第二百十八話 ネメアの意地
ネメアが姿を見せた。そして残りの三人に向けて威嚇し忠告する。
「お前たち、そこの肉片みたくなりたくなければさっさと立ち去るのじゃ!」
「ふぇ~幼女がこれやったの? 怖――」
空中では箒に乗ったエアが俯瞰しながら感想を述べていた。地上では二人の兄弟がネメアを認め眉を顰め答える。
「ふん。このか弱き女が我らを相手するだと?」
「随分と舐められたものだなシュウ」
「おうよ。ラサ」
シュウとラサ、双子の兄弟は背中合わせとなりそれぞれが両手の刀を振り上げ身構えた。
「忠告はしたのじゃ!」
相手から戦いをやめる気配が無いと判断したネメアが爪を振り回す。幾つもの斬撃が兄弟に向けて放たれた。
「ムンッ!」
「フンッ!」
するとシュウとラサがその場で回転を始め何とネメアが放った斬撃を全て斬り裂いてしまった。
「な、何じゃと!」
「これぞ修羅双心流奥義・心羅修転刃」
シュウとラサが刀を前に突き出し言い放った。どうやら特殊な技の使い手であるようだ。
「さぁ征くぞ!」
「覚悟するが良い」
同時に地面を蹴り二人がネメアに迫る。
「舐めるでない!」
ネメアの姿が変化。本来の銀色の虎となりシュウとラサを迎え撃つ。
二人の斬撃がネメアを斬り裂いた。だがネメアは平気そうにしている。それどころか斬撃を見舞った兄弟二人が吹き飛んでいった。
「へぇ。これは驚いた。見た目もだけど多分そいつスキルの物理反射を持ってるよ~」
空中からエアが二人に向けて声を掛けた。ネメアが鬱陶しそうに上空のエアを見やる。
「お前、余計な事を言うななのじゃ!」
爪を振るが箒に跨りながら器用にエアが斬撃を避けた。
「むぅ、面倒な奴なのじゃ。ま、いいのじゃ。我の力を見たか? お前たちの武器では我に傷一つ付けることも敵わないのじゃ!」
ネメアが得意気に叫んだ。一方でシュウとラサは同時に顔を向けあいそして笑い出す。
「ガッハッハ! 聞いたかシュウ」
「聞いたぞラサ」
「「その程度のスキルで得意がるとは滑稽であるな!」」
シュウとラサが再び構えを取りネメアに向けて不敵な笑みを零す。
「何じゃ? さてはお前たちスキルの意味がわかっておらんな? 言うておくがそんなもので幾ら攻撃しようと――」
「「修羅双月斬!」」
兄弟が加速し瞬きしてる間にネメアの横を抜け、同時に満月のような残影が残る。
刹那――ネメアの体が傷つき血飛沫が吹き出した。
「ガッ、そ、そんな、何故じゃ――」
「愚かなり。この世界のスキルなど」
「武気を身に着けし我らに掛かれば児戯も同じ」
構えを取りシュウとラサが勝ち誇った声を上げた。二人の表情は自信に満ち溢れている。
「征くぞシュウ!」
「おうよラサ!」
そしてシュウとラサが一糸乱れぬ所作で同時に刀を振った。
「修羅月裂刃!」
一文字の斬撃が発生しネメアを捉えた。防御する余裕もなくネメアが後方に吹っ飛んでいった。
「ガハァ!」
傷つき倒れるネメア。出血が酷く地面に血溜まりが出来てあっという間に広がっていった。
『ネメア!』
石版を持ったシェリナが飛び出しネメアに駆け寄る。傷ついた体に手を翳した。彼女は治癒能力があり、それで治療しようとしてるのだろう。
「だ、駄目じゃ御主人様。逃げるのじゃ。こやつらは強いのじゃどうかどうか」
『そんなことを言わないで怒りますよ!』
石版に高速で書き込み、治療を続けた。
「何だこの女はシュウ」
「何であろうなラサ?」
「よくわからないけど、捕まえて連れて行こうよ」
上空からエアが提案するとシュウとラサが頷き、距離を詰めてきた。
するとネメアが前に出て二人に向けて体の左側面を晒した。
「「馬鹿め物理反射など無意味」」
シュウとラサが猛攻撃を開始する。だが見えない壁に阻まれ斬撃が通らない。
「「何ぃッ!?」」
シュウとラサが不可解と言った顔を見せた。スキルを無効化出来るはずであり物理反射は効かない筈だ。しかし実際攻撃が通らない。
「二人とも御主人様を連れて離れるのじゃ!」
ネメアが叫ぶ。すると隠れていたのであろうパーパとムスメが姿を見せシェリナに近づき抱えるようにして逃げ出した。
『まだ治療が!』
「いけません! あまりに危険過ぎる!」
「ここはネメアちゃんに任せましょう!」
ムスメもパーパもネメアが防御しきっている様子から任せたほうが良いと判断したのだろう。
「喰らえ!」
一方でネメアが放電し二人を大きくふっ飛ばした。シュウとラーサが怪訝そうに眉を顰める。
「御主人様は我が必ず守る! 何度でも言おうお前たちは我が倒すのじゃ!」




