3.魔法大国
それからあっという間に月日は経ち、今日は視察の出立日。
集合の二十分前に街の正門についたのにそこにはすでに準備を整えたシェリーとその護衛の騎士団がいた。
「お待たせしました」
「私たちが早すぎただけだ。問題ない」
シェリーはクオリアの後方に控えているマコトたちに目線を向ける。
「紹介しますね。今回の交換教師に出てくれるマコトとメイドのティナ」
「どーも」
「よ、よろしくお願いします!」
「シェリー・ラインハルトだ。いつもクオリアが世話になっている」
シェリーとマコトは握手を交わす。
「こっちは聖姫騎士団副団長のマリネットだ」
「此度の護衛の指揮を執っています。マリネットです。以後お見知りおきを」
「よろしくね」
マリネット。王国騎士団と聖姫騎士団の両方の副団長をやっていて、その弓の腕は各国にも名がとどろくほどで"神弓"の異名を持つ。
聖姫騎士団はシェリーの直属の部隊だけど、名目上は王国騎士団副団長マリネットとなっている。
シェリーと並んでも負けないぐらい凛々しい感じの美女で、幾度となく求婚を受けているそうだが全部断っているらしい。
「それでは全員そろったことなので、さっそく出発しよう」
馬車にはシェリーとクオリア、それと護衛としてエリカとマリネットが乗った。
四人までしか乗れないので、マコトとティナには御者台に座ってもらうことになる。
今日は外に出るにはとても気持ちのいい天気だったので馬車の窓を開けて、クオリアは身を乗り出していた。
「クオリア、あまり出すぎるな。馬車から落ちても知らないぞ」
「もう、お姉さま!子供ではないからそんな心配しなくても大丈夫です!」
頬を膨らまし文句をいうとシェリーは苦笑していた。
「君は昔からお転婆だったからな。つい、心配したくなるのだ」
(そんなにお転婆だっただろうか。少し落ち着きのない子供だった自覚はあるがお転婆と言われるほどでもない気がする)
「エリカとも会うのは久しぶりだな。いつもクオリアの世話してくれて、ありがとう」
「いえ、私がしたいからしているだけですのでお礼を言われるほどではございません」
「それでも言わせてくれ。今日までクオリアのことを支えてくれてありがとう。これからもよろしく頼む」
シェリーはエリカの目を真っすぐ見て言った。エリカもその視線を受け止め「かしこまりました」と返していた。
「あなたが・・・エリカさんですか?」
話がひと段落すると今度はマリネットがエリカに話しかけた。
「はい、そうですが」
「噂はヴァイオス団長から聞いています。剣の達人で騎士団に入ってくれなかったことが悔やまれるとおしゃっていました」
「ヴァイオス様にそういってもらえると恐縮です。しかし、私はお嬢様に救われた身。この剣はお嬢様に捧げていますので」
真顔でそう言ってもらえるとクオリアとしてはちょっと恥ずかしいのだが、エリカはそんなこと気にしてないようで平然としている。
マリネットは主に忠誠を誓う身であると同時に女の武人といったところにシンパシーを感じているのかエリカに話しかけていた。
エリカもまた同じことを感じているのかいつもよりも話が弾んでいて楽しそうにしている。
クオリアに対しても魔女として偏見などは持っておらず、普通に話してくれる。
王宮で見かけたことしかなかったので少しお堅い人なのかと思っていたが話してみると気さくな人だった。
もちろん、騎士として一線を引いてはいるが会話をしてくれる人なんて中々いないのでとても楽しかった。
「そういえば、クオリア。一つ聞きたいのだが、いいか?」
談笑が一段落するとシェリーは真面目な顔つきに戻り聞いてきた。
「何ですか?」
「今回の交換教師に君のところの人物を出したわけなんだが、大丈夫なのか?」
「大丈夫とは?」
「教師としてだ。彼は人に教えるだけの知識を持っているのか?」
「あぁ、それなら大丈夫よ。昨日、魔法理論に魔法工学、歴史に法律、言語学に数学と魔法の問題や一般の問題も出してみたけどすべて全問正解!すごいでしょ!」
「ほぅ、それはすごいな」
普段、表情を変えないシェリーもクオリアの言葉には少なからず驚いていた。
あまりにも全問正解が多かったのでこちらも意地になって一教員が答えられないような問題も出してみたがそれも正解されてしまった。
それどころか問題文の記述が間違っていると指摘を受けてしまうほどだ。
「それならば、問題はなさそうだな。教師だと話を聞いただけなので不安ではあったがいらぬ心配だったか」
「えぇ、マコトなら大丈夫よ!」
マコトが認められて自分のことのようにうれしくなり、ここまでのマコトに助けてもらったことなど話始めた。
一方、御者台に座っているマコトはというと・・・
(全部『全知』のおかげだけどな!)
もはやカンニングと言っても過言ではない方法で回答している。
そのせいでクオリアたちの評価は一段と上がり、憂鬱な気持ちになる。
(大丈夫かなぁ~・・・俺)
先のことを考えてマコトはまた一つため息をついた。
馬車を使って約三日。天気に恵まれたおかげで途中で立ち往生なんてことはなく無事に魔法大国マジカルゴに着くことが出来た。
そして、ついてすぐにマコトとティナは驚かざるおえなかった。
街の中では人が飛んでいるのだ。
箒に絨毯、羽根が生えている者もいれば中には身一つで飛んでいる奴もいる。
ラインハルトでは見れない光景だ。
「す、すげぇ~」
「あっち見てもこっち見ても人が飛んでます!それになんか土に塊が街の中を歩いているんですけど!」
「あれは土魔法の一種。創造魔法よ。マジカルゴでは創造魔法で作ったゴーレムを貸し出して荷物運びさせているの」
マコトたちが驚いていると窓から顔を出しているクオリアが説明してくれた。
「この国では市民の生活に魔法は浸透していて生活するうえで魔法とはなくてはならないものなのだ」
「この地域は特にマナにあふれている場所でして、ここが魔法大国と呼ばれるのもそういった理由もあるのです」
マナがあふれている分、魔法を使うのにはうってつけというわけだ。
『識別』で調べてみるとラインハルトに比べてマナの濃度が数倍濃い。ここなら、魔道具の魔力も置いているだけで自然に溜まっていくし、魔法使用者が魔力を使いすぎても回復するのも早いだろう。
「とりあえず、城に向かうとしよう。この国の王をあまり待たせるわけには行かないからな」
観光してみたい気持ちはあるがどうせ三週間もここにいるのだ。いくらでも時間はあるだろう。
馬を動かして、街の中央にそびえたってる城に向かった。




