6.訓練とは地味で辛いもの
夏休み
それは学生にとって最もうれしい休み。
学業という名の苦行から解放され、自由に過ごすことが出来る長期休み。
異世界ではあるものの学校があるからには当然、夏休みだって存在する。それは、日々の大半を学校で過ごす学生たちが家で過ごすということだ。
この屋敷の唯一の学生であるレオンもしばらくの間、学校に行かずに屋敷にいることになる。
つまり・・・
「よろしくお願いします!」
マコトは一日中、レオンの訓練に付き合うことになるということだ。
立派な騎士を目指しているレオンに夏休みの間、屋敷でぐうたら過ごすという選択肢はない。真面目なのは結構だが、それに付き合うことになるマコトの心情を言うのならば、面倒の一言に尽きる。
(俺だったら絶対に遊びに行きまくったり、家でダラダラ過ごしたりしているだろうなぁ~)
育った環境の違いだろうか。
とりあえず、頭を切り替えて訓練内容を考えることにする。
「それじゃあ、お前の実力も最初のころより伸びていることだし次の段階へと進めるか」
「次の段階ですか・・・」
レオンはゴクリと喉をならす。
「お前にはどんなタイプの剣士になるかを決めてもらう」
「剣士のタイプ・・・?」
レオンは首をかしげている。
「剣士には大雑把に二種類存在する。力で敵を圧倒する剛剣の使い手と敵の攻撃を受け流す柔剣の使い手。今までお前にはどっちの剣士にもなれるように訓練してきたわけだが、そろそろどちらかに重点をおく頃合いだろう」
どちらの剣士になるかで訓練方法が大きく変わる。
両方できれば問題ないのだが、二つ同時に極めようとするのは常人には無理だ。これは剣士に限らずどんなことでも共通することだ。
「剛剣か、柔剣か・・・う~ん・・・」
レオンはウンウン唸りながら考えている。
そして、決めたのかこちらを見る。
「それでは剛剣でお願いします」
そこから剛剣の使い手としての修行が始まる。
今、レオンは素振りをしている。
だが、剣は通常の一.五倍ほどの重さだ。それだけでも負担だが、レオンの体には重りをつけている。腕、腰、足と計五つ、一つの重さが約三キロ程度なので総重量は十五キロと言ったところだ。
「三十八・・・三十九・・・四、十・・・!」
「力任せに振っても意味がないし、態勢が崩れていても意味ないからな。一本一本大事にやれ」
「はい!」
素振りを百回終わると次に待っているの走り込みだ。
この屋敷には庭がある。学校のグラウンドの半分ぐらいの大きさだ。
その庭を十周してもらう。重りをつけている状態なのだから当然、普通に走るよりもつらい。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「あまり遅いと周回が増えるぞぉ~」
因みにペナルティとして一周するタイムを決めており、それに遅れると五周追加になる。
午前の最後は普通に筋トレだ。
腕立て伏せ、腹筋、背筋、スクワットetc・・・計十項目のメニューをこなす。当然ながら、この時も重りは外さない。というか、風呂と寝る時以外は常につけているように言った。
こんなの現代社会だったらパワハラ案件だろう。
現に訓練を見ていたコルナが「えっ、いじめ?」というほどだ。
それをレオンは愚痴一つこぼさず全てを訓練をこなす。
騎士の育成なんてことはしたことがないので加減というものがわからない。『指南』を使うと結果に必要な訓練を提示してくれる。例を上げるならばインターネットで訓練方法と検索して算出してくれる感じだ。マコトは検索でヒットしたものから選んでいるに過ぎない。
根が真面目だからなのか、マコトが言っているのなら間違いないという信頼からなのかは定かではない。
午後も同じように体を酷使するようなハードな訓練を行う。レオンはやはり文句ひとつ言わずに訓練をこなしていく。
そんな訓練生活が三日過ぎた。
「・・・はぁ~、終わった!」
「まだ、午前の訓練が終わっただけだどな」
レオンは筋トレが終わるとその場で倒れこむ。レオンに飲み物とタオルと手渡しつつ、その場にマコトも座り込む。
訓練内容は同じだが、一日たつごとに疲労がたまっていくので日に日に訓練がつらく感じることだろう。
「お前、よく頑張れるよな。こんなきつい訓練、俺だったら一日で根を上げてるぜ?」
そのきつい訓練を課しているのは紛れもなくマコトなのだが。
「だって、先生は間違ったことを言いませんから」
レオンはその言葉に一瞬の間もなく答える。
「今の僕がここにいるのは先生と出会ってからです。先生に会っていなければ僕は夢の道半ばで挫折していました。ですが僕の夢を肯定してくれました。そこに向かう方法を示してくれました。倒れたときに奮い立たせてくれました。だから、先生がやることには意味があり、間違いはないと確信してます」
レオンの目には陰りはなく、今の言葉が嘘偽りのないことを示していた。
「・・・はぁ~、お前ってなんでそうストレートに言うのかねぇ。言われる方ははずいだろうが」
「先生がそれを言いますか?思ったことなんでも口にしてると思うんですけど」
マコトとレオンは昼食を食べるために屋敷へと向かった。




