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第二百十七話 お前らの目は節穴か

 船長の一人でもあり師匠でもあるマーリンに言われ弟子であり副船長のエアが再び森にやってきた。


 いつもは箒に乗って移動しているが今回は他にも仲間がいた為、彼らに合わせて徒歩である。


 もっとも空にいることが逆に目立つ可能性があるというのもある。


「ね? 確かに帝国兵がいるでしょう?」


 エアが付いてきていた仲間に問いかけた。草むらに隠れ様子を伺いつつ兵の動向に目を向ける。


 そこでは鎧姿の兵たちが規則正しく動き回っていた。


「確かに帝国兵のようだな」

「私達の敵じゃないでしょうけど、下手に刺激しても面倒そうよね」


 エアの仲間達が口々に言う。だが二人だけ射抜くような瞳を兵たちに向けていた。


「ふん。全くお前らの目は節穴か?」

「全くだシュウ。こんなくだらない手に引っかかるとは情けない」


 厳つい顔をした二人が何かに気がついたように語る。顔が瓜二つの二人であり双子の兄弟である。


「それって一体どういうこと?」

「そのままの意味だ。大体奴らの動きには乱れがなさすぎる」

「それに最初の偵察に来てから日が経っているだろうに全く汚れた様子がない」

「あ! そういえば――」


 指摘されエアも気がついたようだ。このような場所で暫く野宿を続けていれば、今指摘された汚れのように何かしら変化がありそうなものだが全く代わり映えしてないのだ。


「でもそうなるとどういうことなの?」

「決まっている征くぞ修右(シュウ)!」

「おうよ羅左(ラサ)!」


 皆に活を入れるよう声を上げ双子の兄弟が飛び出した。シュウは腰に帯びた刀を右手で抜きラサは逆に左で抜いた。


「「ヌンッ!」」


 そして二人は重なり合うような格好になり一糸乱れぬ動きで兵たちを切り飛ばしていった。


「フン。やはりか。ボロボロと崩れて土にかえっていくわ」


 シュウとラサが鼻を鳴らした。土にかえるは文字通りの意味でまさに人形が土に戻っていったのである。


「むぅ、流石は代々双子のみに伝わるという修羅双心流の使い手!」

「あの二人でありながらもまるで一人の武神と戦っているかのような錯覚に陥るとされる最強の侍の一人よ!」

「双子だから二人ね!」


 そんなツッコミ混じりの称賛が送られるとシュウとラサが彼らに睨みを利かせた。


「そんなくだらないことを言ってる隙があったらお前らも動け!」


 言われ見ていた仲間達も兵士に挑みかかる。


「ちょ、こいつら反撃してきたわ!」

「案ずるな。やってることは単純そのものよ!」

「確かに動きも規則的すぎる。これなら問題ないぜ」

「仕方ない。師匠に言われたし~ウィンドラッシュ!」


 エアも魔法を行使し兵士のフリをした土人形が次々と破壊されていった。


「これで全部片付いたわね」

「あぁ。しかしこんなもので騙そうとしていたとは……」

「早く帰って報告しないと駄目ね」

「うぅ。師匠に何か言われそう……」


 仲間達が口々に話している横でエアががっくりと項垂れていた。最初に偵察に来たときに気がつけなかったことを気にしているのだろう。


「待て。まだ向こうに何かいるぞ」

「うむ。確かに気配する。全部で四人か――」


 シュウとラサが森の奥をじっと見つめつつ言った。他の仲間達が武器を手に兄弟が指摘した方に向かっていく。


「だったらなにか知ってるかもな」

「捕まえるか」

「四人も邪魔ね。何人かは始末しましょう」

「へへ、いい女がいたら分けて欲しいところだ」


 そんなことを口にしながら近づく海賊達だが――


「お前ら油断するな!」

「攻撃がくるぞ!」


 シュウとラサが叫ぶのとほぼ同時に無数の不可視の刃が空間を斬り裂いた。


「ちょ、エアシールド!」

「「むんっ! むんっ!」」


 エアは風の盾で攻撃を防ぎ兄弟は乱れのない動きで刀を振り全て跳ね返した。


 だが他の海賊はシュウとラサの警告も虚しく全員肉片と化した。


 すると森の中から一つの影が飛び出し残った三人の前に躍り出た。


「ここから先は我が一歩も通さぬぞ。我が主には決して近づかせぬ!」


 こうして意気揚々と姿を見せたのはサラサラの銀髪の幼女ネメアであった――

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