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異世界だろうが教師の在り方は変わらない  作者: 物語 紡
2時間目 ラインハルト王国
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8.作戦の全貌

 レオンは抜剣しつつ歩を進め、敵を注視する。

(かなり大柄で筋肉がついてるからパワーはかなりありそう。でも、その分、体は重いだろうし小柄な僕の方が機動力の面では上のはず。・・・まぁ、それも向こうが魔法を使えれば僕の利点は消えるんだけど)

 相手の間合いを図りつつ、レオンは自分と相手を比べて冷静に分析をしていく。

(相手は大太刀だから間合いは僕よりも広い。だけど、あれだけ大きい得物だ。懐に入り込めれば僕にも勝機はある!)

 レオンとヘビーの間に静寂な空気が訪れる。



   ダンッ‼

 最初はヘビーの方から仕掛けてきた。力強い踏み込むでレオンとの間合いを詰めて横なぎに一閃してくる。

 それをレオンは落ち着いてバックステップでかわす。ヘビーその動きにしっかり反応してついてきて、剣をふるってくる。



 (右、左、右、上、突き。袈裟切り・・・からの切り上げ!)

 敵は無駄のない動きでレオンとの間合いを詰めつつかといって詰めすぎて攻撃しずらいことが無く、絶妙な間合いを保ちながら攻撃を繰り出していき、それらを紙一重でかわしていく。剣閃による風が頬をなでるたびに冷や汗がどっと沸いてくる。

 こちらの動きについてきているところを考えるに、向こうは身体強化の魔法を使っているのだろう。教官の比べて練度が劣っているためか、何とか回避は間に合っている。

(しかし、このまま防戦一方ではいずれ敵の攻撃を食らってしまう。どうにかしないと!)

 


 レオンは攻撃のチャンスがなく焦っていたが、敵も同じ心境にあった。

(なんで、攻撃が当たらないんだ!?)

 ヘビーにとって、戦いとは常に力対力の勝負であり、力で負けたことなどなくそれを自信にしてきた。

 たとえ、すばしっこい奴でも何撃目かには攻撃が当たり決着はすぐについていた。なので、ここまで攻撃をかわし切られたのは初めての経験だった。

 攻撃が当たらないことに焦れたヘビーは大上段から攻撃をした。

 しかし、その行動は愚策だった。

 振り上げるのを確認したレオンは今までサイドステップやバックステップを巧みに利用して回避していたのにその場で攻撃を受け止める構えを見せた。



(馬鹿な奴め!そのまま剣ごとつぶれろぉぉぉ!)

 攻撃は剣を叩きおり、そのままレオンの脳天に叩き込まれる光景を目に浮かべた。

 しかし、剣と剣がぶつかり合う瞬間に剣を斜めにそらして、攻撃を流した。

 そのせいで、体制が崩れ、隙が生じた。

 レオンはがら空きになった胴体に全力で攻撃を叩き込む。


「"流水剣"!」


 がら空きになった胴体に渾身の一撃を叩き込まれたことでヘビーは膝をつきながら苦しんでいる。

 剣の腹で攻撃したが、感触からいって骨が折れたのは間違いない。

「降伏してください。そうすれば、命は助けます」

 レオンは油断なく相手との距離を詰めながら、降伏を勧める。


「"火炎球(ファイヤーボール)"」


 突如、横から火の玉が飛んできてたので慌てて回避する。

「全く。用心棒として雇ったのに使えない奴だ」

 魔法を放ってきたのは奴隷商人である。

「おいおい、人様の勝負に横やり入れるとは性根が腐ってんじゃねぇのか?」

「誰も一対一で勝負するなど言った覚えがないが?それにこれは戦い。模擬戦じゃあるまいし、横やりを入れて何が悪い」

 そう言って、商人は懐から注射器の取り出しヘビーの首筋に刺した。



「あぁぁぁぁ~~~~~!?なんだ、これ!?体が、熱い!溶ける!」

「騒ぐな、みっともない。なぁに、ただの薬だ。ただし、裏マーケットに売っている特別製のな」

 ヘビーは苦しみ悶え、その場で倒れもがいていた。

 突然のこと過ぎてレオンもマコトも仮面の二人も動けなかった。

 どのくらいたったのかは不明だが突如として動きが止まったかと思うと、ヘビーはゆっくりと起き上がり始めた。



 その目には生気がなく、意識があるのか判別しずらかった。しかし、異様な雰囲気があり、警戒せずにはいられなかった。

 ヘビーは右足に重心をかけたかと思うと一瞬で目の前に現れた。

 驚きで体が硬直した僕に顔面目掛けて拳が飛んできた。レオンはそれをなすすべもなく食らってしまう。



「レオン!」

 マコトが叫んでいたが、どこか遠くから聞こえてくる感じがしてレオンの耳に入らなかった。

 痛みに耐えつつ立ち上がり敵を見ると、驚いたことに剣を持っておらず殴った姿勢で固まっていた。

 敵の剣は先ほど苦しんでいたところに転がっている。

 レオンが起き上がったのを確認すると、ヘビーは再び間合いを詰めてきた。



 先ほどよりも速く鋭い攻撃を何とか躱していく。

 回避を繰り返してたが、さっきよりも速く、また意識が飛んでいるため視線などから攻撃を読みことができなかったため、行動が遅れてしまい腹に思いっきり攻撃を受けてしまった。

「がはっ!」

 思いっきり壁に吹き飛ばされ、壁に激突した。

 意識がとびかけるなか、レオンはマコトの言葉を思い出していた。



『必殺技ですか?』

『そうだ。起死回生の攻撃って考えてもいい』

 マコトは腕を組みながら疑問に答えてく。

『まぁ、そんな大仰なものは考えなくていい。要は自分の得意な型を鍛えればいいんだ。たった一つでも、自信が持てるものがあればそれだけで奮い立つことができるだろう?』



 飛びかける意識を何とかつなぎ止め、ふらつきながらも立ち上がる。

(何とかあの技を叩き込めば勝機は見えるはず!)

 レオンは大きく剣を振りかぶってその姿勢で止まる。

(勝負は一瞬。外せば敵の攻撃をもろに食らって、命はない!)

 ヘビーはまだ倒れてないのを認識すると重心を前にかけた。



「ぐわぁぁぁぁ‼」

「うぉぉぉぉぉ‼」

 超スピードでヘビーが迫ってくる。

 敵の攻撃が届くよりも早く、剣を振り切る。


「"斬鉄剣"‼」


 顔面に全力の一撃を叩き込まれたヘビーはその場で崩れ落ちた。

 剣を背中に収めると張りつめていた糸が切れてしまったのかその場に倒れた。

 否、倒れそうだった。

 倒れる前にマコトが腕で支えたので倒れることはなかった。



「先生。やりましたよ・・・」

「あぁ、お疲れ。見事な戦いっぷりだった」

 マコトは優しく微笑むとレオンを犬の仮面に預けた。

「悪いけど、少し頼んでもいいか?」

「構いませんが・・・あなたは?」

 マコトは質問には答えず、奴隷商人のほうに歩み寄っていく。



「馬鹿な・・・馬鹿な馬鹿な馬鹿な!ヘビーがやられたというのか?薬で増強したにも関わらず、負けたのか?」

 奴隷商人は負けたことを受け入れられず呆然としている。

「おい」

「ひぃぃ!」

 マコトが声をかけると、おびえた表情をしながら後ずさりしていた。



「お、俺に手を出せばどうなるかわかってんだろうな!」

 その言葉にマコトやレオン、仮面の二人は呆れた表情を出していた。(仮面の二人は表情をよめないが多分マコトたちと同じ表情をしていると思う)

「手を出す気はねぇよ。最初に言ったろ、隷属魔法を解除しろって」

 その言葉に商人はもちろん、レオンたちも驚いている。

「解除さえしてくれれば命は助けてやる。言っとくけど、お前に選択肢があると思うなよ」

「わ、わかった。解除する!」

 そう言って、商人は何事かを唱え始めた。多分、解除魔法だろう。



「これで魔法は解除した。もう、逃げていいんだよな?な?」

「あぁ、いいよ。どこへでも好きに行くといい」

 奴隷商人は一目散にマコトたちが来た道とは反対側に出ていった。

「ほら、俺たちも奴隷たちを助けに行くぞ」

 マコトはレオンを背負いながら何事もなかったように来た道を戻ろうとしている。



「ねぇ、いいの?あの人見逃して。絶対にまた悪さすると思うんだけど・・・」

「そうですね、あなたの行動は不可解です。奴はここで捕らえるべきです」

 仮面の二人はそれぞれ意見を言う。それに対して、マコトは鼻を鳴らしながら

「見逃す~?何言ってんだ、てめぇら。俺は一度もそんなことを言った覚えはないぞ?」



「はぁ、はぁ」

 商人は汗でびっしょりにしながら走っていた。

(くそ、くそ、くそ!なんなんだあいつらは。ここまでの苦労がすべて水の泡だ!)

 人々が奇異な視線を送っているが、そんなものは気にならなかった。

(だが、まぁいい。あの甘ちゃん、わざわざ見逃してくれたんだ。いつか絶対に復讐してやる!俺を逃がしたことを後悔させてやる!)

 ぜぇぜぇと息をしながら目的の場所に走っていく。

(この先に馬小屋があったはずだ。金はたんまりあるんだし、これで国外に逃亡して一からやり直す。俺の人脈と腕があればいくらでも立て直しがきく)

 そして、角を曲がり目的の場所にたどり着くとそこには騎士団がいた。

「騎士団団長のヴァイオスと申します。実は匿名の通報がありましてね?ここの馬小屋に汗だくで走ってくる太った奴隷商人が来ると言ってまして、少しお話を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」

 物腰は柔らかいが、その言葉には拒否が許されない威圧感があった。

 奴隷商人は膝から崩れ落ちた。



「命を助けてやるとは言ったが、見逃してやるとは言ってないからな。せいぜい牢屋の中で反省するんだな。はっはっはっは」

 マコトは笑いながら、そんなことを言っていた。

 まさか、騎士団を先回りさせていたなんて。

「そうじゃなきゃ、わざわざ正面から突入するわけないだろ?」

 その言葉にレオンたちは耳を疑った。



「馬小屋は北門と南門のそれぞれ一か所ずつある。突入したのは北門方面だから、俺たちから逃げて一番近いのは南門の方だからな。間違いなくあいつは国から逃亡すると思ったよ」

「でも、それならここで捕まえても一緒じゃないの?」

「アホか、俺やお前らならまだしもレオンに迷惑がかかるだろうが」

 仮にあの場で奴隷商人を捕まえていたら、ほぼ間違いなく色々と言われることだろう。

「それよりも、俺としてはお前らの本当の目的を知りたいんだがね」

 マコトはウサギの仮面を見ながら言う。



「なぁ、第四王女様よ」

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