らないんだったら、俺も知らないよ。昇、あれでしょ。ケンカしたとかでしょ?痴話喧嘩。」
クソみたいな嫌味を言いやがって、このヤロー。俺が今食ってるカップ麺、テメーにぶっかけてやろうか?
「痴話喧嘩って、お前なァ。……あいつとはただの幼馴染だ。痴話喧嘩なんてもってのほかだ。」
「はいはい、でも珍しいよなー。角倉さんって根がマジメって感じだし、現に欠席したの見たことないし。そして、珍しいのは昇も。普段は角倉さんのこと話すの嫌いなくせに、いきなりどうしたんだ?」
「あのな、別にあいつの話するのが嫌なわけじゃねえよ……ただ変に勘繰られるのが嫌なだけだ。……てか、お前そんなこと気にして生きてんのか?」
「でも、避けてるのは事実でしょ。昇から話すことはまずない。だから珍しいし、なにかあったのかなって思ったんだけど。」
こいつとの付き合いも中一の時からからおよそ四年、俺に対する察しの良さだけ育ちやがって。……まあでも、友斗にはこのメール見せてもいいか。
「……友斗、これを見てくれ。」
「なになに、“岩藤昇、君の幼馴染角倉紘海は本日2010/9/13に死亡する”……だって?変なメールだな。誰からのメールなの?」
「それが分からないんだ……」
「へぇ、これがあったから昇は、ねぇ。……そういえば、こんな都市伝説は聞いたことある?──“未来メール”っていうものなんだけど。」
「未来メール?聞いたことないな……まさかお前、これがその未来メールって言うんじやないんだろうな?」
「あるいは、ね。でも、未来から過去にメールを送るということは不可能、って言われてるからあくまで都市伝説の域を出ないらしいんだ。因果律とか相対性理論がなんちゃらで。」
へえ、こいつは相変わらずどうでもいいことばっか知ってるな、と感心させられる。……でも何か引っかかる。逆に考えればその因果律とか相対性理論とかを突破したらいけるのでは?それができるとしたらこれは本当に……!?
……なんて、だったら不可能なんて騒がれないし、誰かが使ってないとおかしいだろうな。まあ、あのメールは誰かの冗談に違いない。誰だか知らんけど。
──部活も終わり、帰路で友人とも別れ、俺はただの孤独な高校生に戻った。結局、今日は何も無い普通の一日だったな。それにしても全く、人騒がせなメールだったな……あれ、紘海の家の前に人集りだ。……なんだ、妙な胸騒ぎがする。いや、何かの冗談だ。さっさと家に帰ろう……
──「ただいまー……」
「昇!ちょっとあれ、どういうこと!?」
「うわびっくりした、なんだよ姉貴。」
「いいから、手洗って部屋に荷物置いて、さっさとリビングに来て!」
「……分かったよ。」
リビング?なんでだ?……はァ、ため息が何故か出てしまう。
──「それで姉貴どうし……」
『本日昼頃、〇〇県珠桜市内珠桜公園にある川の中で、角倉紘海さん16歳が、遺体で発見されました。角倉さんは昨日より行方不明になっていた模様で、警察は誘拐殺人として捜査を進めています。』
「……は?なんだよ……これ……なんなんだよ、なんだっていうんだよ!!!!……うっ!」
「き、きゃあ!?昇、大丈夫!?」
……柄にもなく吐いてしまった。同学年、知人、クラスメイト……幼馴染。その紘海が、死んだ?一昨日会った時には、いつもみたいに笑っていた。その紘海が、死んだ?……なんだよ、なんの冗談だよ。
……いや、冗談じゃない。俺には、救うことが出来たはずなんだ。俺には未来メールがあったじゃないか。俺は、紘海が今日死んでしまうことを知ってたじゃないか!……なのに俺は……俺は……!!!
「ッッックソッ、クソッ、クソッ!!!」
「昇、落ち着きなさい!」
「これが落ち着いてられるか!……落ち着て、いられるかよ……」
涙が、止まらない。情けない、悔しい、憎たらしい。鬱陶しいほどの感情が俺を蝕む。……ああ、俺は……。
夜になっても、まだ悩んでいた。どうして、俺は紘海を救おうとは思わなかったのか。いや、そもそもあのメールが悪いんだ!あのメールを信用しろってのも無理だし、あの内容でどうやって助けろってんだよ。
……なんて、悩むことも虚しくなる。でも、未来メールだけが結果を知っていた。未来メールは実際に今朝、俺が朝起きた時に届いていたんだ。
……だったら、俺が未来メールで救えばいいのでは?どうにかして俺は、自分で未来メールを過去の自分に送信する。そうすれば確実に紘海を救えればいいんじゃないか?たとえこの世界で、今ここにいる未来で紘海を救えなくても、紘海と会えなくても、そんな世界線を、俺が作ればいいんだ……!
──「そうだ、俺が……紘海を救うんだ!」
続く




