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峠の水晶玉  作者: アガッタ
峠の水晶玉

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エピローグ 次の冒険先

ロットの町に活気が戻り、市場に並ぶ野菜や果物の色が以前よりも鮮やかに見えるようになったのは、アルバ峠に平和が戻った証拠だろう。


私たちの手厚い看護と、ロットの町の医療、そして何より彼女自身の驚異的な生命力のおかげで、フジは数日のうちに驚くべき回復を見せた。けれど、ある朝、彼女が寝かされていた宿の部屋を訪ねると、そこには綺麗に畳まれた寝具と、開け放たれた窓があるだけだった。


「……あいつ、本当に最後まで自分勝手なんだから」


ベルが呆れたように笑った。

「別れの言葉もなしに消えるなんて、本当にフジらしいわね」

「いいえ、あれが彼女なりの照れ隠しなんですわ、きっと」


エリーが窓の外の遠い空を見つめて言った。東洋から来た謎多き巫女。彼女がどこへ向かったのかはわからないけれど、この空のどこかで、また凛とした姿で戦っているのだろう。


そんなある日の昼下がり、私たちは買い出しのために町の大通りを歩いていた。


「あ、見てください。あそこにいるのは……」


エリーが指差した先に、一人の女性が立っていた。清廉な空気を纏った、美しい修道女だ。彼女の名はダリア。エリーの実の姉である。

ダリアさんはエリーの姿を認めると、パッと顔を輝かせてこちらへ歩み寄ってきた。


「エリー! 無事だったのね、心配して――」


だが、次の瞬間。ダリアさんの足が止まった。

彼女の視線は、エリーの頭の先からつま先までを、なぞるように動いた。


栗色の髪を揺らす大きな三角帽子。

丸眼鏡の奥で泳ぐエリーの瞳。

そして、赤チェックのマントの下に隠しきれない、身体のラインを強調するようなデザイン性の高い青のレオタードと、その下をぴっちりと覆う黒のタイツ。


「エ、エリー……? その、はしたない……いえ、刺激的すぎる格好は一体……!?」


ダリアさんの顔がみるみるうちに真っ赤になり、ついには白目を剥いて、その場に崩れ落ちた。

「お、お姉様ーーーッ!?」


エリーの悲鳴が通りに響き渡った。


――それから一時間後。

ようやく目を覚ましたダリアさんを教会の仲間に預け、エリーは「わたくし、もう街を歩けませんわ……」と、顔を真っ赤にして私たちを路地裏の隠れ家的なカフェへと連れ出した。


テラス席に座り、運ばれてきた冷たい飲み物を口にすると、ようやくエリーの動悸も収まったようだった。ベルはと言えば、昼間だというのにちゃっかりエールを注文し、美味しそうに喉を鳴らしている。


「ふぅ……。でもさ、こうして三人で落ち着いてお茶を飲むなんて、久しぶりじゃない?」


ベルがジョッキを置き、満足げに笑った。

「そうね。樹海で死神に追われていた時は、こんな日が来るなんて想像もできなかったわ」


私は自分の隣に立てかけた、愛用の大剣に視線を落とした。

「最初はエリーに決闘で負けて、無理やり連れてこられたようなものだったけど……」

「今さら蒸し返さないでくださいな。でも、アリアさんがいてくれなければ、わたくしたちは間違いなく樹海で力尽きていましたわ」


エリーが眼鏡を拭きながら、優しく微笑む。

「樹海での戦い、きつかったわね。飛竜を助けた時だって、アリアが真っ先に飛び出したからみんな続けたのよ」

「ベルだって、二刀流で八岐大蛇の隙を作ってくれたじゃない。あのお酒の強さには、最後まで驚かされたけど」


私たちは、尽きることのない思い出話に花を咲かせた。

ガロのリーゼントが風に揺れていたこと、水晶玉が放ったあの神々しい光、そして、最後に見たアルバ峠の夕映え。

どれもが昨日のことのように鮮明で、胸の奥が熱くなる。


ひとしきり笑い、語り合ったあと、ベルがふと真面目な顔をして私を見つめた。


「ねえ、アリア。次は、どこへ行きたい?」


エリーも、飲み物を置く手を止めて私を見た。

二人の視線が、私に注がれる。


私は一口、お茶を飲んで喉を潤した。

金髪のロングヘアを結ぶ赤いリボンを一度締め直し、青く澄み渡った空を見上げる。

もう、迷いはなかった。


「そうね。次は……」


私は、次に目指すべき場所、そして新たな冒険の始まりを告げる街の名を口にしようとして――。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

最後に、この物語を作ろうとした逸話を紹介したいと思います。


随分昔のことですが、海外に行ったとき、女戦士が活躍するファンタジードラマがテレビで放映されていて、それに夢中になっていました。しかもその女戦士、主人公のアリアたちのようなレオタード姿の女戦士もいれば、ブラトップとショーツのような格好で戦っている女戦士もいて、非常に刺激的だった記憶があります。

そんな女戦士を主役にした物語を作ってみたいと思って、作ることになったのです。


主人公のアリアは、FF6のセリスさんをモチーフにしました。ただ、せっかく主人公にするのだから、緑色のレオタード姿のセリスさんの下位互換にならないように、アリアには赤いレオタードを着せることにしたのです。どこぞの配管工兄弟も、赤>緑という力関係が成立しているので、主人公としてのメンツは保たれたと思います。多分。


ただ、赤いレオタードを着せただけで、剣を振り回すだけでは、セリスさんと大して変わらないと思い、装備品にも差別化を図ってみました。そこで参考になったのが、FF7のクラウドくんと、空の軌跡のアガット兄貴。女の子が重たそうな大剣を使うことで、ギャップ萌えが図れるだろうと見込んだわけです。ちなみに、私のペンネームであるアガッタは、アガットの兄貴とは関係ありません。多分。


当初は、赤いセリスさん、もとい、主人公のアリアだけでは寂しいと思い、もう一人女戦士を出させて、ペアもので作ろうと考えていました。結果的に、3人で冒険することになりましたけどね。「魔法使いを付け加えなさい」という神のお告げがあったんです。きっと。


名前は、基本的にアルファベット順で名づけました。A=アリア、B=ベル、C=チャン、D=ダリア、E=エリー、F=フジ、G=ガロ、といった具合です。


タイトルは『峠の水晶玉』としましたが、大まかなプロットを考えている時、

「峠の釜めしが食べたいなあ」

と思って付けただけです。


と、最後の最後は暴論みたいな感じで逸話を紹介しましたが、続編が思いついたら、作ってみたいと思います。それではまたどこかでお会いしましょう。

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