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お城の自慢の庭を生中継したら王太子殿下が男と熱いデートをしていた  作者: 水桜


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20/20

虹の君メルス・パルクールの悲しい一日 2

あら、場面が切り替わったわね。


食事を終えたメルスは、自室に戻ったらしい。

机に向かって、何かしている後ろ姿が映っている。


勉強? 退学になったばかりだし、他の学校の編入試験の準備かしら。ほとぼりが冷めるまで他国に留学でもするのかもしれないわね。


ん?

ノートの文字が画面に映し出される。


『今日、両親に謹慎を言われてしまった。

部屋に一人でいたら、窓を叩く音が聞こえた。

不思議に思い、カーテンを開けたら、バルコニーに殿下が立っていた。

逢いたくてたまらなかった、と殿下は私を強く抱きしめた』


⋯⋯妄想日記。

彼の、ささやかな趣味かしら⋯⋯。


メルスは、顔を赤く染めながら日記、いえ妄想小説を書き続けている。


ご両親が可哀想すぎるわ。

今も、家のため、メルスのためとあちこち駆け回っているというのに。

息子は、流出したら一族全員を破滅に導く書を綴っている。

身内のとんでもない暴露話に、一族や派閥の人間は、社交界を引退するしかないだろう。


『2人の唇が重なる。

殿下の濡れた熱い舌が、私の口腔に押し入る。

私は殿下の激情に応えるようにーーー』


もう充分だわ。


その時、室内にパルクール家の執事が入室してくる。

執事は、手に銀盆を持ち、うやうやしく頭を下げる。


「メルス様、手紙が届いております」


銀盆の上に、封筒が乗せられている。


「手紙? 誰からだ?」

メルスは、怪訝そうに問いかける。


「王家の封蝋が押されています」

「王家? 殿下か?」


椅子から慌てて立ち上がったメルスは、執事から手紙を受け取った。


王家の封蝋が押された上質な封筒に、宛名は書いていない。

禁断の恋に酔いしれるメルスには、彼にしか見えない宛名が見えていた。


「殿下。名前を隠して私に連絡をっ」


感激するメルス。


そんなメルスに、軽く礼をして執事は退室していった。

執事の眼差しは、ひどく冷めたものだった。

(諸悪の根源からの手紙を渡すわけないだろうが)

と、心の中で毒づいていたからだった。


嬉々として手紙を開封したメルスは、丁寧に中の便せんを取り出した。


笑顔で読み始め⋯⋯。


笑顔で読み始め⋯⋯。


画面がフリーズする。

メルスが笑顔で手紙を読んでいる場面のまま、止まった。


1分、2分⋯⋯。

動かない。


「え?」

故障?


思わず、お母様へと顔を向ける。


お母様は、にっこりと笑って画面へと視線を遣った。


「あ⋯⋯」


画面に変化がある。


メルス様は動いていないけれど、画面の端っこに「早送り中」と表示されている。

窓の向こうの木が凄い早さで揺れているから、メルス様が笑顔のまま固まっているのは事実らしい。


また画面が切り替わった。


「3時間後」


大きく表示される。


え?

3時間も、メルス様はあのままだったの?


メイドがリネンを手に持ち、メルス様の部屋にやって来た。


「失礼致します。

リネン類の交換に来ました⋯⋯?」


いつものように仕事を始めようとしたメイドだったが、メルスの様子がおかしいことに気づいた。


笑顔で手紙を読んでいる。

普通の光景のはずなのに、なぜか違和感がある。


「メルス様?」


メイドの声にも、なんの反応もない。


というより、動いていない。


「きゃーーっ!

誰かっ⋯⋯! メルス様がーーーっ」


メイドの叫び声に、他の使用人たちが駆けつける。

室内が騒がしくなったというのに、メルス様は笑顔で手紙を読んだまま、変わらない。


外出中のメルス様の両親が戻り、医者が呼ばれ、メルス様はやっと、椅子から離されベッドに寝かされた。


医者によって、目を閉ざされたメルス様は、まるで⋯⋯。


「お母様、メルス様は⋯⋯」


笑顔のまま、幸せな○を迎えてしまったのかしら?


「大丈夫よぉ。

ただの気絶だから」


お母様は、とても楽しそうだ。

ただの気絶なら、かなり愉快な気の失い方だったわね。


ベッド脇に付き添う両親と医者から離れた場所から、様子を見ていたメイドは、床に落ちている紙に気づいた。


メルスが読んでいた手紙だ。


拾い上げ、好奇心から読み出したメイドは、顔が真っ青になってしまった。


その紙は、メイドが見てはいけない代物だった。


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