そのいち クエンたん
O「なあなあ」
H「何」
O「クエン酸ってさ」
H「は? クエン酸って、そのクエン酸?」
O「そう、このクエン酸。クエン酸ってさ、女子っぽいと思わん?」
H「うん、意味わからん」
O「女子ってたいてい柑橘系好きじゃん」
H「ああ、そうだな。柑橘類の酸味の元といえば、クエン酸だな」
O「そうそう。そして無臭で揮発性がないというソフトさ」
H「ソフトでない女子もいるが。というか、うちの学科、ソフトでないのばかりだとお見受けするが」
O「まあそれは置いとく。で、このクエン酸の作り方を知ってるか?」
H「知らん」
O「デンプンや糖を発酵させるんだそうだ」
H「ほう、発酵」
O「健康志向の女子が好きそうな言葉だろ」
H「確かにちょっと前に流行っていたかもしれん、塩麹とか。でもあれは主婦の世界の話だろう」
O「料理の本を読むOLや女子大生だっているさ」
H「そういうのが好みだと」
O「悪いか?」
H「いや、人様の嗜好に口を出す気はない」
O「今時少数派なのは承知の上」
H「それで妄想の世界に身を投じた次第か。よかったな、身近な薬品戸棚に理想の女がいて」
O「とりあえず聞いてくれよ。例えばクエン酸を擬人化したとすると、女子がかわいいと思う女子、って感じしない? ノン●とか読んでそうな。ノン●よく知らんが」
H「知らんくせに例えに使うな。…つまりお前、現実の女子に縁がなさ過ぎて、ついには薬品の擬人化を妄想するまでに…」
O「やめてくれ、俺ずいぶん可哀想な人みたいじゃないか」
H「というか危険」
O「実験の合間の、些細なお遊びさ。薬品を擬人化して学習漫画にでもしたら、一儲けできるかなーなんて」
H「むしろ美少女キャラにして、大きなお友達を釣ろうぜ。お前みたいなのを」
O「これはもてないが故の妄想などではない。ビジネスの話をしているのだ」
H「へー。俺今、お前のために泣いてやりたい気持ち」
O「…もういい」
H「いや待って、ちゃんと話聞くよ」
O「バカにしないなら続ける」
H「しないしない。むしろ協力しよう」
つづきます
Hが付き合ってくれるようなので、つづきます