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画面の中の彼女と画面の外の彼女  作者: 勝田瑠依
第1章 2次元と3次元
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フィクションとリアルの差ー③

 

 夕食を終え、宿に戻る。

 「おふとーんっ!」

 部屋に入るや否や、手提げ鞄を手放してベッドにダイブするレミア。

 「危ないぞ……」

 智也が手放された鞄を拾って手渡すと、彼女はベッドから上半身だけを起こし、それを笑顔で受け取った。

 「おにいちゃんもやってみるといいよ。結構気持ちいいよ?」

 「いや、俺はさすがにそういう年齢じゃ……」

 そう呟くと、レミアは頬を膨らませた。

 結構可愛い。

 「むー。私がお子様だって言うの?」

 「さあな」

 可愛い顔を見せてくれたお礼代わりに頭をポンポンと軽く叩く。しかし彼の気持ちは伝わらず、かえってその行為が更に彼女を拗ねらせた。

 「ふんっ!いいもんっ!お子様ですよーだ!」

 プリプリと怒って立ち上がった。

 勘違いされてしまったことに気づいた智也は慌てて謝った。しかし聞く耳を持ってはくれず、お風呂っ! と言い残し、先ほど放り投げられた手提げ鞄を持ってバスルームに行ってしまった。

 「あーあー、初日からやっちゃったね、こりゃ」

 彼の脳にセイラの声が響く。さすがのセイラでも、今回ばかりは彼に同情してくれているようだ。

 「はぁ……」

 どうすればレミアが機嫌を直してくれるのか分からず、途方に暮れる智也。

 「まあ、今回ばっかりはしょうがないんじゃないの?あんたに悪気はなかったんでしょ?あの、ポンポンには」

 先ほど、頭を軽く叩いたことについてだ。智也は黙って頷いた。

 「あの子の年齢はお多感だからねえ……ほら、反抗期じゃん?」

 「まあ、言われてみれば」

 周りには自分以外誰もいないので、腰に提げた剣、すなわちセイラと、普通に声を出して会話をする。

 レミアがもし日本で生活していたとすれば、彼女は今、中学生である。そしてその年齢になると、子どもは反抗期を迎えることは、智也も知っていた。親に良いように教育されて、自分の意志なんて無いに等しい環境で育った彼にとって、自分にもかつてそんな若かりし頃があったかどうかは、記憶が定かではないが、知識としては知っていた。

 「それにぃ……」

 「ん?」

 急にセイラの声が、誘惑するような調子に変わった。

 「あの子、胸は大きいじゃない?大人でもなかなかいないわよ、あんな立派な胸なんて」

 「それはあんたもだろう」

 ため息と一緒に思ったことを吐き出す。

 セイラがやってきた衝撃で気を失った時に見たセイラの姿は、露出の多い、俗に言う『ビキニアーマー』と呼ばれる鎧を纏った格好であったことが印象的だったが、同時に、サリナに負けないほどの大きな胸を持っていたことも彼は覚えていた。

 「何も、大人のみんながみんな、レミアちゃんみたいな立派な胸を持たない、とは言ってないじゃない?」

 「そうだな。で、何が言いたいんだ?」

 セイラが何を言わんとしているのか予想ができなかった彼は答えを求めた。

 「つまりぃ、胸が立派な分、彼女はその胸をなんだかんだ言って誇らしく思っているのよ!私はもう立派な女性だ、って感じで!だからよ!子供扱いされて拗ねちゃったのは!」

 「おっさんかお前はっ!」

 思わずツッコミを入れてしまった。胸、胸と言うセイラが、おっぱい好きのおっさんのように思えてしまった。違和感なく。

 なんだと思っておとなしく聞いていたら、そんなことだったのか。

 正解を期待したが思いの外残念な答えが帰ってきたので、智也は肩を落とした。

 「まあまあ、いいじゃない。あんただって男なんだから胸、好きなんでしょう?サリナの胸には喜んでいたものねえ?」

 「なっ!何言ってんだお前!」

 「あたしゃ事実を言ってるだけだよ」

 ムフフフフ、と怪しげに笑うセイラ。そして更に続ける。

 「ここはあんたの好きなゲームの世界のはずよ?ゲームの中のあの子はあんたになんて言っているのかな?」

 「また訳の分からないことを……」

 「あんたたちのやってたゲームとこの星は、ほぼ似たような状況なのは聞いているわよね?」

 セイラが声の調子を戻した。

 「ああ、そうらしいな」

 彼女が今言ったことは、サリナから聞いている。現に、今日歩いてみた程度で得られた情報ではあるが、確かに女性の割合が高かった。これはゲームでもそうだったことだ。

 「だからって、なんだっていうんだ」

 「にっぶいわねー、あんた。ここまで言ったら普通察せるわよ?」

 「鈍くて悪かったな、俺は鈍い生き物なんだよ」

 智也は開き直り、答えを待った。

 「ったく、損するわよあんた……まあいいわ。いい?あたしが言いたいのは、ゲームに出てきたそれぞれの女の子……あたしがあんたのをちょっと見た程度でしかないけど、絵の下に何かしら小さい字でゴチャゴチャ書かれてたでしょ?」

 「ああ。各キャラのコメント……あ」

 「ようやく気づいたのかしら」

 「ああ、ようやく分かったよ」

 智也の鈍さに呆れるセイラをよそに、智也は頭の中で組みあがった仮説のせいでにやけていた。

 つまり、セイラが言いたいことはこういうことだ。

 確かに彼女の言う通り、キャラごとにコメントが書かれていた。そのコメントの中にはキャラの説明文が稀にあったが、多くのコメントは、プレイヤーに対してそのキャラが忠誠を誓うような言葉だった。

 そして、今彼がいるパルメルという星は、まさにゲームを再現したような場所である。

 そう、ゲームを再現しているのだ。

 ならば、コメント通り、キャラがプレイヤーである智也たち地球人に、忠誠を誓っていてもおかしくはない。そう判断する根拠が、レストランで夕食が運ばれてくる間に会話した内容にもあった。

 『男の喜ばせ方を教える学校もある』

 レミアは確かにそう言っていた。

 「ククククク……」

 今度は智也が怪しい笑い声を上げる番だった。そんなセイラを、剣に宿った状態で内心、彼とは違った意味でにやついていた。

 「よーっし、んじゃ行くか!」

 智也は勇ましく立ち上がった。そして腰に提げたままだった、セイラが宿る剣をベッドに下した。

 目的地、バスルーム。目的、風呂場への潜入。

 「いってらっしゃーい」

 戦場に向かう男のように勇ましく出陣していく智也の背中に、セイラは、どっちもお子様、と呆れて笑った。

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