4.騎士昇格試験4
試験自体はそれほど難しくはなかった。
この昇格試験の少し前からマコトによる試験対策をしてもらっていたのでペンは早く進んだ。
試験が終わった後は採点が終わるまで各自自由となっていた。レオンは時間帯が昼頃だったのもあり、コルナが作ってくれたお弁当を食べようとしていた。
当然というべきか何というか自称マブダチのバリも一緒にご飯を食べていた。そして、食べながらも彼の喋りは始まった。ただ、ご飯を口に入れている最中は喋ることはせず、飲み込んでからひたすら喋るといったことを繰り返していた。
昼食後は素振りでもしようかと考えていたがバリに捕まっているためすることは叶わなかった。
「皆さん集まりましたね。それでは今から呼ばれた者は立ってください」
採点が終わり、試験官に現れ、続々と名前を呼ばれた者が立ち上がる。
皆、今か今かと自分の名前を呼ばれるのを待っている。レオンもその一人だ。
しかし、百人近くが呼ばれたがいまだに名前が呼ばれない。
(大丈夫、大丈夫。ちゃんと勉強してきたし問題を解く限り手ごたえはある。見直しもしたからうっかりミスもないはずだ。大丈夫・・・大丈夫・・・!)
ひたすらに自分に大丈夫と言い聞かせ、呼ばれるのを待つ。
「・・・以上百三十二名」
・・・レオンの名前は呼ばれなかった。
レオンは膝からがっくりと崩れ落ちた。実際は椅子に座っているので気分的そういう状態って意味ではあるのだが。
他の受験者も呼ばれた者は喜びの顔をして、呼ばれなかった者は一応に悔しさを露わにしている。
意外なのは呼ばれてない方にバリもベリアルディもいることだ。しかも、その二人は悔しそうな表情をしていない。
なぜだろうかと不思議に思う。
「呼ばれた者は不合格だ」
試験官がその言葉を言った瞬間、歓喜と悲鳴が部屋中に響く。
呼ばれた者は崩れ落ち、呼ばれてない者は立ち上がり喝采を上げる。レオンもその内の一人だ。
「では合格者、こちらに来い。実技試験を行うため移動する」
試験官が歩き出したので慌てて、それについていく。
ついていくとそこは訓練でよく使う広場だった。
そして、そこには騎士団長であるヴァイオスがいた。その隣にいるのは副団長であるマリネットとアシッドバーンだ。
受験者はヴァイオス達を視界に入った瞬間、雄たけびを上げる。
憧れの騎士団長と副団長がいるんだからそうなるのは当然だろう。
試験官がそれをなだめるのに一苦労していた。
思えばこの広場で教官を倒して、自分に自信がついたのだ。そう考えるとひどく懐かしく感じるがまだマコトと出会って半年も経っていないのだから不思議な感覚だ。
「フフッ」
レオンは思い出して少し笑う。
「どうしたんだい、意味深な笑いをして?」
「えっ、あぁ、いや、少し思い出に浸ってただけだよ」
「へぇ~どんな思い出だい?気になるなぁ~」
「時間があったら教えてあげるよ」
レオンたちが話しているうちに試験官の隣にいた魔法師が空中に魔法で投影をした対戦表があった。
対戦表を確認するとレオンの名前は最後に書かれていて対戦相手はベリアルディ・クランシスと書かれてあった。
隣にいたバリもレオンの対戦相手を確認したのだろう。出会って初めて困惑の表情を見せ、何を言うか考えた結果、彼の肩に手を置いて
「・・・ドンマイ」
一言だけ呟いた。
「まだ戦ってすらいませんけど!?」
「大丈夫、大丈夫。安心して、例え負けても善戦すれば騎士になれる可能性はあるし、落ちてもまた来年受ければいいんだから」
「しかも負けること前提!?」
確かに強い相手ではあるがバリの言葉あんまりではなかろうか。
慰めのつもりだろうが全然慰めになっていない。
「良かったわ、対戦相手が戦意喪失してないようで」
そこにレオンの対戦相手であるベリアルディが来た。
「当然ですよ、やる前から諦めるなんてありえません!」
「楽しみだわ、訓練じゃあ私と組むことになったら相手が泣き出したりするんですもの。嫌になってしまうわ」
泣きたくなるほどって彼女は一体に何をしたのだろうか。純粋に強いだけではそうはならないだろう。
「・・・ベルディは手加減が苦手でね。今まで訓練した相手は全員ボロボロの雑巾のようになっていたよ」
「苦手ではないわ。訓練でも戦うからには本気でやるべきだと考えているだけよ」
「何人かは泣いて降参するほど痛めつけられていたよ」
「あ、あれは・・・その、やり過ぎたと思ってるわよ・・・」
ベリアルディは目線を下にそらす。
いつもならバリがこういう話をするときは笑いながらや茶化しながら話すのに今だけは真面目に話している。それだけ笑えないことなのだろう。
自分の顔が引きつっているのがわかる
回復魔法が必要になりそうだ。
「それでは第一試合を始める。対戦者は前へ」
二人が前に出る。
「始め!」
「皆良い動きしてますね」
「そうかい?僕からしたら無駄な動きが多い気がするけど・・・」
試合を見ながらバリと感想を言い合っている。
バリの評価はかなり辛口だ。しかし、聞いている限り的を得ていると思う。魔法についてもかなり詳しいのでその説明までしてくれるので助かる。
「続いて第六試合を始める。対戦者は前へ」
「おっと、僕の出番か」
「頑張って」
「マブダチから応援をもらったからには頑張らないね」
今日初めて会ったがずっと隣にいたせいで段々とレオンの口からもタメ口が増えていった。バリはそれをとてもうれしそうにしている。
最初に言っていた気軽に話してほしいは建前だったのか思っていたが案外本音だったのかもしれない。
対戦相手はどうやらサーベルを使うようだ。バリは剣を使うようで長さは短剣と長剣の中間と言ったところだ。
武器としてそこまで珍しいわけではないが問題なのは数だ。
「六本?」
予備で持つにしても多い。投げナイフだとしたらあの剣の長さじゃあ投げるのに適してない。一体どうするのか考えていると試合開始の号令がかかる。
「始め!」
相手も六本の剣に戸惑っているのか単に警戒しているのか距離をとりつつ様子を見ている。
バリはというと器用に指などに挟んで剣を持ったかと思うとそれを空中に放り投げた。そして、投げた剣は空中で止まり、刃を対戦者に向け飛んでいった。
相手は驚きつつも剣を防ぐがなにぶん手数が違う。向こうは剣一本に対してバリは六本だ。相手は防ぎきれず徐々に後退していると空中に浮いている剣の一つが手首を叩き、もう一本の剣が剣を跳ね上げる。
そして、残りの剣が相手刃を向けている。
「こ、降参・・・」
圧勝だった。気配から強いとは思っていたがここまで強いとは思ってもみなかった。
「へーい、勝~利!」
バリはこちらに走って止まると手を上げてきた。
彼の意図を察して同じように手を上げて、ハイタッチする。
「お疲れ、圧勝だったね」
「もちろんさ、あんなの話にならないよ」
「それでどうやって、剣を浮かせてたの?魔法だよね?」
「知りたい~?」
聞き方と顔がウザかったがとても聞きたいので素直に頷く。
「あれは厳密には魔法ではないよ。魔法付与の一種さ。魔力を物体に流すことで自由に動かすことが出来るんだ。ほら箒や杖で飛んでいる人とかいるだろ?あれと一緒だよ。僕は勝手に"魔動剣"と呼んでいるけどね」
かなり便利そうだが使うにはそれなりに技量が必要らしい。浮かせるだけでもそれなりに難しいのだとか。
「本気を出せば十本ぐらいまでなら精密に操作ができるよ」
しかもまだまだ本気を出してないのだからたまげたものだ。




