5.王族カローネ家
マコトたちと別れて王城の中に入ったが、廊下には警備の兵士がずらっと並んでいた。
全員、今から戦闘が始まるのではというぐらい空気が張り詰めていた。武器や防具には魔法が付与されていて、さすが魔法大国と呼ばれるだけはある。
「陛下はこちらでお待ちです。どうぞ、お進みください」
ホーフリームは頑丈そうな扉の前に着くとそういって、中に入るよう促す。
シェリーは緊張した様子もなく扉を開ける。
部屋の中は質素なものだった。いや、普通の部屋よりかは豪華なのだろうが先日、集められた部屋に比べると少し質素に感じる。
落ちついた雰囲気が出ている部屋なので個人的には好みなのではあるのだが。
「おぉ、参ったか。久しぶりであるな、シェリー王女」
「お久しぶりです、プロデス陛下。ご壮健の様で何よりです」
部屋の中央には会談用のテーブルがあって、そこに魔法大国マジカルゴ国王プロデス陛下がいた。強面で服の上からでもわかるぐらい筋肉隆々な体をしており、王様というよりも将軍と言われたほうがしっくりくる。眼光は鋭くそれだけで人を殺せるのではないだろうか。陛下のその隣にはもう一人いる。いかにも好青年といった顔立ちなのだが、どこか大人びた雰囲気をまとっている。
「そちらにいるのはそなたの妹君かな?」
プロデス陛下はクオリアに視線を向ける。
「はい。我が妹もようやく王族としての自覚を持ち始めたので今回の視察に連れてきました」
「ふむふむ、なるほど。妹君よ、名をなんと申す」
「第四王女のクオリア・ラインハルトです。この度はお世話になります」
「我の名はプロデス・カローネ。よくぞ参ったな、クオリア王女よ」
いきなり、こちらに話が向けられて緊張したがなんとかつっかえずに挨拶をすることが出来た。
「陛下、お隣にいるのはどなたでしょうか?」
「お主も会うのは初めてだったな。我の息子であるイリウスだ」
プロデス陛下が紹介すると、イリウスは口を開く。
「初めまして、ラインハルトの皆さま。私の名前はイリウス・カローネ。今後ともお付き合いがあるでしょうからどうぞよろしくお願いします」
イリウスはさわやかな笑顔を浮かべながら、挨拶をする。
「第三王女のシェリー・ラインハルトだ。よろしく頼む」
「第四王女のクオリア・ラインハルトです。よろしくお願いします」
「今までは国の中での仕事を中心に教えていたのだが、そろそろ見聞を広めた方がよいと思ってな。この場に呼んだのだ。いずれ国を支える者同士、仲良くやってくれるとありがたい。さて、立ち話もここまでにして席に着くといい」
席を勧めてくれたのでクオリアとシェリーは席に着く。
エリカとマリネットは私たちの後ろに立っている。
「今回は特段何か重要なことを話すわけではない。お互いに近況などを話して親睦を深めていくための集まりなのだ。だから妹君も緊張せずもう少し肩の力を抜くといい」
どうやら緊張しているのがバレていたらしく、陛下は笑いながら話しかけてくる。
そこからは本当に只々世間話をしただけだった。
今度、合同の軍事演習などを行おうとか晩餐会を開く予定なのでその時はまた是非来てくれとかそんな感じだ。
陛下も殿下も私が魔女の血縁者の話は伝わっているようだが特に気にした様子もなかった。
それどころか・・・
「お主の力は恐ろしいが味方としては頼もしいことだ。今後とも仲良くやろうではないか」
「あなたの闇魔法は素晴らしい。魔法師としてはとても羨ましい限りだ。ぜひ今度、その力を見せてほしい!」
こんなことまで言ってもらえるほどだ。
特に殿下の顔が急に幼くなったかのように感じられ、目がキラキラしている。
後に聞いた話だがイリウスはかなりの魔法好きでそれは国中の周知の事実だとか。
会談は実に二時間に及んだが特に何かあったわけではなくとても楽しい時間をおくれた。
次の日
「あぁ~、超眠い」
「昨日は夜遅くまで話してましたからね」
「クオリアの奴、すごく嬉しそうに話してるから聞いてたがまさか深夜三時まで続くとはな」
よほど普通に話せたことが嬉しかったのだろう。
(まぁ、村での反応を考えると当然と言えば当然なのかもしれないな)
マコトは眠気を払うように頬を叩き、気合を入れる。
「さて、今日もやりますか!」
そう言って、クラスの扉を開ける。
「おはよう、今日は昨日やったテストを返却するぞ」
みんな、いろんな反応をしている。その大半が自信にあるようで早く返してほしいと顔に書いてある。
数分後、クラスの雰囲気はどんよりしていた。
「なんでだぁー‼」
そんな中、バジルットが声を上げる。
「なんで俺が六十八点なんだよ!」
「なんでって、お前が答えを間違えたからだよ」
「納得がいかねぇ!お前、わざと点数低くしただろ!」
「んなことするわけねぇだろ」
マコトはため息をこぼす。
他の奴らも似たような点数なのか、なんでこんな低いの?と疑問符をうかべている。
「お前!普通にやれば八十はいくって言っただろ‼」
確かに言った。最後の方は答えられないように凝った問題を出したがそれ以外は授業を受けていれば取れるようなテストだ。
では、何故取れなかったのか。その理由は・・・
「だってお前ら、引っ掛け問題に見事に引っ掛かるんだもん」
そう、ちゃんと読めばすぐにわかるのに簡単と思ってよく問題読まずにやったのでクラスの点数は低いのだ。
「例えば、問一の魔道具の説明として間違ってないものを選べって言ってるのに間違ってるもの選ぶ奴多いし。問三の問題に関していえば術式魔法の炎の術式を書きなさいって言ってるのに半分以上が火の術式を書くって、引っ掛けでもないのに何で間違うんだよ」
その言葉にバジルットは声が出せなくなる。
「最後の問題の問一から問三は難しいから解けなくても仕方ないけど、それ以外は解けるような問題だぞ?」
クラスが一気に静かになる。問題を見返してケアレスミスが多いことに気づいたのだろう。
「まぁ、勝負は俺の勝ちだし残り時間よろしくな、バジルット」
「くっ・・・‼」
とても悔しそうな顔をしながらうつむいている。
自分の失敗でこうなっているのだから文句も言えないのだろう。
「しかし、まさか満点者が出るとはなぁ~。それも二人も」
そんなこと言うとクラスの奴らは誰が取ったのかわかっているのか納得したような顔をしている。
マコトは満点者の顔を見る。
一人は眼鏡をかけている男の子で、いかにも秀才といった感じがする。もう一人はおさげの髪型をした女の子で嬉しそうに笑っている。
「それじゃあ、授業を行うぞ。今日は今返したテストの問題について説明してやるから今度は間違った答えを書くんじゃないぞ」
授業を終えた後、他の先生の授業を見学していた。
そして、昼休みになったので職員室でご飯を食べているとミレイが寄ってきた。
「聞きましたよ、マコト先生。あのバジルット君を黙らすとかすごいじゃないですか!」
「彼は私たちも手を焼いた生徒だったので気分がすっきりしました」
とまぁ概ねこの様な内容だ。
バジルットは他の授業でも色々と言ったりしていたらしく、思ったよりも評価が高くなった。
「いや、大したことはして無いんですが・・・」
「いえいえ、とてもすごいことなんですからね!彼はそつなく何でもこなすタイプなので親御さんとか関係なく何も言えなくなるので、マコト先生はすごいです」
ミレイは身振り手振りでそのすごさを伝えようとしてくる。
「バジルット君を言い負かすとはすごいじゃないですか!」
そこに声が割り込んでくる。
「なかなかやりますね、僕の次に美しいと認めてやってもいいですよ」
「いや、別に認めなくていい」
「遠慮することはないですよ、美しいと僕に認められるなんて光栄なことなんですから」
「そう思っているのはあなただけですよ、シュバルツ先生。というか純粋にキモイです」
シュバルツ先生、この学院の魔法歴史学の担当で一言でいうとうざい。
美しいものが好きで美しい自分が特に好きだとか。花の香りがする香水をつけていて、においが甘ったるくてきつい。
「はぁ、全く。ミレイ先生にはなぜ僕の美しさが理解できないのか。病院行くことお勧めするよ」
「あなたこそ一度病院で頭見てもらった方がいいんじゃないんですか?」
「二人とも、今は食事中なんだ。もう少し静かにしたらどうなんだ」
「うるさいですよ、ゴリ先生。それ以上は僕の美しさが汚れてしまうので近づかないでいただきたい」
「誰がゴリだ!俺の名前はゴレイムだ!」
ゴレイム先生、魔法実技の担当で見た目がゴリラに似ていることからシュバルツ先生にゴリ先生と呼ばれているが本人はいつも文句を言っている。
「大体、あなたのどこが美しいのか理解できない」
「おおっとこれは、先生は目も悪いらしい。僕ほど美しい存在などいない。人は皆僕のことを"光輝く者"と呼ぶ」
「誰も呼ばねぇよ。というか美しさと関係ないだろ」
このようなやり取りをいつもやっている。
二日目にしてこの三人の人となりはよく理解できた。
「でもA組には結構優秀なのがいるんだな」
「む、というと誰ですかな?」
「眼鏡をかけたいかにも秀才って感じがする子とおさげの女の子。テストは難しくは作ってねぇけど、満点が出るようなテストでもないんだよな」
「あぁ、きっとステイン君とメアさんですね」
「ステイン君はなかなか優秀ですよ。座学でも実技でも常にトップ。将来は僕にも負けない美しい魔法師になりますよ」
「美しさは関係ないが、ここ十年で一番出来のいい生徒だ」
みんな褒めちぎる。そこまで優秀なのか。
「メアさんは座学は優秀なんですけどね・・・」
「魔法師としては使い物にはならないな」
「?なんでだ?」
対照的にメアって子の評価があまりよくない。
「そうですね、確か明日はゴリ先生の授業がありますし、見てみるといいですよ。すぐにわかりますから」
「だからゴリではない。まぁ、見てもらった方が早いですかね」
マコトは疑問符を浮かべた。




