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転生令嬢はバリアフリー王国の夢を見る  作者: 黄猫屋トモロヲ


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6/6

5:知らないことが多すぎる!

世界観説明回です

 ドレスルームでひとしきり秘密の逢瀬を楽しんだ私は、しっかり後片付けをして寝室に戻った。ベッド脇のサイドテーブルでは編みぐるみのヒツジさんがつぶらな瞳をうるうるさせて主人の帰りを待っていた。ランプの揺らめきを映すその瞳は、オニキス製の飾りボタンなのだ。


 今日は楽しかったね。明日はもっと楽しくなるよね、メェ太郎。


 ヒツジさんにおやすみをしてベッドに潜った私は、今度こそ深い眠りに落ちたのだった。


◇◇◇


 誕生パーティーから一夜明け、いつもの日常がやってきた。


 起床した私は、メイドさんに身支度を調えられ食堂へ行き、パパさん、ママさんと一緒に軽めの朝食を取る。

 お仕事へ出かけるパパさんを、ママさん執事さんと一緒にお見送りすると、ママさんは執務室へ。私はメイドさんに連れられ子供部屋へ。

 部屋では二人のメイドさんと遊んで過ごし、昼食とお茶の時間になるとママさんが部屋まで迎えに来てくれる。

 パパさんが帰宅すると、また3人で食卓を囲み、その後眠気に勝てなくなった私を二人が寝室へと運ぶ。


 というのが、私の記憶にある「今の」日常だ。


 この日常とは交わらない、もうひとつの人生の記憶を自覚したのは、つい昨日のこと。

 意識の底から突如としてあふれ出した記憶の欠片、それらはショート動画の詰め合わせのごとく、様々な場面を断片的に映し出す。

 この家に生まれてから4歳の誕生日を迎えるまでの日常には、けっして存在しえない記憶、それなのに、私がかつて体験したことなのだと疑いようもなく自覚する。

 それは前世の記憶と呼ぶべきものだろう。


 さて、ここであることに気づく。私が置かれている今の状況。日常の範囲外のこととなるとまるでわからないと言うことだ。


 前世の記憶を取り戻した影響なのか、今世の4歳に至るまでの記憶はどこかおぼろげだ。

言うなれば昨日までの記憶と今日の記憶の間に数年分の記憶が横入りしている、そんな感覚だ。記憶を部屋に例えるなら、自分が部屋の真ん中にいて手の届く範囲に前世の記憶がばらまかれ、今世の記憶は四方の壁際に追いやられて手が届きにくいといったところか。


 そんな記憶をいくらかき集めても、現状を理解するには至らない。そもそも今世の情報が少なすぎるのだ。


 私は今世ではかなりぼーっと生きてきたようで、生まれた家のことも住んでいる国のことも知識としてはほとんどなにも知らないに等しい。巨大なおかっぱ頭の女の子に叱られそうである。仕方ないじゃん。こちとら一昨日まで3歳ぞ。


 そんなわけで、まずは情報収集にいそしむことにする。


 4歳児の知識欲は半端ない。この年頃の子供が急にいろいろなことを尋ねるようになっても、なぜなぜ期に入ったのだと思われて不審がられることは無いだろう。そう考えた私は、両親から使用人に至るまで顔を見るなり質問攻めするようになった。

 その結果わかったことをプレゼントされた日記帳に書き留めていく。その日知ったことを記しているんだから、これも立派な日記だよね。ちなみに読み書きを習っていないので前世の記憶の文字、日本語で記す。誰かに見られても創作文字で遊んでいると思われるだろうけど、念のため鍵をかけて、その鍵は小物入れと化した多面体にしまっておく。


 そんな感じに数日かけて知識欲を満たした結果、いくつかのことを知ることが出来た。

 まず、私が住んでいるのはサンサリアという王国らしい。前世の記憶にはない国名だけど、ヨーロッパのどこかだろうか。

 そしてこの土地の名前がスピニグラード。王様のいる首都から見て南東に位置する広大な領地らしい。我が家、ラングシュタインはスピニグラードの地一帯を治める侯爵家だ。パパさんが領主さまだね。


 パパさんのお仕事は大きく分けてふたつ。

 ひとつは、巨大な荘園で行われる繊維産業。麻、綿、そして羊毛を季節ごとに収穫して紡績し、王都に納品するお仕事だ。

 もうひとつは、騎士団の育成と管理。騎士見習いの若者たちが騎士団で厳しい訓練を受け、十分な実力が認められて王都で叙任を受けると、任務に就くことが可能になる。

 うちのお屋敷にも、警備と護衛の任務を担当する騎士さん達が詰めてくれている。


 ちなみに前騎士団長のオーギュストさんはおじいさまの飲み友達だそうで、おじいさまとおばあさまの住むお屋敷の別館によく招かれているようだ。

 私も別館を訪れた際に会ったことがある。その際の印象は、ものすごく大きな人。パパさんも背が高いけど、全体的にボリュームが違う。丸太くらいは担げそうな巨漢だ。でも不思議と恐ろしさはなく、笑顔で頭を撫でてくれた記憶がある。

 今は息子のフランクさんに騎士団長の座を譲り名誉職におさまったということだけど、後進の育成のため頻繁に訓練所へ足を運んでいるらしい。パワフルなおじいちゃんだ。


 お屋敷についても書いておこう。

 私の住んでいるお屋敷は、大きく分けて北側に位置する本館、おじいさまたちの住む西側の別館、そして使用人さん達の暮らす東側の寄宿舎で構成されている。

 建物は3つだけど、渡り廊下でつながっているので、正面からはコの字型の建物に見える。お洗濯やお掃除が仕事のメイドさん達は寄宿舎から本館と別館に通ってる形だ。ただ、お誕生日に私の髪をセットしてくれたメイドさん、メアリさんは、ママさんの身の回りのお手伝いをするのが仕事だそうで、本館に部屋がある。

 お屋敷の敷地内には他にもいくつも家が建っていて、料理長さんやお医者さんのような専門の仕事をする人が住んでいるらしい。ちょっとした住宅街だね。


 そんな敷地の外はどうなってるかというと、ほぼほぼ畑と牧草地だったりする。以前、両親と一緒に馬車でお出かけした記憶があるのだけど、どこまでも牧歌的な丘陵地帯が広がっていた印象。あの日はなんでお出かけしたんだっけ?


 スピニグラードは、ぶっちゃけ田舎である。人の数よりヒツジの方が多いんじゃないかな。

 中心地まで行けば街があって、ひととおりの店は揃っているらしいけど、こじゃれたブティックや高級雑貨なんてものはない。そういったものは王都で購入するらしい。


 普段家から出ない私には、あまり関係ないけどね。


 と、思っていたのだけれど、数日経ったある日、ママさんがニッコリ笑って言ったのだった。


「ヴィヴィちゃん、一緒に王都のお茶会へ行きましょう」


次回より王都編です!


2026/05/05改稿

主人公が前世を自覚するに至る描写が足りて無かったので加筆しました。

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