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第二百十三話 消える分身

「俺の本体が目覚めた」


 とりあえず主要なメンバーを集めて、俺は俺自身が目を覚ましたことを伝えた。


「シノビンが目覚めたっすか!」

「うむシノ仮面が目覚めたか」

「……シノ豚が目覚めた?」

「シノピーーが目覚めたっすか」

「お前らいい加減呼び方少しは統一しろや」


 普段は偽名を使っている事は伝えているからシノブという名前は出てこない。だがなんで全員バラバラなのか。


 それにピサロの呼び方なんて妙に卑猥に感じるし、ハーゼに関してはもはやただの悪口だろう。何だ俺、何か嫌われることした?


「ハーゼ豚は酷いっすよ」


 ハーゼにマイラが注意した。そんなマイラの肩をガシッと掴んでハーゼが言い返す。


「……貴方は目を覚ました方がいい。男なんて全員エロい目で女を見るだけの豚野郎。特にこいつはハーレムだヒャッハーとか思ってそうで始末におえない」

「酷い言われようだなおい!」


 マイラに何を教えてるんだこいつは!


「その、シノビンがちょっぴりスケベなのは確かかもしれないっすが、頼りにはなるっすよ!」


 スケベなのは認めるのかよ! 本体一体何した! いやまぁあのこととかあのこととかあるか。それにしたってハーゼの当たりが強い。


「す、すまない。ハーゼは何かこう、本当に男に厳しいんだ」

「おいらも散々だったっすよ……」


 カテリナがハーゼの代わりに謝ってくれた。そしてピサロ、お前も苦労したんだな……


「……ふんっ。何を企んでるか知らんが無駄だぞ。水滸海賊団は恐ろしい連中だ。逆らったところで無駄死にするだけよ」


 縄で縛られながら悪態をついたのはソルドを裏切ったルギラウだ。全く捕まっておきながら口の減らない男だな。


「とにかくだ。本体の現状を最後に伝えておく」

「うん? さ、最後とは一体どういうことだシノ仮面!」

「その呼び方してるの姫様だけなんだが……とにかくもう俺の忍気は限界でな。もう持たないんだ」

「お前、消えるっすか? 後のことはおいらに任せて安心して成仏するっす!」

「実に良かった。さっさと消えろ」


 ピサロが得意げに言うが分身が消えるだけだと言ってるだろ。寧ろ本人は目を覚ましたと伝えたとこだろうが。


 ハーゼに至っては心底清々したって顔してるし!


「くっ、とにかくだ。もう本当時間がないからしっかり聞いてくれ。そのうえで救出に向かうかどうかは姫様に任せるぜ――」






◇◆◇


「助けるって言うとその爆弾からか?」


 子どもたちに助けを求められた。

 でだ、可能性があるとしたらそれを含めた海賊絡みかしかないからな。


 子どもたちも深刻な顔をしている。しかし、その仕掛けを俺が解けるという保証はない。そもそも仕組みが何なのか未知数なところが大きい。


 忍術だとしたらそれを解除する必要があるが、そっち方面はそこまで得意じゃないし、そもそも忍術ではない可能性もある。


「いえ……もちろん爆弾の事も問題ですがこれがそう簡単ではないことは僕たちにもわかります」


 俺の問いかけに少年が答えた。


「爆弾についてもいずれ何とかしないといけないけど、今重要なのは――神父のことです」


 うん? 神父ってクリアのことか?


「クリア神父がどうかしたのかい?」


 改めて俺が問いかける。少年と少女は食事のときにも神父の間で特になにかあったと思えないが。


 それに少女は俺が目覚めた時に最初に目にした子だ。その後神父も呼びに行っていた。


「実は僕、聞いてしまったんです。クリア神父があの水滸海賊団と繋がっていて、僕たちを餌に自分だけ助かろうとしているのを」


 少年がぎゅっと両手を握りしめて訴えた。どうやら一見子どもたちの為に動いているように思えた神父は裏切り者だったという話らしい。


 ただ、それには解せないものがある。


「それで助けてほしいってことか?」

「はい……僕たちは爆弾の件もあって町の大人たちからは怖がられていますしここにいる限り神父の目があります。殆ど諦めかけてましたが、貴方が来てくれた」


 なるほど。確かに二人からしてみれば俺はやっとやっと来た神父以外の大人ってことか。しかも町の外から来てるしな。


 そうは言っても俺実際はまだ高校生だが。


 まぁこっちの成人年齢は十五歳からだから、その基準で言えば俺も大人の括りに入るのか。


 それはそれとしてだ。


「疑問なんだが、だったらどうして神父は君たちを一旦保護するような真似を?」


 わざわざ子どもたちを保護してこんな場所に隠れ潜むような真似をしておきながら、実は裏で海賊と繋がってるというのがよくわからない。


「そもそも君たちを爆発するようにしたのも海賊なようだしな」

「そこなんです。確かに僕たち子どもには爆弾を埋め込まれましたがしかし、親父の言うように全員ではなかった。それは海賊たちが実際は僕たちのような子どもを手に入れたかったから」

「何かの実験に使いたいみたいなの……」

「はい。だから敢えて大人が子どもから遠ざかるように爆発させた」

「――つまり爆発させてみせたのはそれで大人に恐怖心を植え付けさせる為か」


 子どもがいつ爆発するかわからないとなれば自然と大人も子どもに距離を置くことになり奴らもねらいやすくなる。そんなことせず最初から子どもを差し出させればいい気もするが奴らは町の連中に恐怖心を刷り込ませ逆らえなくする狙いもあったようだからそっちのほうが都合が良かったという理屈なようだが。


「それに神父は生き残った僕たちを差し出すことでただ見逃してもらうだけではなく見返りを貰うつもりなようですから」


 更に少年が教えてくれる。しかし、そう上手く行くものかね。とは言え、もしそれが本当なら黙って見てもられないか――

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