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カラフル軍記  作者: ノイズa.k.a.天谷川
秘密警察『B3』編
9/65

九話

 もっとまともな話書け、なんてカレーを不味く作れと言われているのと同じだ

 「あぁー暇だ」

 


ニシキは誰にも聞こえぬ程度の小声でそう呟く。が、むしろ状況はその真逆だった。今日は新人の入隊手続きを手短に済ませて後は休日を楽しもうと考えていたのに何故か軍の偉い方々の会議に捕まってしまったのだ。


元来秘密警察『B3』は独立した戦力と機動力は勿論、基本的には他部署からの干渉を作戦以外では受けない機関である、これはニシキがかつては断絶した特高制度を復活させるにあたり提案した条件でもあった。だのにどうだろう、今自分は次の作戦会議に参加させられてる。分厚い書類を読まされ、面倒な用語や

何かが飛び交っているうちに眠気が―――

 


 「ニシキ君、生きているかい?」

 「んっ? あぁスマンスマン続けてくれ」



 うたた寝の中の自分の意識を引き戻したのはニシキから見て右隣の上座に座る装飾の凝った中華服の男のテノールヴォイスだった、やたらめった方々に伸び放題の長髪白髪のカツラとサンバイザーが一体化した様な仮面に素顔を隠しており表情はうかがえない。



 「ゴメンよ夜勤明けにいきなり召集かけちゃって」

 「全くだぜ、休日出勤とか勘弁だよ神虎シェン・フーさんよー」



軽く悪態をつくニシキに周囲の者は突っかかる。



 「ニシキっ! 軍師殿に失礼だぞ!」



 突っかかったのは帝国警備隊長のサコンだった、深く皺の刻まれた顔に怒りの表情を蓄えて怒鳴って来る。



 「んっだよ、実際俺が夜勤明けなのも警備隊おまえたちが何時までも人狼や山賊に手こずっているのに秘密警察おれらが処理してやって来たからじゃねえか」

 「貴様っ・・・」

 「お前らが警備隊としての職務を放棄して俺等に人狼の対応を任せたんだから煮るなり焼くなり俺達の自由じゃねえか。それが言うに事欠いて俺に説教かぁ?」



 職務放棄は言い方に語弊がある、人狼という手ごわい敵の前に身柄の捕縛を難しいと判断した警備隊は生死は問わない事を条件にニシキ率いる秘密警察『B3』に対応を託したののだった。結果として元人狼のチタンの身柄はニシキの預かりとなり現在に至る。



 「まぁニシキ君、サコン君にも立場があるしさ。その元人狼の身柄をニシキ君が預かるっってことで決まったし、今身内で揉めてないで一ヶ月後の山賊討伐の最終作戦の会議を続けようじゃないか」



 神虎の一声で会議は一先ず静寂を取り戻した、神虎は続ける。



 「今回の作戦は昨日の戦闘でほぼ壊滅した帝国近郊の森に残存する山賊勢力の完全殲滅を目的としています。戦闘の主力はニシキ君率いる秘密警察『B3』部隊です、サコンさんの警備隊は逃げ出した山賊の捕縛をお願いします」

 「あいよ」

 「分かりました」



 反対こそしないが不満の口調だった。ニシキの下に付くのがやはり不服らしい。もし自分がサコンと同じ立場で年下の人物に付けと言われたらまぁ不満を抱くだろう。



 「あのさ神虎さん、俺ちょっと帰って部下と細かい作戦立てたいんで詰所で作戦練って来てもイイですか?」



 ぶっきら棒に言うニシキに対して神虎は温厚な声色で答える。



「いいですよ、情報の露見は防ぎたいですもんね。じゃあ明後日また会議で」

 「へーい」



 他の者の刺さる様な目線も介さずニシキは部屋を後にした。






 「うーん違う」

 「違いますか・・・」



 入店してから三十分と言うもの試着を狂ったように繰り返してはランの納得のいくまで試行錯誤をしていた。チタンとしては服選びより二、三時間走り続ける方がまだ楽な気がした。その様子を何処か面白げにみ見ていたドグマはランに問いかける。



 「ラン、もうそろそろ解放してやらないとぶっ倒れるぞ? 見ろあのやつれた顔を」

 「そうは言ってもねぇ・・・中々難しいのですよ・・・」

 「まぁ見りゃ分かるがよ」



 ランは両手に様々な服を持ちかえて品定めをする。待っているだけでは状況を打開できないと判断したチタンはとりあえず目に付いた服を手にしてみて言った。



 「あー、コレとか俺中々気に入りましたけどね」



 「それぇ?」



 チタンが手にしたのは非常にラフなものだった、ポケットが多いカーキ色の半ズボンに素材が丈夫そうな袖に模様の入った黒いポロシャツ、今着ている私服と大して変わらず捻りのない組み合わせにランと店長の評価が厳しいのは想像に難くない。



 「んー、年相応という点では合っていると思いますけれどオシャレとは少し離れていますねぇ・・・」

 「ガタイが良いからいっそのこと露出が多い奴とかもイイですね」



 再び専門的な議論が始まったのでドグマが助立ちする。



 「おいチタン、此処でお前がビシッと言わなきゃ終わらないぞ・・・」

 「う・・・やってみます・・・」



 チタンはランに向き返って言う。 



 「ラン先輩っ俺これがイイです!」

 「え」

 「ハイ、俺には下手にオシャレなモノよりもこんなシンプルイズべストな服が好きですね」



 『これで良い』で無く『これが良い』、前向きな言葉でとりあえず纏めた。金を出してもらう立場だが正直な話もう服の試着に疲れてしまったチタンにとっては最後の策だった。心の声をぶち撒けたところランと店長に妥協策が生まれたのかその服と色違い、寝巻諸々を購入したことでチタンとドグマは解放を得たのだった。ランが会計を済ませている間にドグマが「よくやった・・・」と耳打ちして来て初めて先輩に認められた手柄が買い物なんて何処か情けないチタンだったが先輩たちと距離が少しでも縮められた、そんな気がするのだった。





「よっしゃああ! 俺の勝ちだぜぇ!」

 「子供かよ・・・はぁ、副隊長おまえは・・・ぜぇ・・・」



 ラン達が入った服屋から道を挟んで喫茶店のテラス席でフールとフィアーは三十分近く腕相撲に興じていた。時間が経つごとにギャラリーは増えていき先ほど十勝九敗でフィアーが勝利を収めたのだ。その光景を店内の席からガラス越しに観戦していたチープには気付いてない。



 「っしゃあああ! これが副隊長の力だ! 思い知ったか! 戦闘員!」

 「あー負けました、御見それしましたー」



 息を整えながら言葉を投げ合う二人の周りにはどちらが勝つかで賭けていた連中が一喜一憂しており勝った方のフィアーに暑苦しい熱気の冷めきらない野郎が寄って取り巻きをしていた。



 「お疲れ様です! コレどーぞ!」

 「おう、サンキュウな」



 差し出された水を飲み干す。タイミングを見計らって出されたタオルで汗を拭う。今日散々自分を小馬鹿にしていたフールに一矢報いた愉悦に浸るべくフールの方を見ると。



 「あっ! テメぇ!」



 息を切らしているフールの周りにはカフェの可愛い女性店員が心配そうに群がっており自分よりも手厚い労いを受けていた。自分は水だったのにフールはアイスティーだった。



 「大丈夫ですか? フールさん?」

 「ああお陰で楽になったよ、有難う」

 「そんな・・・」



 フールの述べた感謝の言葉に女性店員は恍惚とした。その姿を他の店員は羨望の様子で見つめている。勝ちだけにこだわって何かを見失っていた自分は完全に敗北したと悟った。落ち込むフィアーの事もよそに勝負中も起らなかった更なる黄色い歓声が起きた、その方向を見ると―――



 「隊長!」

 「よぉフィアー何か落ち込んでるみてぇだな」



 何時到着したのか、そもそも行き先をメモに書いた覚えはないのでどうして此処に自分たちが居ると分かったのだろうという疑問で疲れと劣等感は薄らいだ。フールの取り巻きを自分の方に手繰り寄せながらニシキは尋ねる。



 「ランとドグマは何処だ? 近くにいるといいんだが」

 「あの服屋です」 

 「うお!? チープ何時の間に!?」



 ニシキの姿を見かけて出てきたであろうチープの突然の登場にその場のほぼ全員が驚きを示した。指さす方向からは調度ラン、ドグマ、チタンが出てきたので三人を率いてニシキはカフェを後にした、さりげなく女性店員と呑みの約束を取り付けている辺り抜け目が無い。



 「あ、隊長。何時こちらに?」 

 「さっきだよ、さてお前ら早く帰ってチタンの入隊祝いすんぞー。もう材料買ってあるから」

 「おっ、腕が鳴りますねぇ」



 ドグマが意気揚々と尋ねてくる。



 「なぁチタン、お前主役だからな、好きなモノ何でも作ってやるぞ?」

 「えぇーと、ボリュームあれば・・・」

 「何それ隊長と同じ事言ってる」



 ランのツッコミに一行は笑いに包まれる。

 「まぁいいさ、帰りながら考えようや」

 その一言を合図に秘密警察『B3』は帰路についた。詰所を出た頃は昼間だったがもう既に日が遥かかなたの砦に隠れかけており風を負った旅鴉が夕焼けぞらの中を夕日に向かって飛んでいた。







秘密警察『B3』隊長・ニシキ(39)

 (vc・細谷佳正)

  AB型

 194センチ

 125キログラム

 好きな食べ物・食べ物

 嫌いなモノ・熱すぎるカレー

 武器名『ワイルドハント』



 ・銀髪モヒカンの39歳、初対面の人間には絶対二十代に間違われる。彼女募集中の独身、腹筋が十個あったり、握力が推定五百キロあったりかなりの化け物スペック。部下に料理作ることもある。同じトレーニングメニューをこなしたりして部下の立場に立ってあげられる、ドラゴン、エルフと共に称される空想上の生き物の理想の上司として名高い。出自経歴は部下でも知らない部分が多く、ある日突然青軍(青の帝国直属の軍隊)の将軍の前に現れて敵将の首を持って『仲間に入れてくれよ』と半ば強引に加入して十五年前の事件以降廃絶されていた特高制度を復活させて自らそこの長として就任した。仕事は出来るが何かと軍の古株や同僚に知らない間に妬まれていたりするがあまり気にしていない。武器は上下左右非対称に取っ手が付いた棍棒のワイルドハント。






 秘密警察『B3』副隊長・フィアー(20)

  (VC・浅沼晋太郎)

   191センチ

   92キログラム

  好きな食べ物・乳製品

  嫌いなモノ・貸した本の帯を捨てる輩

 武器名『ジョー・アーギャー』



・元々は青の帝国から見て南方にある橙連邦の王家に仕える最も位の高い神官の家の長男で幼いころから評判も良く優秀だったが、13歳の時に国主の娘に惚れられて戒律を破ってしまいお家騒動を引き起こしてしまい国外追放を受けてしまい放浪の旅の中で弱肉強食の世界を学び盗賊相手に金品を奪う義賊として活躍しているところをニシキにスカウトされ帝国軍人に出世する。お家騒動の思い出はトラウマなのと潔癖なのが重なり女性と中々一線を越えられないので周りから童貞キャラでいじられている。よくフールと下らない事で子供の口げんかの様な事に発展する。武器の大鎌はかつて家が王家から賜って家宝にしていた代物で家を追われるときにむしゃくしゃして盗み出した。風呂と就寝以外はバンダナを被っておりチープとキャラが被っていると同僚から批判が来ているが幼いころから被っているのでやめるにやめられない。口調が少々荒いのは昔の自分を完全に否定して忘れる為。

 

 少なくとも、「俺って才能あるかも」なんて大それた勘違いをしていなきゃ小説書き続けることなんて出来ない

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