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異世界だろうが教師の在り方は変わらない  作者: 物語 紡
5時間目 王子奪還
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3.敵か味方か

 結局、イリウス殿下が攫われたことが確定しただけでそれ以外に発見はなかった。

「クオリア、私は一旦騎士団の方に向かおうと思う。一緒に来るか?」

 この後をどうしようかと考えていたらシェリーがそう言ってきた。

 なんでも魔方陣のことを騎士団に伝えに行くらしい。

 彼女のことだからそれとなく騎士団が掴んでいる情報などを聞き出すつもりなのだろう。



「別行動するのか?それならちょうどいい。俺も行きたい場所があってなぁ。一旦、離れるぜ」

 シェリーの言葉を聞いて、今度はマコトがそんなことを言い出した。

「どこに行くの?」

「王子様を探しに、ちょっとな」

 答えになってない回答をされたが今までのことから考えてみるにマコトの行きたい場所とは調査に必要なことだろうと考える。



「わかったわ、なら私もついていくわ。そういうことですのでお姉さま、私も別行動しますね」

「あぁ、わかった。ただ離れる前に君に話しておかなければならないことがある」

 ちらりとシェリーはマコトの方を見ると、肩をすくめてこの場を離れる。

 マコトには聞かせられない話のようだ。



「それでお姉さま、話とは何ですか?」

「クオリア、彼のことをどう思う」

「彼?・・・マコトのことですか?」

 クオリアが聞くと、シェリーが一つ頷く。

 どうやら彼の話をするからマコトを遠ざけたようだ。

 しかし、質問の意味がよくわからず、クオリアは首をかしげてしまう。



「率直言おう。私は彼のことを信用してはいない」

 シェリーは唐突にそんなことを言い出した。

「どういうことですか、マコトを信用してないって」

「ヴァイオスから彼の話を聞いて、うちの騎士団の者に彼のことを調べさせた」

「・・・」

「だが、いくら調べても出身や経歴など彼の素性に関する事柄が何一つ不明だった。どこで生まれどういう風に育ったのか、どういった経緯でラインハルトに来たのか、君と出会う以前のことが全くわからない」

「・・・お姉さまは、何が言いたいの」

 自分の声が震えていることが分かる。



「私は今回の事件に彼が関わっていると考えている」

「そんなわけない‼」

 クオリアは大声で否定した。

 シェリーもそこまで大きな声を出すとは思ってなかったらしく、驚いた表情をしている。



「彼が、マコトがそんなことするわけがない‼さっきだってマコトがいなければ魔方陣を見つけられなかった。今回のことを仕組んでいたのなら、わざわざ自分から発見するわけがないわ!」

「確かにその通りだ。だがな、クオリア。彼はまるで最初から位置がわかっているかのように真っ直ぐに魔方陣の方向に進んだ」

「っ!?」

 確かにあの時マコトは探す素振りを見せるわけでもなく魔方陣の隠し場所に移動していた。



「部屋に入った時に私は魔法の痕跡がないか探知してみたが、空振りだった。しかし、彼は魔力がないにも関わらず魔方陣を発見した」

 クオリアは黙ってシェリーの話を聞く。

「彼には謎な点が多すぎる。信用していると痛い目にあうぞ」」

「で、でも、マコトがイリウス殿下を攫ってなんのメリットがあるの?」

 仮にマコトが犯人または共犯者だとしても理由がない。今までの話は全て憶測にすぎないのだ。



「そもそもとして、今回の事件の意図が不明だ。どこぞの貴族を誘拐して身代金なり金目の物を要求するならまだわかる。だが、この国の王太子となるなら話は別だ」

「?イリウス殿下ならなんで話が違うの?」

 自分の質問には答えずに急に話を変えられた気がして少し語気を強くしてしまう。



「イリウス殿下を攫った場合、何を要求するにしてもメリットよりもデメリットの方がでかい。なぜなら、この国の騎士団が全力で探し回るからだ。この国の人間でイリウス殿下を攫おうと考える奴がいると思えない。だが、そこに他国が関わっているのだとしたら話は変わってくる」

「どう変わってくるのですか」

「我々ラインハルトとマジカルゴは古くから付き合いがある友好国同士だ。どちらかを敵にまわす場合、もう一方にも敵にまわすことになる。どちらか一方の国を潰すとしたら仲間割れを起させることが一番手っ取り早い」

「もしかして、マコトがスパイとでも言いたいの!?」

「あくまでも可能性の話だ。王族の傍に居る素性の知れない異邦人、それだけで私にとっては警戒の対象になる。いいか、クオリア。彼のことは信用するな、ラインハルトの王女として、クオリアの一人の姉としての忠告だ」

 そう言って、シェリーは行ってしまった。



 クオリアは重い足取りのままマコトがいる方へ向かう。

 そこにはマコトのほかにエリカやティナもいた。

「おう、戻ったか。お姉さまとの話は終わったのか?」

 マコトはこちらに視線を向けながら声をかけてくる。

「・・・えぇ、少しアドバイスをもらっただけよ。マコトの行きたいところに向かいましょ」

 にっこり笑いながら言葉を返す。だが、どうにもひきつった笑顔を浮かべているような気がする。



 頭の中には先ほどのシェリーの言葉がある。

『今回の事件に彼が関わっていると考えている』

『彼のことは信用するな』

 頭の中で先ほどの言葉が駆け巡る。

(違う!マコトが敵なわけがない!)

 そう思いながらもその言葉にどこか納得してしまっている自分がいる。

(・・・もし、マコトが今回の事件の犯人だとしたら、お姉さまの仮説は筋が通っていると思う)

 ハッと気づいて、クオリアは頭をぶんぶん振りながら自分の考えを振り払おうとする。



「大丈夫ですか、王女様?具合でも悪いんですか?」

 ティナが心配そうな顔をしながら声をかけてくる。

 顔を上げてみればエリカやマコトも私の身を案じているようで心配そうにこちらを見ている。



「大丈夫よ、心配かけてごめんね」

「お気分がすぐれないようでしたら宿にお戻りになられますか?」

「そうだぞ。別に俺一人でも行けるし、体調悪いなら休んでていいんだぜ?」

「本当に大丈夫よ、問題ないわ」

 心配かけないように精一杯、笑顔を作る。

「・・・ならいいけどよ、無理はすんなよ」



 そう言ってマコトはこちらを気にしつつも歩き始め、ティナもついていく。

 エリカは私が歩いてないからかその場に立っている。

 自分のことを気遣ってくれる言葉が今のクオリアにとっては苦しい。

(自分は彼のことを疑ってしまっているのに。信じたいと思っているのにその一方で彼が犯人の可能性を考えてしまっている)



 クオリアは隣にいるエリカに話しかける。

「・・・ねぇ、エリカ」

「なんでしょうか」

「今回の事件、どう見る」

「今の状況ではなんとも申し上げられません」

「・・・お姉さまがマコトを疑っているの。他国からのスパイでラインハルトとマジカルゴを対立させるためにやっているんじゃないかって」

 エリカはクオリアの言葉を聞いて、少し考えるそぶりを見せる。



 と言っても表情はいつも通りだ。長く仕えてくれているからこそ、はたから見たら表情が変わっていなくてもクオリアにはわかるのだ。

 これが長い付き合いで私が得たものの一つだろう。

「私は以前、マコト様を味方にできれば必ずお嬢様の力になってくれるでしょうと申しました」

 それは訓練場での言葉だった。

「ですが私個人の気持ちを言うのでしたら、マコト様を信用するのは危険だと思います」

「‼」

「マコト様の素性不明の件なら私もシェリー様からお伺いしました。そのほかにも私から見て、不自然な点やおかしな点などもいくつかございます」



(私はおそらく否定して欲しかったのだろう。私のことを否定しなかった彼が味方だと言って欲しかったのだろう。隣にいてくれるといった彼が敵である可能性を消したかったのだろう)

「ですが」



 そこで言葉をいったん切り、クオリアの目を真っすぐ見る。

「それはあくまで私の考えです。お嬢様自身がどうしたいかは別です」

「私自身?」

「はい。お嬢様が信じたいと言うのなら信じればい良いと思います。お嬢様が疑いたいと思うなら疑えばいいと思います」

 あくまで決めるのは自分だとエリカは言いたいんのだろう。



「・・・そう、ね。大切なのは私がどうしたいか、よね・・・」

 一つ頬を叩くとエリカに向き直る。

「ありがとう、エリカ」

「いえ、私は特に何もしておりません」



 正直、まだわからない。マコトが敵なのか味方なのか。自分がどうしたいのか。

 ならいっぱい悩んで、考えよう。

 クオリアは先を歩いているマコトたちを追いかけるために歩き始める。



「仮にマコト様が敵だとすれば私が斬りますのでご安心を」

 そんな言葉が後ろから聞こえたが、とりあえずその言葉には何も言わないでおく。

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