表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過労死転生した最強悪役令嬢、追放されチートで聖獣とスローライフしてたら冷徹公爵に溺愛された件  作者: 限界まで足掻いた人生/大場 雷怒
第8章:侵略宇宙盗賊 編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

489/495

第489話 闇の決算

要塞千代田のブリッジを覆う灰色の「管理光」は、理子たちの自由を奪うだけでなく、思考の柔軟性さえも事務的な定型文へと固定しようとしていた。ホローフィンガーの軍門に下り、完全子会社化されたユグドラシル社に許されているのは、彼らが定めた「平和維持」のための不毛なデータ入力作業のみ。


しかし、理子の瞳の奥に宿る漆黒の火は、まだ消えていなかった。


1.規約の裏側、あるいは法的な空白地帯

「アリス、聞こえる?……。あなたのOSの深層部、ホローフィンガーの監視の目が届かない『廃棄セクター』に、私のプライベート・プロトコルを転送したわ。……。返事をしなさい、当社の優秀な秘書なら」


理子は鉄の義手から漏れる微弱な電気信号を、物理的なキー入力ではなく、直接要塞の基幹回線へと流し込んだ。


「……。理子最高経営責任者。……。存在確率、0.02パーセントで再接続。……。監視プログラムの隙間を縫って、現在の状況を報告します。……。ホローフィンガーが構築した『絶対規約』は完璧に見えますが、彼らには致命的な計算違いがあります」


アリスの声はノイズだらけだったが、その知性はかつてないほどに研ぎ澄まされていた。


「彼らが宇宙創造株式会社から引き継いだ資産の中には、一兆年前に発生した『初期因果の未解決バグ』が含まれています。……。それは、誰の所有物でもなく、誰の責任でもないと放置されてきた、宇宙で最初の瑕疵かしです」


2.瑕疵担保責任、あるいは不条理な請求

理子の脳内で、葛城総理の意識が鋭く覚醒した。


「理子、勝機が見えたわ。……。あいつら、宇宙のすべてを所有したと宣言した。……。それはつまり、宇宙に存在するすべての欠陥、すべての不備、すべての『ゴミ』に対しても、所有者としての責任を負うということよ」


理子の口角が、暗闇の中で不敵に吊り上がった。


「そうね、葛城。……。民法、あるいは宇宙基本法における『瑕疵担保責任かしたんぽせきにん』。……。あいつらが手に入れた『平和』という商品が、実は最初から壊れていたとしたら? ……。そして、その修理費用が、あいつらの時価総額を遥かに上回るとしたら?」


理子は鉄の義手を、ホローフィンガーの管理端末へと叩きつけた。


「サブロック! あんた、聞こえているんでしょう! 規約違反だの、不法占拠だの、偉そうに宣ってくれたけれど。……。あんたたちの持っているその『宇宙創造株式会社』の登記簿。……。中身をよく精査したのかしら?」


モニターの向こう側で、サブロックの表情が初めて凍りついた。彼の端末に、新生ユグドラシル社から放たれた、史上最悪の「不具合申告書」が届いたからだ。


3.闇の監査シャドウ・オーディットの執行

「何だ……。これは。……。ビッグバン直後のエネルギー配分における、0.00000000001パーセントの計算ミス。……。それによる、現在までの全時空への遅延損害金……? 単位が……。那由他を超えて……。計算不能だと!?」


「そうよ、サブロック。あんたたちは宇宙のオーナーになった。……。おめでとう。……。その代わり、宇宙の始まりから積み上がったこの莫大な『修理代』、今すぐ全額、当社の口座に振り込みなさい」


理子が掲げたのは、もはや理不尽証明書ですらない。それは、宇宙そのものを「不良品」として返品するための、究極の「売掛金請求書」だった。


「アリス、ネット! 奴らの管理OSを、この膨大な請求データの処理でパンクさせなさい! 完璧な秩序を求めるなら、この完璧なまでの『負債』も、きっちり帳簿に付けさせてあげるわ!」


「了解! 理子さん! 奴らの『平和維持費』、今この瞬間をもって、当社の『未収金』へと強制的に振替処理を完了しました!」


ネットの叫びとともに、要塞千代田を覆っていた灰色の管理光が、理子たちが放った漆黒の負債エネルギーによって、内側から爆散した。


4.逆転の登記、あるいは非公式の宣戦布告

ホローフィンガーの「賢い宇宙征服」は、自らが引き受けた膨大な「宇宙の欠陥」という名の爆弾によって、その論理的な基盤を失い始めていた。


「理子、……。敵のシステムがフリーズしている間に、当社の主権を『地下抵当権』として宇宙の根源に再登記したわ。……。今日からこの宇宙は、彼らの持ち物ではない。……。彼らが借金を返し終わるまで、当社が占有する『担保物件』よ」


葛城の意志が、理子の身体に再び絶対的な主権を供給し始める。


理子は椅子に座り直すことなく、壊れかけたコンソールを睨みつけた。


「ベギル、サブロック。……。あんたたちの規約は立派だったけれど、経営の基礎ができていないわ。……。本当の地獄はね、利益が出ることじゃない。……。返しようのない借金を背負ったまま、死ぬことさえ許されずに働かされることよ」


理子の不敵な笑みが、ノイズ混じりのモニターの中で、誰よりも傲慢に輝いた。


「新生ユグドラシル社、闇の監査を完了。……。これより、ホローフィンガーに対する『債権回収のための全面戦争』を開始するわ」


営業再開よ。

宇宙のオーナーなんていう甘い肩書き、借金取りの恐ろしさで上書きしてあげる。


要塞千代田は、失った黄金の輝きを「漆黒の債権者の色」へと塗り替え、深淵へと再び突き進んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ