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私事について  作者:
49/49

・師事について(完)

・師事について


―2010.初春―


 私は京都に旅行に行くことにした。

 そのころ、ネットで「青春18きっぷ」という切符の存在を知った。それを利用すれば私でも、分相応に旅行を楽しむことができるのではないかと思った。早速、四条大橋を見に京都へ行くことにした。

 そのころ住んでいたところから京都まで、始発で出発して、到着したのは昼過ぎだった気がする。当時はスマートフォンが流行り始めた時期で、持っている人の方が少数派だった。(少なくとも私の周囲ではそうだった)当然私は持っていなくてガラケーだった。おまけに通信料がかかるのを恐れていて、携帯電話で地図を調べるとか、乗り換えを調べるとか、そういうことをしない人間だった。というわけで、旅行の前に京都駅から四条大橋までの地図をパソコンで調べ、パソコンに表示された画面をガラケーで写真に撮ったり、メモ帳に地図を書いたりしていた。乗り換えもメモしておいたけれど、時刻表も小さいのを買っておいた。当時はちゃんと読むことができた。

 

 京都駅に着き、しばらく歩いて、四条大橋を見ることができた。橋の下も見てみた。というよりも橋の下を見てみたかった。しかし、これといったものを見つけることはできなかった。なにが見つかると思っていたのか。

 それからもう一か所、八坂神社にも行ってみたかった。それも夕方頃には見終わりすることがなくなった。当時の私は、京都の町はいろいろあるだろうから、夜、寝ずに歩き通して見てまわり、翌日の終電で戻る計画を立てていた。(計画と呼べるのか?)文字通り無謀だったと思う。

 

 日が沈み暗くなるにつれて、徐々に不安が高まっていった。精神的に参ってきたというのもあるが、肉体的にも辛くなっていた。足が痛くなってしまったのだ。(でしょうね)節約するにしても、安いホテルに泊まるべきだったと私は反省し、後悔した。とはいってもホテルがどこにあるのかもわからず、盗難を恐れ、お金もそんなに持ってきていなかった。当時はクレジットカードも持っていなかったし、銀行のカードも紛失を恐れて持ってきていなかった。今から思えばビビりすぎていたと思う。


 歩くのに疲れて座りたいと思ったけれど、座っていい場所がどこにあるのかよく分からなかった。どこか、公園でもあればそこのベンチに座ろうと思ったのだけれど、公園を見つけることはできなかった。

 ふらふらと洛中をさまよい歩いていると、映画館を見つけた。ここなら上映中は合法的に座ることができるはずだと思った。けれど、問題は見たい映画があるかどうかだった。当時の私は今みたいに、なんとなく映画を見ることはしていなかった。外には、有名で大人気なのは知っていたけれど、見たことのない作品(それは当然そうなのですが)のポスターが貼られていた。私は少し悩んだけれど、見ることに決めた。

 上映開始時刻は15分くらい過ぎていて、受付の方には怪訝な顔をされたが、それどころではなかった。私はとにかく座りたかったのだ。

 その映画はとても面白かった。観てよかった。


 映画の面白さはともかく、結局宿なしには変わりがなかった。

 私は途中、カラオケ店を見かけたことを思い出した。そこへ夜間パックで入り、ホテル代わりに使わせてもらうことにした。お金はギリギリ足りた。折角なので歌おうかと思ったのだけれど、疲れていて歌う気になれなかった。

 カラオケの画面を消して寝ようと思ったのだけれど、消す方法が分からなかったので、せめて音量をゼロにして寝ようと試みた。しかし画面が眩しくてなかなか寝付けなかった。午前1時か2時ごろ、部屋の扉をノックされた。ドキッとして扉の方を向くと、当然店員さんがいた。


「カラオケなんだから歌えよ!」

「す、すいません。歌います……」

 ということではなかった。


 ホテル代わりに使っていることについて何か注意されるのではないかとビクビクしていた。けれどまあ、眠くなったから寝てただけだと言えば……とか言い訳を考えていた。というか、別に問題はないと思うのですが。

 実際には、食べ物のラストオーダーの時間だからなにか頼まないか、と聞きに来られただけだったのだ。私は金がギリギリだったこともありなにも頼まなかった。

 寝過ごして延長料金がかかるとかなり厳しくなる。寝過ごすのが不安で気が気でなかったため、安眠もできなかったけれど、野宿するよりははるかによかった。

 始発に間に合うように京都駅へ歩いている途中、すれ違った男性に「仕事をしないか」と声をかけられた。「もう帰るところなので」、と断った。あとから考えると、なんの仕事だったんだろうか、少し怖い気もする。

 始発で京都を発ち、無事に帰ることができた。


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 また旅行のはなし? と思われたかもしれませんが、長くなったのですがこれは前振りで、『悟浄出世』の紹介をして終わろうと思います。


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【お詫び】

 当初、『五条大橋』と『悟浄出世』で『ゴジョウ』つながりで、話を作ろうと考えていました。けれど当時撮った写真(インスタントカメラで撮っていました)を見返しても、五条大橋の写真はなく、その代わりに四条大橋の写真が残っていました。書ききった段階で、まさか……と思って、調べてみるとやはり四条大橋が目的でした。なので、なんの前振りにもなっていません。申し訳ありませんでした。

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 高校生の時、国語(現代文だったかもしれない)の授業で、『中島敦』氏の『山月記』を習った。それから10年近く経って、どんな内容だったかと気になって文庫本を買って読んだ。その時は山月記だけを読んだのだけれど、数年前、時間ができたので、収録されている他の話を少しずつ読んでいた。難しい言葉や表現が多いので本当に少しずつ。特に印象に残ったのが、『文字禍』、『名人伝』、『悟浄出世』だった。


 悟浄というのは、「西遊記」に登場する「沙悟浄」氏のことです。


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『実は彼が微かな声で呟いているのである。「俺は莫迦だ」とか、「どうして俺はこうなんだろう」とか、「もう駄目だ。俺は」とか、時として「俺は堕天使だ」とか。』


『山月記・李陵 他九篇』 「悟浄出世」 中島敦作 岩波文庫

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 こんな文があります。私たち(たち?)も一人の時はこういうことをよく言ったりしているので親近感が湧きますよね。私の場合は「俺は最低な人間だ」と、よく言っています。(そうですか)


 悟浄氏は悩んでいて、さまざまな賢者に弟子入りし教えを乞います。私は興味深く読みました。


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『悟浄は控えめに口を挟んだ。自分の聞きたいと望むのは、個人の幸福とか、不動心の確立とかいう事ではなくて、自己、および世界の究極の意味についてである、と。』


『山月記・李陵 他九篇』 「悟浄出世」 中島敦作 岩波文庫

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 学び歩いた結果、どういう結論に至るのか、そこまで書くのは野暮ですし、私に説明するだけの能力もないので、気になった方は是非読んでみてください。


 最後まで読んでくださった優しい方に感謝します。

 ありがとうございました。(完)


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