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パパの中のパパ  作者: クラウンエーテル
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第2話、理不尽な妻

平成24年の夏、タカシの身体は、傷だらけであった。


タカシの顔にも傷があったが、酷いのは身体の傷跡やアザ。

タカシの服に隠れて人目に触れない部分はすり傷や切り傷、アザが何十箇所もあり、身体中が痛くて満足に眠れない日々が続いていた。


そんな状況でもタカシは家事をきっちりこなし、息子のユウと娘のナミを保育園に迎えに行き、帰ってきてユウとナミをお風呂に入れ、2人にご飯を食べさせていた。


タカシは優しいパパである。

ユウとナミはパパのことが大好きであり、キャッキャと笑いながらご飯を食べていた。


この時、タカシは留置場の看守として勤務していた。

看守の勤務体系は、3日で1サイクルである。

24時間勤務の当直日、当直の次の日で午後は休みの非番日、非番日の次の日の休日、というのが1サイクルで、このサイクルを繰り返しで勤務している。


非番の日は徹夜明けが多く、帰宅したらすぐさま寝たいところだが、それが許される状況ではなかった。

タカシは、必死に、本当に必死に家事をこなさなくてはならなかった。


それは、何故か。

それは、リコが帰宅したらわかることである。


「ただいま」

リコが帰宅した。

そして帰宅し、テーブルのガラス板を見るなり怒鳴り始めた。

「ねえ、ちゃんとテーブル拭いた?

油跡残ってるじゃん!

一日何やってたのよ!」


しかし、テーブル板はピカピカに磨かれている。

ユウとナミの指紋の跡がほんの少し残っているくらいである。


「テーブル、拭いたよ」

タカシは微笑みを浮かべて答える。


次の瞬間、リコがタカシに平手打ちをしながら怒鳴りつける。

「そんな訳ねえだろ!

これのどこが拭いてんだよ!

私が仕事で疲れて帰ってきてるのに余計に疲れさせんなよ!」


タカシは徹夜明けで帰ってきて、必死に掃除などの家事をこなし、丁寧にテーブルを拭いていた。

だから、リコはタカシに感謝しなければいけない立場なのに、何故タカシに当たり散らすのか?


更にリコはタカシの胸ぐらを両手で掴み、タカシの身体を前後に思い切り揺らしながら威迫する。

「家の拭き掃除もできねーオメーなんて価値ねえんだよ!

本当ダメなヤツだな!

今からやり直せよ!」


その様子を見ていたユウとリコが泣き出した。

母親のリコが帰宅するなりいきなり剣幕なら子供達にとって恐怖以外何物でもない。

普通ならこの様な状況の時、子供達は優しいパパのところへ逃げ込むのであろう。


しかし、リコはそれを許さなかった。


「このオジサンから離れて!

この人、あなた達のパパじゃないから!

早く!」


リコがユウとナミに大声を張り上げる。


ユウとナミはタカシの側を一旦離れる。

ユウは急いでリコの元に駆け寄る。


するとリコはユウに語りかける。

「このオジサンがいけないんだよ。

ユウちゃん、わかった?」


ユウは泣きながらうなずく。

そして、今度は、ユウは、なきさけびながら小さなコブシを振り上げ、タカシを叩き始める。

「コノコノコノコノコノー!」


ユウは3歳である。

大人と比べれば力も弱く、タカシとは身長差があるため、ユウのコブシはタカシの脚にささやかに当たる程度でタカシは痛くはない。


でも、ユウは必死だ。

タカシがイケナイと全身で表現しているのだ。

ユウはタカシがイケナイ事をしたと思い込み、それをリコに全身で表現しないとこの場を過ごすことができないと悟っているのだ。



・・・この状況、タカシは全くイケナイ事などしていない。

徹夜明けで家事全般をこなし、子供達の面倒を一生懸命見てくれている夫。

普通の妻なら、夫に心から感謝の言葉をかけてもおかしくない。

しかし、リコは違ったのである。


リコの機嫌が悪い時は、ユウにタカシのことを「オジサン」と呼ばせる。

ユウにとってタカシは血の繋がった本当のパパであるにも関わらず、だ。

自分の本当の息子まで使ってタカシに嫌がらせをするのである。




・・・これが、この家庭の日常である。

この家庭の支配者は、言うまでもなくリコである。

それも極めて理不尽な・・・












※文中の、リコ、ユウ、ナミについては仮名です。

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