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火縄家での話

 数日分だろうか、洗い物がたまっている。

 几帳面な銃なら、しっかり洗っているものだろうと思ったものだが、昨日徹夜した原因である何かのせいで洗えていないのだろうか。

 理由はともかく、大した量はないのですぐに終わりそうだった。

 とその前に永海に今日も遅くなることを伝えておかねばとスマートフォンを取り出す。

 履歴から永海の電話番号をタップし、そのまま電話をかける。

 数秒の間があいたのち、プルルルルという電話特有のコール音。

 十回程のコールを経て永海が電話に出る。

『もしもし、お兄ちゃん?』

「お兄ちゃんだ」

『わかってるよそれくらい。何か用?』

 常時ハイテンションな永海にしては落ち着いた声色で応答をする。

「ああ。悪いけど今日も遅くなりそうだ。友達の看病をしてやろうと思ってさ」

『友達って……もしかして例のおホモだち?』

「例のお友達って……あれ?お前に銃のこと話したっけ?」

『銃さんって言うんだ。病気なの?って看病だから当たり前か」

「どうやら寝不足気味みたいでな。フラフラになる程だったから一緒にいてやらねーと。晩飯も作ってやらなきゃだからかなり遅くなる」

『りょうかーい。それでお兄ちゃん。絶対に手を出しちゃダメだからね?一線を越えちゃダメだからね?いい?絶対にだよ⁉︎いいか、やるなよ?絶対にやるなよ⁉︎』

「お、おう。じゃあな」

 画面の通話終了と書かれたところを一押し。ツーという切断音がスマートフォンから流れ出す。

 えらく冷静だったなと永海を不審に思いながらもそんなことあるかとすぐに忘れ去る。

 背中にぞくりとなにやら嫌な悪寒が走るも、気にしない。

 そう、気にしない。

 スマートフォンをポケットに仕舞い、水で濡れないようにブレザーを脱ぎ、カッターシャツの袖をまくる。

 息苦しいネクタイの結び目を緩め、ボタンを一つあけた。

 そうして洗い物のあるシンクへと向き合い、それらの洗浄を開始する。

 スポンジに洗剤をつけ、ゴシゴシと皿やコップを洗う。

 やがて全てのものを洗い終わり、水で洗剤を落とす工程へと移る。

 蛇口をひねると冷水が勢いよく飛び出す。

 冷水の滝に指を突っ込むと予想以上に冷たく、体がぶるりと震えた。

 仕方なくしばらく水を出しっぱなしにして温水に変わるのを待つ。

 しかしいつまでたっても水は暖かくならず首を傾げ、ふと右方を見ると温水器の電源がオフのままだった。

 銃に心の中で水を無駄にしたことを謝罪し、温水器の電源をオンにする。

 すると間もなく冷水が温水にかわり、もやもやと湯気が立ち始めた。

「きたきた」

 数十秒で終わることとはいえ、少しでも快適な状態で事を進めたい。

 流れ出た温水に手を入れ、温かみを確認してから皿の洗浄を開始する。

 カチャカチャと音を立てて泡が取り払われていく。

 その音以外は無音。

 このような時間は何故かどうでもいいことを考えてしまうものだ。

 いや、聖奈人にとっては正確にいえばまったくどうでもいいことではないのだが。

 聖奈人の考えてることとは、琴葉に緋那のことをどう説明するかだ。

 琴葉は聖奈人が魔法少女によって助けられたことを知っている。

 だが、聖奈人の持つ能力については一切知らない。だから緋那の形状を保った魔法を見て疑問に思ったのだ。

 つまり、中途半端にしか知らないのである。

 聖奈人は頭の中で、今琴葉が知っていること、知らない事を羅列して整理した。

 まず、聖奈人は魔法少女に助けられたこと。

 次に、聖奈人の持っていた魔法適正が魔法少女から直結しているものであること。そして、現在それが消失していること。

 最後に、知らないことである聖奈人の真の力。

 本当に曖昧なのだ。

 聖奈人に魔法適正があることは知ってても、その魔法が形を持っていることなどは知らない。

 聖奈人の魔法が何たるかを何もわかっていない。

 どこから説明したものか。

 頭を回して話を纏める。


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