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カラフル軍記  作者: ノイズa.k.a.天谷川
秘密警察『B3』編
4/65

四話

 世の中に要らない物、戦争、貧困、小学校時代書いた小説

 暗く湿った洞窟は松明の光が乱反射して複雑な暗眀を生み出してた。人狼の持つ松明は五メートル先を照らしていたがその先に人の気配がした瞬間本能的に歩みが止まる、覆面をとり瞬きを数回する。人数こそ少ないが近づきたくないという気持ちになった。味方ならいいが敵だったら御免である、出口で待ち失せしている帝国警備隊という可能性が大きい、自分よりも先に到着した仲間であってほしいと願いつつ歩き始める。

 


 「はぁ・・・もうヤンなっちゃうぜ・・・」



 小声でぼやきながら進んでいると。

 


 「うわぁああ!」

 「え?」

 


 突如として必死の形相でオシドリが出現した。呆気にとられていると更に後ろに大きな影が現れてオシドリを一瞬の内に鋭利な棒状の何かで腹部を貫いた。鮮血が辺り一面に撒き散らされてオシドリの苦痛に苛む声が木霊する、わずか数秒の間の出来事に人狼は困惑を極めた。オシドリを貫いた誰かは血を払いのた打ち回るオシドリにに向き直り言い放った。

 


 「テメーの為に戦ってた仲間を置いて逃げやがって、この屑が・・・」

 「まっ、待て・・・」

 「待たん」

 


 言い捨てるととどめを躊躇いなく止めを刺した。オシドリは動かなくなる。この場が静かになって気付いたがもっと奥ではオシドリの部下が戦っているらしいが全滅も時間の問題だろう。突然人狼と男に目が合う。



 「お前、コレの仲間か?」

 「え」



  男が三、四歩近づいた事で顔が初めて見えた。180センチは優に超える身長、ガタイはかなり如何にも格闘家という筋肉つくりだった、短く切り揃えられた頭髪、顔は傷だらけで鼻に真横一文時に一本、右顎から右頬にかけて一本、左の頬に一本、瞳は翡翠色らしい。素肌の上から軍服と思わしき上着を着ているが除く素肌は何処にも刀傷、銃痕、縫合後が目立ち腹筋に集中している傷が歴戦の戦士感を醸している。右手の長槍を人狼に向けて再び言い放つ。

 


 「何者だ? 答えなければ始末する」

 「あぁ面倒だ・・・この状況で敵じゃないんなら何だってんだ・・・!?」

 


 人狼はやや投げやりに吐き捨て愛刀『陣風』を構える、薄々感じているが、多分本当である可能性が大きいがこの長槍男は自分よりも遥かに強い。今まで戦ってきた誰よりも。今までかいた事のない冷や汗が人狼に気持ち悪く滴る。

 


 「お前、まだ子供だろ?」

 「関係ないね」

 


 この短いやり取りで男の目つきと空気が変わった、獅子が得物を見定めた様な・・・。

 


「じゃあ遠慮はしないぞ」



 男はそう言って長槍を正面に突き出す構えに直す、足を大きく開いたその構えには無言の威圧感があった。もう後には弾く事の状況になった人狼は覚悟を決めて構える。が、先に構えた男が意外な事を言った。



 「お前さん、名前は?」 

 「はぁ?」 

 


 スポーツマンシップなんぞ持ち出して来やがった、と人狼は困惑する。それまで厳つい印象だったこの男が急に騎士道を重んじる紳士に見えてきた。気の緩みか、安堵か、よく分からないが人狼はこの紳士の言葉に乗っかるべきか迷った。

 


 「人狼だよ、俺は」

 「違う、お前みたいに逃げずに立ち向かおうと言う男の名を俺は聞きたいんだ」

 「っ・・・!」

 


 この男、馬鹿じゃないか? という罵倒文句が人狼の頭をよぎぎった。が久しくこんな強敵に出会い何時からか忘れていたこの『強者と戦いたい』という初めて武術を習った日の事を思い出した。考えがまとまった結果口から出た言葉は―――

 


 「チタン」

 「は?」

 「チタン、俺の名だよ」

 「そうか―――」



 男は爽やかに応える。



 「俺は秘密警察『B3』の戦闘員フールだ」

 「どうも、フールさん」

 


 二人は沈黙の到来を待たなかった、自分の持ち味で短期決戦に持ち込む作戦の人狼改めチタンは好スタートで攻める。フールは右手を前に出して構えているのと長槍で狭い洞窟内でやりを振り回しにくい事を読んで左に回り込み突きを繰り出す。が、実力者でぶれず瞬きすらしないフールをチタンは見逃さなかった。次繰り出されるのは獲物を捨てての肉弾戦が妥当だろうとチタンは踏んだ、がしかし。



 「捕まえるぞ」

 「は?」



 フールのとった行動は今までチタンにとって未体験の行為だった。フールは左手を槍から離して大きく回して突きだされた陣風の刀身を鷲頭掴み向き直る。

 


 「はぁあ!?」

 「捕まえたぞ、チタン」

 


速攻で、陣風を引き抜こうとしたが相手の握力が桁外れなのか、カラクリは分からないが刀が左手から抜けない事に衝撃と新種の恐怖を覚えた。



  「はああぁぁあ!」

 


 フールの雄たけびでようやく現実に戻ったチタンは自分に飛んでくる槍に気付き間一髪でかわす、頬に掠めた、否、抉られたと形容した方がいいだろう、左の頬からどくどくと鮮血があふれ出た。的を外した槍は岩壁に深く突き刺さっている。このフールという男と戦い始めてから驚かされっ放しと感心する暇もなく次の攻撃が飛び出る。今度は反応が遅れた。

 


 「ゲハァあああっ!」

 


 振り回された後の鉄球の様に重い右ボディブローがチタンの鳩尾に深くめり込んだ。今まで喰らったどの攻撃よりも重く、痛く、強く、深く、類を見なかった攻撃だった。鍛えられた自分の腹筋がまるで歯が立たない。『あっ、負けた』とこの文字がチタンの脳裏をよぎる。

 


 「おっ、気絶しないのか」

 


 状況に似つかわしくない軽快な言葉が出てきた、強者の余裕だろうか。

 


 「かっ・・・ぐおぉおお!」

 


 敵を目の前にしてこの攻撃はチタンに膝をつかせた。内臓を大きく揺らされたのか、骨にひびが入ったか血が食道を逆流しているのが分かる、口内に血の味と風味が充満する。息も吸えないらしい。

 


「どーしたぁ? おしまいか?」



 どういうつもりかは知らないがフールは追い打ちをかけない、これは不幸中の幸いだった。残りの力を振り絞りチタンは立ち上がった。ふらふらしながら再び陣風を構える。その雄姿にフールは二ヤリとほほ笑み槍を抜く。

 


 「久しく見るつわものだお前は」

 「う・・・ぶっと・・・ばしてや、る・・・」

 


 チタンは最後の力でフールに斬りかかる―――が元々疲れ切った満身創痍だったチタンは先ほどの一撃ですでに力を使いきったらしくそのまま倒れ気絶した。拍子抜け過ぎる幕引きにフールは驚く。

 


 「えぇー・・・」

 「おいフール、何ボケーっとしてんだよ。ん? そのぶっ倒れてる小僧は?」

 「あっ隊長、いや山賊の残党ですが・・・」

 


 フールはそれまでのいきさつを隊長なる人物に話した。かくかくしかじか話し終えたら隊長なる人物は頷き言った。

 「この小僧、俺が鍛えよう」

 

 苦難の末、片目で寝る技を身に付けた

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