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side 黒川 夢 (正義の女)



 私には好きな人がいます。

 家が近所で小さい時に結婚の約束をした戸川雄治君。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇



「ねぇねぇ雄治君、ママに新しいバケツとシャベルを買って貰ったから、砂浜でお城作ろう?」



「いいよ。夢ちゃん♪」



「大きいの作ろうよ♪」



「うん。」



「ねぇねぇ雄治君?大人になるとね結婚して女の人は名前が変わるんだってー」



「えっ!?そうなの?じゃあ夢ちゃんじゃ無くなっちゃうの?」



「違う違う。名前の前の名字?って言うのが変わるんだって。私と雄治君が結婚したら黒川夢じゃなくて戸川夢ってなるの。」



「そうなんだ。知らなかった。」



「ねぇねぇ…」



「どうしたの夢ちゃん?」



「結婚しよ?」



「えっ!?」



「ダメ?」



「ダメじゃないよ。嬉しいよ。ずっと一緒って事だよね?」



「へへへ。ありがとう雄治君、私も嬉しいよ♪ずっと一緒だよ♪」



「へへへへ夢ちゃん♪」



「雄治君♪」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇



 ずっとずっと一緒だった。幼稚園の時からお互いの家で遊んだり公園で遊んだり、小学校に上がっても雄治との関係は変わらなかった。

 6時間目の授業がある時は放課後、学校で遊んで5時間目で学校が終わる時は2人で早く帰ってどちらかの家でゲームをしたりしていた。



 変わったのは中学からだ。

 わかってる、悪いのは私だから。



 小学校までは6年間クラス替え無しだったけど、中学に上がればいきなり、クラス替え。初年度から雄治とは別クラスになったと同時に小学校からの同級生に雄治との関係を茶化されて恥ずかしくなって自分から距離を置いた…



 本当はもっと話たかったしテスト期間は一緒に勉強をしたかったけど、茶化されたり虐められたくは無かったから避けた。別に雄治を無視したりはしなかったけど避けた。でも多分…雄治は勘づいてたと思う。



 だから、学校でも雄治から話し掛けて来なかったし、1回だけ雄治が私の家に回覧板を届けに来た時も届けて直ぐに帰っていった。その背中を見て何だか虚しくなって自然と涙が頬を走った…



 高校は別々になってしまった…

 私の高校は偏差値が60。雄治の高校は52。


 雄治との連絡手段を持たない私は、然り気無く友達の友達から雄治の志望校を聞き出した。


 だこら、一所懸命になってひたすら勉強した。勉強して勉強して勉強した。

 それで、入試当日に挑んだけど同じ中学で固まる様に用意された座席表には雄治の名前が無かった…




 何で?

 …

 何で?


 5秒間、時が止まった。


 何で、雄治の座席が無いの?


 2度見+1で3度見をしたけど、当然の様に雄治の名前が無い…


 どうやって目の前に置かれ続ける答案用紙を埋めたのかも、どうやって帰ったのかも覚えてない…



 結果は受かった。

 でも、全然嬉しくなかった…



 高校生活も楽しくない。

 何が楽しいのかわからなかった…



 全部、雄治が近くに居てくれていたからの副産物だと気付いた時には遅かった。

 中学で雄治と3年間も別クラスになっても、家が近所なのに全然遊ばなくなったけど、近くには居る。私が周りの目を気にして話さなくなっただけで話そうと思えば話せる。


 でも、高校はそうは行かない。

 私が通う高校に雄治がいないから。当然だよね。



 そんな毎日を過ごしていたある日、雄治のお母さんが私の家に雄治が来てないか、訪ねてきた。



「夢ちゃん!?久し振りね…」



「はい。お久し振り振りです。母は今、ちょっと手が話せないみたいで…どうしました?それとも母を呼びましょうか?」



「雄治がっ!!雄治が帰ってこないの!来てないわよね?夢ちゃんと遊んでる訳ないわよね…?」



「えっ!?雄治は来てませんよ…」



 雄治が行方不明…

 行方不明…

 雄治が行方不明…


 その後は、母が玄関まで来て対応してた様な気がするけど記憶が定かでは無い…

 雄治が行方不明の現実が重くのし掛かってきた。


 もう会えない…

 雄治と会えない…



「そうよね…」



 その日は夜ご飯も喉を通らなかったから残して何か出来る事を探した。



 私は交遊関係が広い訳だからではないから、高校でいつも一緒に居るなぎさは中学からの付き合いだったから、雄治の事も知ってるし雄治の高校に進学した子ともSNSでやり取りがあるって聞いたから渚に頼んで雄治の高校の友達?を紹介された。



 名前は綾瀬拓也 君。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇



「初めまして、私は雄治の幼馴染の黒川夢です。」



「俺は雄治とは高校では1年の時から一緒に居る綾瀬拓也です。よろしく。」



「よろしく。」



「それで、雄治が行方不明って?」



「うん。一昨日、私の家に雄治のお母さんが遊びに来てないかって訪ねてきたの。私と雄治は小さい時からお互いの家を行き来して遊んだりしてたの。」



「俺の…せいかも…」



「えっ!?」



「俺が雄治の彼女が浮気してるって言って、その日の放課後に一緒に雄治の彼女をつけたんだ…そしたら案の定…その後は一応、心配だったから家まで送って…」



「そんな事が…」



 なんか、色々ショックだった…

 雄治に彼女…?

 えっ!?私と結婚は…?



 でも、拓也君から雄治が彼女にプレゼントする為にバイトを頑張ってたけどその彼女が浮気…?


 雄治の気持ちを考えると自然と涙が出た…


 誰なの?そんな人の気持ちを踏みにじる馬鹿な女はっ!?


 殺してやりたかった。

 私が…私が毎日毎日毎日、願っても届かない雄治の隣に居ながら浮気?

 信じられない…


 綾瀬君から聞いた情報では元カノの名前は荒川千夏。同級生らしい…

 林間学校の集合写真を見せて貰ったから顔もわかった…

 う~ん。

 雄治の好みの女の子ってこういう感じなのかな?



 私の感想は雄治の件を抜きにしてもブス。

 ただそれだけ。

 男の子からしたら可愛いのかな?見た目からぶりっ子みたいな感じで嬉しいのかもしれないけど女の私の目にはただのブスにしか写らなかった。


 ブスで淫乱。最悪な女だって認識した。




「ねぇ黒川さん?」



「何?」



「俺達で時間を合わせて駅で雄治の写真を載せたビラを配らない?今日、担任の先生に言ったらコピーは職員室のコピー機を使っていいって。」



「本当にっ!?やる。やる。私はやる。それで何か手掛かりが掴めるかもしれないし。」



「うん。じゃあ俺は用意するから黒川さんは一応、雄治のご両親にも伝えてもらえないかな?それで、時間があるなら来て俺達と配ればいいし、仕事があるなら俺達だけで配ればいいじゃん。」



「うん。ありがとう綾瀬君。」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇



 駅でビラを配っても何も進展しなかった。

 だから、私は日に日にフラストレーションが溜まっていたのか、帰ってから自分でもビックリしたけど、私の足はその日、雄治の高校に向かっていた。



 居た。

 あの女だ。

 でも、写真で見た時よりボサボサの髪で制服も何だか汚れていて、如何にも臭そうな女だった。


 ドブ女みたいな見た目。

 ドブ女とでも言おう。



 私の大好きな大好きな雄治を…

 よくもよくもよくも…



 パチーンッ!!



 意識を取り戻した時にはドブ女をビンタしていた。

 あれっ!?ヤバいよね…?

 いや、もういいや。コイツに気遣いなんている?

 コイツに気を使う必要なんて無いでしょ!?

 なるようになれっ!!



「アンタでしょ!?雄治の元カノって!!」



「…」



「何か言いなさいよっ!!」


 何も言わない。

 やっぱりね。

 このドブ女が雄治の元カノで間違いない。



「…」



「このっ!浮気女っ!!」



「…」


「私、許さないからっ!アンタのせいで雄治が居なくなった。アンタを殺してやるっ!!」



 バッグに入ってる、ハサミとカッターでコイツの事を殺せる?

 わからないけど無言のコイツを見ているとイライラしてきて刺してやろうって感情がメラメラ私の中で蛇の様な動きで上から下。下から上に縦横無尽に駆けずり回ってる。



「待って!!」



 綾瀬君…?


「今、君まで居なくなったら、家族以外で誰が雄治を支えるんだよっ!気持ちはわかるけど、今は落ち着いて。早く駅に行こう。」



「…うん。」


 ふぅー。ふぅー。

 確かに。

 今、コイツを刺したら快楽の為に誰にでも股を開くこのドブ女と一緒だ。


 理性。

 走れっ理性っ!!


 何とか理性が身体中を駆け巡りメラメラした感情を抑えた。



「今ここで、君が暴れても誰の何の得にもならないよ。それにコイツには後々、天罰が下るよ。」



「…」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇



「はぁ…」



 今日も何も進展無かった…

 ねぇ雄治、何処にいるの?

 みんな、心配してるんだよ?



 雄治…


 ポタ


 ポタポタ


 雄治…


 ポタポタポタポタ


 会いたいよ…



 ◇◇◇◇◇◇◇◇



 えっ!?


 えっ!?


 何っ!?

 ここ何処っ!?



 えっ!?

 ゆ…うじ?

 雄治…?



「ゆ…うじ?」



「夢っ!?」



「雄治なの?」



「うん。俺だよ。」



 はあぁ…

 雄治だ!!

 雄治が私の前に居るっ!!



「やっと会えた!!雄治ー!!雄治!!」


「でも、何で夢が?」


「うわぁぁぁぁん。会いたかったよ~」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇



「ここは異世界なんだよ。」



「異世界?」



「そう。信じられないと思うけど、夢でも何でもない。俺は勇者として召喚されたんだよ。本当に驚いたよ…でも、夢の姿を見ると時間の流れはもしかして俺達が居た元の世界と同じなんだね。」



 勇者?

 召喚って何?

 でも、ここもお城みたいだし着てる服とかも、なんか違う…


 でも、雄治と会えたし…



「本当に大変だったよ」



「そうなんだ…」



「うん。俺は勇者として召喚されたのに何も出来ない無能だったから、生まれて初めてってくらい努力したよ。走って走って木刀を振って振って(笑)でも、夢と会えたから…まぁいっか(笑)」



「雄治…」




 ◇◇◇◇◇◇◇


 ここは本当に異世界なんだって翌日にはわかった。


 夢の中とか私の頭がおかしくなったのかと思ってた所があったけど、お城の広い部屋で寝てお城の広い部屋で起きた。



「夢おはよう。」



「おはよう雄治。」



「はぁぁ…よく寝たわ。夢は寝れた?昨日の今日で大変だったでしょ?」



「大丈夫だよ…」



 もう、言おう。

 後悔するくらいなら言おう。

 雄治は、あの元カノと経験したのかな…


 きっと経験してるよね…?


 私が周りの目を気にして雄治を遠ざけたんだから、私のせい…はぁー。


 言おう。



「どうしたの夢?」



「あのさ…雄治…」



「何?」



「昔した結婚の約束…覚えてる?」



「覚えてるよ。」



 嘘っ…

 本当かな?

 本当に覚えてたら嬉しいな…



「本当?」



「覚えてるよ(笑)砂場でした約束でしょ!?子供ながら嬉しかったな♪あれからずっと一緒だったじゃん。今もだけど(笑)」



 嬉しいっ!!

 覚えてくれたんだ!!



「ねぇ、その約束を果たさない?私ねっ!ずっとずっと雄治が好きだったの!学校で遊んでどっちかの家でゲームして本当に幸せだったの!でも…ごめんね。中学の時から周りの目が怖くて怖くて雄治を遠ざけたけど…高校に入学してね、中学と違って雄治が近くに居ないって、本当の意味で理解して後悔したの。私の日常は雄治が居るから成り立つんだって。」



「夢…」



「だから、私と結婚してくださいっ!!」



「うんっ!結婚するっ!!夢、僕と結婚してくださいっ!!!」



「うぅ…うぅうぅ…」



「夢…?」



「はい…よろしく…お願いします♪」



「へへへ。こちらこそ♪」

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