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第二百十一話 この食事は出来損ないだ

 三日も経っていたとはな。とにかく腹が減ったのも事実なので厚意には甘えることにした。


 あくまで飲み食いしなくても平気ってだけだからな。食べれるなら食べておいたほうがいい。


 神父の案内で食事を食べる部屋に移動する。廊下を通っていくが、なんというか防空壕のような作りだな。


「こちらにどうぞ」


 クリアに言われ席につく。一緒にいた二人の子どもも座った。


 大きめのテーブルと椅子があるがお世辞にも上等とは言えないな。椅子は箱を椅子代わりにしただけだしかなりボロい。


 テーブルには他にも子どもたちが座っていて俺に注目していた。全部で十二人か。


「もう大丈夫なの?」

  

 可愛らしい女の子が問いかけてきた。俺が運ばれてきたことは皆知っていたようだな。


「あぁ。おかげで助かったよ」

「良かった! 神父様もね。治療魔法を使ってくれてたんだよ!」


 少女が教えてくれた。そうか神父ならそういった治療系の魔法も使えるのか。俺自身の回復力が高いとは言えあれだけの怪我だったしな。


 だが外傷はかなり塞がってる。それも治療魔法の効果もあったからなんだろう。


「兄ちゃんどっから来たの?」

「うん? あぁちょっと遠くからな。旅の途中だったんだ」

「凄い怪我だったね。何があったの?」

「……手痛い洗礼を受けてな」

 

 子どもたちの興味に無難な答えを聞かせていると神父がやってきて木製の皿を置いていった。


「どうぞ。粗末な物ですが――」


 そう言って出された食事は、こういっては何だが本当に粗末なものだった。スープ、とも言えない恐らく味付けなど一切されてないお湯に団子のようなものと草、恐らく食べられそうな草を毟って来たようなものだろうな。


 それが大雑把に刻まれて入っている。一口食べてみたが味がない。塩も足りてないな。


 それを子どもたちも食べているが皆微妙な顔をしていた。


「うぅ。神父様もうこれ飽きた~」

「お肉食べた~い」

「こら! 贅沢言わないの!」

「でも……」


 何人かの子どもが顔を伏せていた。この中でも比較的年長者といえる子どもたちは黙々と食べている。


「……申し訳ありません。このようなものしかお出しできず。お口に合わないかもしれませんが、今ある材料だとこのようなものしか作れず……」


 神父が申し訳無さそうに言った。子どもたちの顔に心を痛めてるようでもある。


「そうだな。率直に言ってこの食事は出来損ないだ。旨くない。栄養もほぼ取れないだろう。これじゃあ腹は満たされないだろうな」


 だから俺は率直にそう答えた。遠慮もクソもない俺の言葉に睨みつけてくる子どももいる。


「いやはや、参りましたね」


 苦笑気味に神父が答える。


「ですが確かにそのとおりです。しかし今もいいましたが」

「おい! ふざけんなよあんた! 助けてもらっておいてそんな言い方!」

「だから、ちょっと調理場を借りていいか? 俺もこれじゃあ体力が戻らないしな」

「……へ?」

「は?」


 食事していた少年の一人が立ち上がり俺に怒鳴りつけてきたが、それを遮るように俺が言葉を続けた。


 神父も子どもたちも驚いているが――クリアに聞いて調理場に向かった。


 本当調理具も簡単なものばかりだが火は起こせるようだ。俺は時空遁で手持ちの道具と素材を取り出し早速料理に取り掛かった。





「すっご~い! 美味しい!」

「なにこれ! パラパラしてて美味しい!」

「それは炒飯だ。単純だが旨いぞ」

「このスープしっかり味があるよ!」

「久しぶりの肉だ~!」


 子どもたちが大喜びだった。よっぽど腹が減ってたんだろうな。俺も素材が余ってたからちょうど良かった。ここまで来るまでに狩った素材は、まぁネメアのおかげでだいぶ減ってたが同時に補充もされてたからここで料理を提供する程度は問題ない。


「あ、あの。ここまでしていただきありがとうございます」


 クリアにお礼を言われた。俺は、気にしなくていい、と伝え。


「助けてもらったのはこっちだからな。せめてこれぐらいはさせてくれ」

「お兄ちゃんありがとう!」

「その、さっきは文句を言っちゃって……」

「気にするな。俺の言い方も失礼だったしな」


 こうして皆の腹も満たされた。材料はまだ余ってたから出来そうなのは干し肉とかにして置いておいてやるか。


「しかし……助けてもらったのは感謝しているが、神父様や子どもたちはどうしてこんなところに?」


 食事は終わったが何より現在の状況を知っておきたい。ここはどうみても町の地下だ。表からわざわざこんな地下に身を潜めているんだろうから何かしら理由があるんだろうな――

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